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テ・ジョヨン38回目

民の一軍が歩いている。

先頭にはテ・ジョヨンとコ・サゲ。
遼東城から、テ・ジュンサン将軍が出てきて挨拶する。
「ようこそ、将軍。(固く握手する)大変でしたな」

テ・ジュンサン将軍は、傷だらけのテ・ジョヨンやコルサビウ、フクスドル、スギョンを見て、ため息をつく。
テ・ジョヨンは目を伏せる。

(ナレーション)西暦668年、唐と新羅の挟撃によって、平壌城は陥落され、高句麗はついに滅んでしまった。
高句麗最後の大王、ポジャン王は、自殺を図ったヨン・ナムゴンと共に、唐へ流された。
(映像)縄をかけられたポジャン王、ナムゴン達が歩いている。

(ナレーション)一方、唐は5部176城、69万戸に達する高句麗全域を、9都督府42州100県に改編し、平壌城に安東都護府を置いて、高句麗全域を治めさせた。唐は、ソリンギを検校安東都護に任命し、安東都護府を治めさせたと、「三国史記」にある。
この安東都護府の弾圧政策は、長い凶作で苦しんでいた高句麗の民の暮らしを、さらに惨めなものにした。これに対し、高句麗の各地では抵抗の動きが始まり、安市城のある遼東は最も強力な抗唐勢力の一つとなった。

米らしき荷物を運ぶ唐の兵達を、岩陰からテ・ジョヨン達が見ている。
弓を構えて、狙い、唐兵を倒すテ・ジョヨン達。

安市城下で、スギョン達が米を民に配っている。
「さあ、並んで」
通りかかったテ・ジョヨンがスギョンの隣に立って、米を配り始める。
「順番を守って」

将軍「遼東城からコ将軍が来た」
テ・ジョヨンは、その後についていく。


武将達が着席する。
「ははははは、今度はクム城行きの兵糧を奪ったのか?」
「はい」
「そなたのお陰で、安市城はましな方だ」
コ・サグ「噂によると平壌の安東都護府が、民から血税を絞り取っているそうだ」
テ・ジョヨン「飢えて死ぬ民が一日に数百を超すそうです」
「安東都護府の首将はソリンギです。高句麗を目の敵にしている奴だ。今すぐにでも軍を集めて安東都護府に攻め込みたい」
テ・ジュンサン「(首を横に振る)まずやるべきことは、我らの軍力を回復する事だ。だが、各地に散らばった抗唐勢力を集めるのも大変だ」
テ・ジョヨン「このままでは、唐が先に遼東征伐を始めるかも」
「ソリンギならやりかねないだろう。度重なる兵糧強奪で頭にきているはずだ」
「ソリンギ…よりによって奴が安東都護府の首将とは」


唐の旗がひらめく安東都護府。
ソリンギ「これで何度目だ?」
「落ち着いて下さい」
「落ち着けだと? 何度も兵糧を奪われて、冷静でいられるか」
イ・ヘゴ「遼東全域に警戒令を出しました。もう兵糧を奪われる事はないでしょう」
「今度も安市城の奴らか?」
「はい、将軍」
「あー、あの時安市城を潰しておけば…この安東都護府が安定したら、私が直接安市城を叩きに行こうぞ」
契丹部族長「将軍、我ら契丹族はヨンジュへ戻ろうと思います。だが、まだヨンジュに関して本国から何の達しもありません」
チョリン「教えて下さい。、いつヨンジュを下さるのです?」
「可汗、当然、ヨンジュは、この私が何としてでも契丹に渡そうぞ。だが、よく考えてみよ。今、高句麗の各地で雨後のタケノコのように抗唐勢力が現れ、遼東では安市城の奴らが幅を利かせている今、朝廷が私の要求を聞くと思うか? 可汗、今少し助けてほしい。有終の美を飾るべきだ。もう少しだけ頼む」

唐 長安城

皇帝「遼東では、兵糧の強奪が後を絶たん。ソリンギは何をしておる?」 
「陛下、高句麗の地はとても広いのです。全域の掌握には時間がかかるでしょう」
「流民が力を合わせて歯向かったら、どうするつもりだ? 王朝が滅んだとはいえ、民がしぶといのは周知の事実だ」
ウィスン「悩む事はありません。
「何か良い考えでも?」
「民が問題なら、捕らえればいいのです」
「民を捕らえる?」
「昔から、禍根を残さぬため、敗戦国の民を押送しました。高句麗を跡形なく消すには、最良の方法でしょう」
「そのとおりです」
イメン「陛下、民は国力です。流民の中から、唐に役立つ者を選び出せば、それこそ一石二鳥です」
イジョク「陛下、今すぐソリンギに皇命をお伝え下さい」
「陛下、流民の押送は、安東都護府だけに任せられません。多くの民を押送するには、高句麗を知る者が行うべき」
「誰か適任者がいるのか?」
「高句麗滅亡に貢献したヨン・ナムセンです」
「ヨン・ナムセン?」
「さようです」
「陛下、安東都護府の首将はソリンギです。この事はソリンギ将軍に任せるべきです」
イジョク「ソリンギは都護府すら治められていない。彼は力不足です」
「ナムセンは、安東都護府の座を狙っている」
「だからこそ、任せるのです。都護府の座を狙う彼なら、任務に身命を尽くすでしょう」

ナムセンとシン・ホンがテーブルに対座している。
ナムセン「私にそれをやれと?」
「どうせ、誰かがやる事です」
「流民まで押送したら、高句麗は復興の火種まで消される」
「ですが…」
「この流民政策の目的は、数万の高句麗の人材を奪う事だ。その意図通りに、学者や技術者や芸人まで奪われたら、高句麗は抜け殻になる」
「皇室の信頼さえ得られれば、安東都護府を取り戻せる絶好の機会になります」
「安東都護府を手に入れれば、当初の計画はもはや夢ではなくなります。唐を追い出し、新たな高句麗を成すという遠大な夢です」
「安東都護府か。安東都護府…」



高句麗の旗を持った騎馬兵達が走る。

高句麗陣営。
「将軍、(入ってくる)将軍、間者から報告が届きました」
テ将軍「民が押送されるのは本当か?」
「間違いありません」
「何と、その数は20万以上です」
コ・サゲ「20万? 我が民を20万も連れて行く気か」
「のみならず、その責任者はナムセンです」
テ・ジョヨンが驚いて顔を上げる。
「ヨン・ナムセン・・・」
「あやつ、国を滅ぼしたと思ったら、最後まで・・・」
「抗唐勢力を討伐する代わりに、民を連れ去るのか。唐め、小賢しい真似を。高句麗を抹殺するつもりだ」


唐の陣営。
「唐から持ち込んだプーアル茶です。お試し下さい」
「どれ・・・(飲む)味も香りも格別だ。ところで、今度は流民を連れに来たとな?」
「さようです。数回に分けて20万人を押送します」
「20万だと? そんな事なら、我らに任せればいいのに」
「ソリンギ将軍、助力を頼みます」
ソリンギは、咳払いして、茶を飲む。
「陛下は、この件に関心を示しておられます。失望させてはなりません」
「おや・・・、この茶は後味がよくないな」
「可汗にも助力を頼みたい」
「我らがですか?」
「流民の選別と押送を頼みます」
「我らはソリンギ将軍だけに従います」
ソリンギ「うん、オホン、まったく、何と渋い茶だ。可汗、助けてやりなさい」
「契丹においても、損はないでしょう。これは皇室が直接主管する重大な事案です。契丹が功を立てれば、皇室もこれ以上は、契丹の要求を無視しないはず」
「うん、あー、無視できぬだろうな」
「やる事は山積みです。具体策は私の寝所で相談しましょう。では、これで下がります」ヨン・ナムセンと契丹部族長が下がる。
見送るソリンギ。

ソリンギ「(テーブルを叩き)ヨン・ナムセンめ、私に挑戦してくるとは」
ポンペ「まったくです。都護府の座を狙っているのです」
「ポンペよ、ナムセンをしっかり監視しろ」
「承知しました」
「私の座を狙うとは、身の程知らずめ。ヨン・ナムセンごときが」


テ・ジョヨンが部屋の中を歩き回っている。
ヤン将軍の声「万が一、国運が尽きて、王朝が終わろうとも」

(回想)
ヤン将軍「民が死なぬ限り、その国は、いつかきっと再起できる。百済が復興に失敗したのも、民を守れなかったからだ。私の話を肝に銘じよ。常に民とすべてを共にすれば、お前がどこで何を夢見ても、その夢は必ず成就するだろう」
テ・ジョヨン「この胸に刻みつけておきます」
(回想終わり)

声「何と言われようと、自分のやり方を信じる」
(回想)
ヨン・ナムセン「お前のやり方で行け。私が正しかったと知った時ー、私を補佐するがよい」
(回想終わり)

テ・ジョヨンが立ち上がる。
フクスドルとコルサビウが入ってくる。
フクスドル「四日後に、蓋牟城へ兵糧が郵送されるそうだ」
テ・ジョヨンは、無言。
コルサビウ「何かあったのか?」
テ・ジョヨン「父上はどこに?」
コルサビウ「執務室だ」
「そなたらは出発の準備を」
フクスドルとコルサビウは顔を見合わせ、テ・ジョヨンは部屋を出て行く。

書物を読んでいるテ・ジュンサン将軍。
声「父上、ジョヨンです」
「お入り」
テ・ジョヨン、入り、一礼する。
「夜更けにどうした?」
「夜が明け次第、平壌城へ行ってきます。どう考えても方法がありません。このままでは民を奪われてしまいます」
「お前が行っても何も変わらん」
「ヨン・ナムセンに会います。以前、安市城に来た時、私に話した事があります」
「ナムセンは国を滅ぼした元凶だ。奴の話など信用できるか」
「今、遼東に出来る事は何もありません。民を救うためなら、藁(わら)でも掴むべきです。コルサビウたちが共に行きます。どうか許可を」
「国を奪われたのは一瞬だが、取り戻すには長い年月と忍耐を要すものだ。決して慌てず、軽率な行動を取るな」
「肝に銘じます」
一礼して出て行くテ・ジョヨン。


フクスドルとコルサビウがいる。
フクスドル「おっ、コルサビウ、食料の準備は?」
コルサビウ「それは、下っ端のお前の仕事だ」
「下っ端? 嘴(くちばし)の黄色い奴が。お前、干支(えと)は?」
「お前から言え」
「俺? 俺は、亥(いのしし)だ
「亥か、亥・・・。俺は戌だ」
「戌だと?(賢明に指を折って数える)」
「俺より一才も年下のくせに(手でフクスドルのほおをなでる)」
「今のは、ナシだ。もう一度お前から言え」
テ・ジョヨンが来る。
「準備は出来たか?」
「こいつ、食料を忘れてた」
「早くしろ」
テ・ジョヨンは去る。
コルサビウ「一才も年下のくせに。今後は注意しろよ。一才も年下の奴が・・・」
「おい、コルサビウ、俺、亥やめる。もう一度干支を言え」



テ・ジョヨン達三人が馬を走らせる。

民が兵に引きずり出されている。
イ・ヘゴとチョリンが見ている。
民の中に、ぼろをまとったブ・ギウォンとサブクが、縄をかけられて混じっている。

ソリンギ「捕らえた民の数が、もう数百以上だと?」
ポンペ「はい、契丹族が先頭に立って捕らえています」
「生意気な。ナムセンめ、私の手足を切るとは・・・」
「手足ですか?」
「こら、一瞬で契丹族を味方につけただろうが」
「陛下の主管なさる大業です。我らが押し出されてはなりません」
「そうだ、そのとおりだ。これは何かが間違っている・・・」



安東都護府。

中庭に多くの民が座り、その周りを兵が取り囲んでいる。
「今から各自の特技別に分ける。中でも技術者はよい待遇を受けられるぞ。だが、何の取り柄もない者どもは、荒野へ連れて行かれ、一生地を耕す奴隷となるだろう。ゆえに、自分の実力を隠さず明かすがよい」しゃべっているのはソル・ゲトウ。
モゲ「城を築造できる者は立がよい」
四人が立つ。
「向こうへ」
「さあ、鉄を扱える者は立て。これだけか。後ろの方へ行け」
三人立ち、更にもう一人立つ。
ぼろをかぶり、顔を隠したサブクとブ・ギウォンが並んで座っている。
サブク「どうしましょう?」
ブ「黙っていろ。ナムセンに見つかったら命が危ない」
シン・ホンに気付き、慌てて下を向く二人。

牢獄の隅に、サブクとブ・ギウォン。
サブク「技術者は別に収容されました。このままでは一生奴隷です。ソリンギに正体を明かした方が・・・」
「こら。ケジンたちが殺されたのを見ただろう。ソリンギに騙されたと思うと、今でもはらわた(腸)が煮えくり返るようだ」
「ですが、辱薩様(ヨクサルサマ)」
「辱薩だなんて」
縄をかけられているそばの男が聞きつける。
「もしや・・・南部辱薩ブ・ギウォン様か?」
「人違いですよ」
「ブ・ギウォンだぞ。平壌を唐に売ったブ・ギウォンだ」
「何? 逆賊ブ・ギォンに違いない」
「殺せ、城門を開けて国を売った奴だ」
「殺せ」
数人が、縄をかけられている体で、ブ・ギウォンとサブクを足で蹴りつける。
民が続々と集まってきて、皆で蹴りつける。

番兵「解散しろ。皆下がれ」
シン・ホンがのぞき込み、血だらけのサブクとブ・ギウオンに気づく。

ナムセン「何? ブ・ギウォンが?」
シン・ホン「そうです。サブクと共に隔離しておきました」
「奴め、生きていたとは。行くぞ」

ナムセンたちが歩いて牢獄へ行く。

獄中の、傷だらけのサブクとブ・ギォンを見下ろすナムセン。
「唐にまんまと騙されたーその姿は見ものだな」
ブ「それでも私は、最後まで高句麗を救おうと死力を尽くした。唐さえ裏切らなければ」「黙れ、そなたら臣下こそが高句麗を潰した元凶だ」
「だが、唐に頼って出世したりはしなかった。国を売った裏切り者はお前だ」
ぎくっとするナムセン。
サブク「我らをどうする?」
「高句麗から、最も遠い荒野へ送る。そこで牛馬のように酷使され、死ぬまで苦しむ事になろう」
シン・ホン「(戻ってきて)私の兄は?」
サブク「皇宮まで一緒に逃げたが、その後は誰も知らぬ」
ブ・ギウォン「お・・・お、おい、我らは同じ船に乗った仲だろう? 助けてくれ」
シン・ホンは行ってしまう。
「おい、待ってくれ」


平壌城の入り口の検問所
木の札を見せて、通る。
門番「次、次」
テ・ジョヨンの番。
門番は、テ・ジョヨンを剣で止める。
門番「どこから来た?」
テ・ジョヨン「唐と交易している商人だ」
門番が、テ・ジョヨンを胡散臭そうに、調べようとする。
フクスドル「ハハハハハ、だんな、これで酒でも(金を渡す)…取引で儲かってな」
門番「次」


室内(宿屋?)
テ・ジョヨンとコルサビウがいる。
フクスドルが入る。
テ・ジョヨン「どうだ?」
フクスドル「門番を買収しようとしても、すべて唐人だ」
コルサビウ「高句麗人はいないのか?」
「いても知らぬ者ばかりだ。うかつに動けば、皆死ぬぞ」
コルサビウ「仕方ない、塀を越えよう」
テ・ジョヨン「ナムセンの本心を知るには、騒ぎは禁物だ」
コルサビウ「方法がないのだ」
テ・ジョヨン「全くないわけではない」
フクスドルとコルサビウはびっくり。

馬に乗ったシン・ホン。
手綱を引く従者がいる。
フクスドルとコルサビウが現れて、従者を倒す。
シン・ホン「何者だ?」
フクスドル「俺を忘れたか? フクスドルだ」
シン・ホンびっくり。
コルサビウ「大人しくついて来い」

シン・ホンは、テ・ジョヨンが待つ部屋に通される。
振り向くテ・ジョヨン。
「私を知っているな?」
シン・ホン「一体、何だ?」
テ・ジョヨン「だんな様に会わせてくれ」
「何の用でだ?」
「前に安市城へ来た時、私に話した事があった。その真意を確かめに来た」
「それなら、今この場で私が答えられる。だが、直接聞きたいなら、場を設けよう」
「(頷きながら)かたじけない」
「人の目もあるから、明日の夜明け前に、ここにお連れしよう」
「頼むぞ」


シン・ホンは、建物から外に出る。
シン・ホンの心の声「亡き主の恨みを晴らすためにも、いつかは殺すべき男だ(歩き去る)」

フクスドルとコルサビウが、出てきて、シン・ホンの後ろ姿を見ている。
フクスドル「何だ?」
コルサビウ「あいつを信じられん」
「そうだ。経験からして奴は信用できんぞ」

イ・ヘゴが書き物をしている。
声「李副将はおいでか?」
イ・ヘゴ「どうぞ」
シン・ホンが入ってくる。
シン・ホン「名簿の整理は後にして、直ちに出兵を」
「何事だ?」
「テ・ジョヨンがいます」
イ・ヘゴびっくり。
シン・ホン「何も聞かず、今すぐ彼を殺しなさい」
「行こう(立ち上がって、剣を取り、出かけようとする)」
チョリンが入ってくる。
チョリン「兄上。夜更けにどこへ?」
「何でもない、すぐ戻る」

兵士が家を取り囲む。
刀を抜いて、部屋に入るイ・ヘゴ。
誰もいない。
イ・ヘゴ「(外へ出て)まだ城内にいるはずだ。周囲を探せ」
茂みから、その様子を見ていたフクスドルは、思った通りという顔で頷き、立ち上がる。

暗い部屋の中にテ・ジョヨンがいる。
フクスドルが入ってくる。
「どうだ?」
フクスドル「コルサビウの予想通り、唐軍が来た」
苦い顔で、机を叩くテ・ジョヨン。
フクスドル「危なかったな。コルサビウは?」
コルサビウが入ってくる。
テ・ジョヨン「調べたか?」
「この辺りで、黒ネズミは有名だ」
「黒ネズミ?」
「黒ネズミって何だ?」
「会うにはどこへ行けば?」
「城外の物乞いの村だ」
テ・ジョヨン「物乞いの村?」
フクスドル「黒ネズミって何だ? 物乞いの村は?」
「まずは、城外に出て黒ネズミに会おう」
「それがいい」
「おい、この野郎、一体黒ネズミって何だ」


ナムセンの部屋。
シン・ホン「お呼びですか?」
「一体、何事だ? テ・ジョヨンだと?」
シン・ホン「(椅子に座る)だんな様に会いたいと訪ねてきました」
ナムセン「なぜ言わなかった?」
シン・ホン「今は、彼に会ってはなりません。だんな様の目的は安東都護府の掌握です。万が一、彼に会って、ソリンギ将軍にばれたら、今までの苦労は水の泡です」
ナムセンため息。
「だんな様、今度こそ、何が何でも望みを叶えるのです。そのためにも、慎重に慎重を重ねるのです」
「では、テ・ジョヨンは?」
「今、追跡中です。平壌から簡単には逃げられますまい」


平壌城下を大きな帽子をかぶったテ・ジョヨンとコルサビウが歩いている。目の前の壁に、テ・ジョヨンの似顔絵が張られているのを発見する。フクスドルが現れる。
フクスドルも似顔絵を見てびっくり。
フクスドル「うまくいけば城外に出られそうだ。入るときの門番だったぞ、確認してきた」
「どうする?」
「このままでは捕まってしまう」
「急ぐぞ」

契丹部族長とチョリンがお茶を飲んでいる。
ソン・マニョン「(入ってきて)可汗」
部族長「李将軍はどうした?」
「敵の間者を追っています」
「間者だと? 抗唐組織の者か?」
「遼東の者だそうです。これを…(似顔絵を広げて見せる)」
部族長「これは…テ・ジョヨンだ」
チョリンびっくり。
似顔絵の前を人々が行き来する。
モゲ達がいる。
イ・ヘゴが来る。
「どうだ? 」
「奴らはまだ城内にいるはずだ」
イ・ヘゴ「ついて来い」
モゲ「しっかり見張れ」
兵隊の声「はい」
イ・ヘゴが通りながら見ていた人々の中に、帽子を深くかぶったテ・ジョヨンとコルサビウ。
フクスドル「(門番に金を渡しながら)お互いさっさと済ませよう」
門番「一行は?」
「向こうだ」
「行け」
テ・ジョヨンが通り過ぎるとき門番と目が合う。
門番「テ…テ・ジョヨンだ、テ・ジョヨンだぞ」
門番を倒すテ・ジョヨン。
フクスドル「俺に任せて早く行け」
三人で戦い、門へ行く。

イ・ヘゴたち「どけ、皆どけい(走っていく)」
テ・ジョヨン達が門を出ると、イ・ヘゴ達が追う。
「どくんだ、どけ」
「捕らえろ」

イ・ヘゴが弓を射る。

フクスドルの背中に当たる。
コルサビウが連れて行く。

イ・ヘゴ「逃がしてはならん(走っていく)」

脇道の物陰から、テ・ジョヨン達が顔を出し、様子をうかがう。
フクスドルが痛がり出す。
コルサビウが矢を抜く。
テ・ジョヨン「村は山の向こうだ。歩けるか?」
フクスドル「ズキズキする。早く行こう」
コルサビウ「(フクスドルの荷物を持つ)俺が持つ」

物乞いの村。

人々がよろよろ歩いている。
テ・ジョヨン達が入って、呆然としながら見渡す。

「飯をめぐんでおくれ」

テ・ジョヨン「お尋ねしますが、黒ネズミという者がいるとか」
聞かれた人はあわてて逃げていく。
「あの、ちょっと」
座っている人たちに聞く。
「黒ネズミという人はここに…」
みんな逃げていく。
「ちょっと、おい」
コルサビウ「皆、恐れている」

近付いてくる人がいる。
「ちょっと、黒ネズミに会うのか?」
テ・ジョヨン「さよう、ここだと聞いたが。お宅らは誰だ?」
コルサビウ「安市城から来た者だ」
「ついてきな」

フクスドル「黒ネズミはここに住んでいるのか?」
「ここで待ちな」
「ハハハハハ、まったく…汚くてお化けも来ないだろうな」
周りの人が、一斉に棒でフクスドル、テ・ジョヨン、コルサビウを殴り倒す。
「しっかり縛れ」

イ・ヘゴ達が来る。
「どけ」
「顔を上げろ」
「血痕はここで消えています」
「まともな奴は一人もいない」

黒い眼帯をした男が座っている。
イ・ヘゴがさやのママの刀をその男の肩に当てて、
「怪しい者はいないか?」
「ご覧のとおり、私は目の見えぬ者だ」
イ・ヘゴ「ここに来たはずだ」
「では、見て行ってくれ」
「皆の者、ここを隈(くま)なく探せ」
「はい、副将」
「流行(はや)り病に気を付けなされ」
「何? 流行り病?」
「病だと?」
「ここで病が広がったとは、初耳だぞ」
「昨日辺りから、一人二人死に始めた。皆に感染するわけじゃなし、早く見て行くといい」

イ・ヘゴ「待て」
人間を運んでいる人に声をかけて、止める。
死人を覆っているむしろを持ち上げてみる。
赤い斑点が出ている。
ソル・ゲトウ「ひええ、くそっ、本物の病だ」
イ・ヘゴ、顔をしかめる。

建物の中で、テ・ジョヨン達が縛られている。
フクスドル「何? 黒ネズミ? コルサビウ、お前が調べただろ?」
「黙ってろ」
「矢を背で防いでやったのに、こんな目に遭わせて」
「俺のお陰で助かっただろう」
「(しばし考えて、頷き)そうだった、へへへへ、ありがとよ」
「兄貴と呼べ、亥(イノシシ)年のくせに」
「何だと、この野郎」
テ・ジョヨン「どうもおかしい、抗唐勢力とは思えん」

村を見下ろすイ・ヘゴ達。
ソル・ゲトウ「あの…副将、このまま帰ろうぜ、あの村に隠れても無事には出られないさ、体がむず痒(かゆ)くなってきた」
「奴らは必ずあそこにいる」
モゲ「ですが、確認できません」
「焼き払え、皆消してやる。あの村を根こそぎ焼くぞ。者ども、あの村を残らず焼き払うのだ」
「あの、副将、村を焼くのは簡単だけど、また、あそこに行くのは何だか…」
「(ソルに刀を突きつけて)命令だ。早く火を放て」
モゲ「はい、副将、皆、来い」
「はい」
女の声「待て」
「チョリン」
「可汗の撤収命令だ」
「撤収?」
「ここに来たのをご存じだ。万が一、病が移ったら? 皆、撤収しろ。ここから出るのだ」


テ・ジョヨン達が縛られて閉じ込められている建物に、黒い眼帯の男達が入る。

「お前らは誰だ?」
テ・ジョヨン「安市城から来たと言った」
「黙れ、都護府の間者なのは、お見通しだ」
フクスドル「この野郎、なんて疑り深いんだ。黒ネズミに会いに来たと言っただろうが」男が、フクスドルを蹴り倒す。
「この…」
「奴らを生き埋めにしろ」
「はい」
「おい、こら」
「待て、こっちを見てくれ」

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テ・ジョヨン37回目

(DVD操作中で若干字幕が見えず)
ブ・ギウォン「国の事なのだ」

テ・ジョヨン「敵に騙されて、高句麗を滅ぼす者は絶対に許せない。首を出されよ、千人の敵を倒すよりも、ブ・ギウォンを殺す方が、高句麗のために価値ある事だろう。首を出されよ。早く」
双方とも剣を抜いて構える。
「何の騒ぎだ?」
ポジャン王と、ナムゴン達。
「皇宮内で、何をしておる」
テ・ジョヨン、剣をおろす。
ブ・ギウォン「この極悪非道な者を今すぐ投獄なさいませ」
ケジン「大臣を殺そうとした上に、恐れ多くも陛下のおわす皇宮を冒涜しました」
ポジャン王「戦や飢饉で国の紀綱が揺れようともこんな事は許されぬ。テ副将を連行せよ」
スギョンびっくり。
サブク「連れて行け」
「はい」
「そんな…」
テ・ジョヨンと、フクスドル、コルサビウ、連行される。


蛇水。
唐軍の陣営。

ナムセンが酒を飲んでいるところへ、ソリンギ達が来て、咳払いをする。
ソリンギ「テ・ジョヨンを釈放した?」
「それで、私を捕らえる気か?」
「できぬ事もない」
「明朝には、平壌城に唐の旗が翻る。高句麗の滅亡を前に。たかが捕虜一人だぞ」
「とにかく、全陣営が非常事態に入った。いくら何でも、決戦を前にして、酒を飲むとは…」
「どうせ、無血入城だろう。いや、無血入城ではない。高句麗が降伏すれば、唐は手当たり次第、殺して略奪するだろう。それを無血入城とは言えまい」
「さてな…」
「そう言えば、唐は高句麗との戦で約束を守った事がなかった。高句麗の臣下は、降伏すれば何でも聞いてくれると信じている」
「黙れ」
「契丹も、今回の事をよく見ておけ。果たして、唐が約束通りヨンジュを渡すか。平壌城の没落を見つつ、他山之石とするがよい」
「黙れと言うに」

平壌城
安○宮(アノク)
夜、コム将軍のあとにテ・ジョヨンが続き、皇宮内に入る。

ポジャン王とスギョン姫のいる部屋で、席に着くテ・ジョヨンとコム将軍。
ポジョン王「皆の目を避けるため、しばし閉じ込めた。聞けば、ブ大臣が唐に騙されていると?」
テ・ジョヨン「さようです」
スギョン「では、皇室を保ち、民を傷つけぬという話は嘘なのですか?」
「すべて降伏させるための策略です」
「だが、大臣らは、唐の約束を信じておる」
「皆、後悔するでしょう。決して降伏などしてはなりません」
「テ副将は何を根拠にそんな話を?」
「敵陣で投獄された時に、ナムセン様が私を助け、敵情を話してくれました」
「ナムセンは遼東を崩した張本人だ。信じられるのか?」
「ナムセン様は平壌へ来てから、一度も戦に参戦していません。動揺していると言う事です」
「それが事実なら、当然、決死抗戦するべきだ。だが、ブ大臣の判断が正しいなら、民と皇室のために、降伏を選ぶべきだ。しかし朕は何が正しいか分からぬ」
「もう夜が明けます。お早くご決断を」
スギョン「陛下」
テ・ジョヨンの険しい顔。

ブ・ギウォン、サブク、ケジン。
サブク「ご心配無用です。ヨクサル様の意のままになるはず」
ブ・ギウォン「私の意ではない。民と天の意なのだ」
ケジン「そうだとも。とにかく、死にかけた高句麗をそなたが生き返らせた」
「今夜は長くなりそうだ。この夜が明ければ、高句麗を覆う戦雲も消えるのだが」

月に雲がかかる。

テ・ジョヨン、スギョン、コム・モジャムがテーブルに座っている。
ポジャン王は立って、思案げに歩き回っているが、着席。
テ・ジョヨン「私は、亡き大莫離支とヤン将軍の最期を看取りました。お二人がいれば、決して降伏や妥協を考えなかったでしょう」
ポジャン王「だが、彼らはもう去った。今、朕のそばには誰もおらぬ」
「いないのは、二人だけです。高句麗の兵や民、山川草木も変わっていません。臣下も高句麗を狙う唐の邪悪さも同じです。そして、去る千年間高句麗が国を守ってきた方法もです。なのになぜ、一度もなかった屈辱的な道を選ぼうとなさいます? 陛下、前に陛下は、私にヤン将軍の暗殺犯を問われました。真犯人は唐です。しかし、唐の命令で暗殺を実行したのは他ならぬブ大臣です」
王びっくり。
スギョンも。
「内紛を恐れて、黙っていました。でも今は高句麗のために、真実を明かす時です。陛下、ヤン将軍を殺めた逆臣の主張を聞きますな。降伏はなりません。絶対になりません」
「大莫離支を呼べ。今すぐ勅令を出すぞ」
コム「はい、陛下」

平壌城城下。
シン・ホンやソル・ゲトウ、モゲが歩いている。
テ・ジョヨン達が馬で通り過ぎる。
「あの兵はどこへ?」
「向こうは、あっちなら、臣下たちの住む東村だ」
「東村? 何事か調べろ」
「承知しました」

ブ・ギウォンが出てくる。テ・ジョヨン達に相対する。
「朝から何事だ?」
コム・モジャム「陛下の勅令です」
「それで? 勅令が出たら城楼に行くべきだろうが」
「陛下は、決死抗戦を命じられました。それに、降伏を主張し、朝廷を乱したブ大臣に、時局が安定するまで、家宅軟禁を命じられた」
「何…家宅軟禁だと?」
「これから、我らは全力で唐と戦う。そのつもりで自重なさるように」
「どういうつもりだ。そなたらのせいで国が潰れるぞ。天も憤怒する大逆罪だ」
「者ども、ブ大臣を邸に軟禁するのだ」
「はい」
「(二人の兵士に抱えられて)放せ、天が恐ろしくないのか。陛下の目と耳を塞ぎ、国を潰すとは。貴様ら天が許さぬだろう」
「早くしろ」
「放せ、放さんか、おのれ…」


武将の会議。
ナムゴン着席、続いて全員着席。。
「戦はこれからだ。皇室と民の平和は、皆の武器と胸に秘めた固い意思にかかっている。皆肝に銘じよ。始めたのは敵だが、終止符を打つのは、我らだ。よいな?」
「はい、大莫離支」

騎馬兵が走る。

唐の陣営。
イジョク「城楼に唐の旗がかかったか?……なぜ答えぬ? 敵は降伏したのか?」
イ・ヘゴ「申し訳ありませんが、城楼には高句麗の旗ばかりです」
「では降伏しなかったのか?」
ソリンギ「そんな馬鹿な。正気ならば抗戦するはずがない」
契丹部族長「ブ大臣は? 降伏すると約束したブ大臣は?」
「じきに城内の間者から、詳しい報告が入るでしょう」
「報告も何も、むしろ好都合です。直ちに新羅軍と連合し、総攻撃しましょう。今度こそ力でねじ伏せるのです」
「お待ち下さい。様子を調べてからでも遅くありません」
ソリンギ「やれやれ、まったく…」


コルサビウとフクスドルが、コ・サゲ、テ・ジョヨン達と合流する。
コルサビウ「臣下がブ大臣邸に集まっています」
コム「他に異常は?」
フクスドル「ないようです」
コ・サゲ「机上の空論ばかりの輩だ。気にするな。それよりも唐の陣営から目を離すな」「はい、将軍」
テ・ジョヨン、じっと考えこむような表情。


ケジン「ついにこの日が来たか。そなたの命がけの交渉が無駄になってしまった」
ブ「我らまで諦めては、高句麗は終わりです」
「だが、軟禁された我らに何ができる?」
「高句麗を救う方法はまだあります」
「何か良い方法でも?」
声「ヨクサル様、シン・ソンです」
「早く入れ」
「おや、ここへは何用で?」
「私が呼びました。そなたは、外で見張り、ここに誰も近づけるな」
サブク「はい、ヨクサル様」
「今まで、唐との交渉は私の担当でしたかg、家宅軟禁されては、何もできません。今後は、私の全権限と能力をこの者に預けます」
「ブ大臣」
シン・ソンがにやりとしながら、胸を張っている。

邸から、シン・ソンが出てくる。
モゲが近づき、目配せして、挨拶し、先に立ってシン・ソンを案内する。


部屋の中にシン・ホンがいる。
シン・ソンがくる。
「指示通り受け入れたが、今後が大変だ。全臣下が監視されて、助力者は多くない。しかも、大莫離支も騙さねれば」
シン・ホン「難しく考えますな。我らが、密かに城門を開けて、唐軍を迎えるのです。歯向かう者は殺され、降伏を主張した者は功を認められるでしょう。違いは主導したのが皇室か臣下だけです」
シン・ソン「では、私は何からやればいい?」
「この事を臣下に知らせなさい。私は具体策を立てて、唐軍と交渉します」


イ・ヘゴとチョリン。
イ・ヘゴは、口笛を吹いて、鷹を呼び寄せる。鷹の足から、巻いた手紙を取り出し、チョリンに渡す。
チョリンは手紙を読み、イ・ヘゴを見て頷く。


ソリンギ「何…城門を開けるだと?」
イ・ヘゴ「はい、大臣と手を結び、夜中に密かに城門を開けるのです
ソリンギは、笑う。
チョリン「そのとおりになれば、皇室と民の安全はいかに?」
「何が安全だ。馬鹿な奴らめ。大臣たる者が、まだ状況も把握できんのか」
契丹部族長「時間がありません。早く日にちを決めて実行しましょう」
「よし、大ソウ管に会ってくる。ポンペよ、行くぞ」
「はい、将軍」
ナムセンとチョリンの顔が引きつっている。


テ・ジョヨン「何かがおかしい」
「何がだ?」
「交渉が決裂してから、敵は一度も軍を動かしていません。臣下たちもです。最近は会議もありません」
コム「大臣らの主張は押さえ込んだ。あとは平壌城を守るだけだ」
コム将軍「目前の唐や新羅軍だけでも頭が痛い。考えるのはよそう」
コム「あれは何だ?」
テ・ジョヨン「彗星です。城門の上を通りました」
「何とおかしな事だ、こんな時に、彗星とは」



テ・ジュンサン将軍と、もう一人の将軍が話し合っている。
「兄上」
「よく来た。調べたか?」
「何事です? あの彗星には何か意味が・」
「畢星と、昴星の間を通り、南西へ落ちた」
畢星:国家の運命を司る星座。
昴星:興亡を予言する星座。
「巫女の話では、平壌城に大災があるとか」
「災いだと? 平壌城が陥落するとでも?」
「皇子はそれ以上は何も…」
「将軍、今からでも軍を動かしては?」
「巫女の話が本当ならば、なおさら遼東を守らねば。今後のためにな」
「兄上」
「頼む、何としても平壌城に、この難だけは、耐え抜いてもらわねば。頼むぞ」

「何? 今月の晦日なら今夜だぞ」
「そうです、今夜です」
サブク「時間がなさすぎる。最低でも10日前に…」
シン・ソン「尾が長いと捕まります。皆の口をいかに取り締まると?」
「話しなされ。何をすべきだ?」
「我らの目標は南門です」
「南門?」
「南門は周囲の地形が険しく潜伏しやすい。サブク将軍は時間通りに南門を開けなさい」「分かった」
「唐とは、もう話はついたのか?」
シン・ホン「さようです。今頃は、作戦開始を待っているはず」
ケジン「今夜、今夜か…」


唐の陣営。
イ・ヘゴが壁の地図で説明している。
「先鋭隊はここで待ち伏せます。南門が開いたら、新羅軍が一斉に北門を攻めます。その隙に唐軍は南門から突入します」
ソリンギとイジョク、うなずく。
「新羅よりも、我らが先に皇宮を占領すべきです。高句麗王と皇族の逃亡を防ぎ、大莫離支を捕らえるのです。大莫離支の邸は後苑が山につながっており、逃げられる恐れがあります。そのため、大莫離支を捕らえるには、後苑を包囲し…」


山の中を進むイ・ヘゴとチョリン達。

馬で進むシン・ソン達。

城門が見える物陰から、火矢を撃つイ・ヘゴ。


高句麗の将軍達が歩いている。
兵士「将軍、奇襲です」
「奇襲だと? 城門は閉じたままだぞ。ついて来い」

城門に到着すると、サブクが戦っているのを見る。
「サブクではないか、反乱軍だ、皆殺せ、殺すのだ」
入り乱れて戦うが、隙を見て、サブクは城門を開ける。
イ・ヘゴ達が一斉に入る。
「防げ、奴らを防ぐのだ」
「城門が開いたぞ」
「貴様ら」
サブク「奴らを消せ」
シン・ソンが物陰から見ている。


コ・サゲ達。

フクスドル「将軍、将軍、唐軍が南門を攻撃しました」
「敵の数は?」
「分かりません、今、南門に火の手が」
火矢が飛んでくる。
「一体どこからの矢だ?」
コム「奇襲だ、敵が攻めてくるぞ」
コルサビウ「将軍、将軍、新羅軍です。新羅軍が総攻撃を始めました」
コム「皆、持ち場を守れ。落ち着くんだ」
「テ副将」
「はい、将軍」
「ここは、私とコム将軍に任せろ、今すぐ軍を率いて南門へ行け」
「はい」

テ・ジョヨンとフクスドルが軍を率いて急ぐ。
前方に敗残兵。
「将軍」
「南門へ行くな。唐の大軍が来た」
「南門は陥落したのですか?」
「裏切り者が中から城門を開けたのだ」
フクスドル「あの野郎どもめ」
「今すぐ皇宮の陛下を守れ、早く」
テ・ジョヨン「(うなずき)行こう」
オン将軍「皆来い、行くぞ」


ブ・ギウォン「南門から唐軍が入ったのか?」
シン・ソン「ケジン様達が、大ソウ管を迎えに行きました」
ブ「長い戦がやっと終わりそうだ」
「お急ぎを。この件の一等功臣はブ大臣です。行って大ソウ管に会わねば」
ブ「はははは、行こう」




イ・ヘゴ達が馬に乗ったソリンギや大ソウ管の率いる唐軍を出迎える。
イ・ヘゴ「ようこそ、大ソウ管」
「ご苦労だな」
「北門では、新羅との応戦に追われています」
チョリン「東西の門も攻撃されています」
ポンペ「あちらをご覧下さい」
臣下たちが歩いてくる。

ケジン「私は、北部褥薩(ヨクサル)ケジンです。イジョク大ソウ管はどなたでしょう?」
「私がイジョクだ」
臣下一同、頭を下げる。
「高句麗に平和をもたらす唐軍を歓迎するために参りました。こちらは臣下たちと従者です。こちらの要求はすでにお伝えしました。皇室と民を認め、高句麗の悠久な文化と歴史を維持させて下されば、我らは唐軍の入城を光栄として受け入れましょう」
ソリンギ「はははは」
イジョク「感謝するぞ。だが、そなたらの条件は何一つ受け入れられん」
ケジン「それはどういう事です?」
「高句麗の皇室はその歴史が深遠なので、開国して3代目の唐としては到底黙認できん」
「な…」
「また、戦で消耗した国力を補うためにも、高句麗の民を唐へ連れて行く」
「な…何をおっしゃるか」
ナムセン唖然としている。
「悠久なる文化と歴史?? それこそが高句麗を滅ぼそうとした理由だ。その傲慢な文化と歴史を消すためだ」
ケジン「貴様ら、約束が違うぞ」
サブクびっくり。
「どけ、皇宮へ行くぞ」
「ならん、行かせぬぞ。一歩も入れるものか」
「者ども、奴の首を斬れ」
ソリンギ「者ども、皆殺しにして、皇宮を占領せよ」
「ならん、入らせぬぞ。一歩たりとも進ませはしない」
シン・ソン、ブ・ギウォンがきてびっくり。
「皆、殺せ」
ケジン、斬られる。
イジョク「邪魔する者は斬り捨てろ」
サブクびっくり。
ナムセン、契丹部族長は渋い顔。

シン・ソン「行きましょう、早く行きましょう」
「そんな…」


ポジャン王が部屋の中で歩き回っている。
スギョン「陛下、陛下」
「一体何事だ? 叫び声が聞こえる。どこの軍なのだ?」
「私が見てきます」
「スギョン」
「しばしお待ちを、すぐ調べてきます」
「スギョン、スギョン」


侍女を連れて行くスギョン。
戦いの場面に遭遇する。
「あの兵士たちは誰?」
「新羅軍です」
「行こう」
戻ろうとすると、別の新羅軍の兵士達。
「捕らえろ」
テ・ジョヨン達が現れ、捕まえようとする兵士を倒す。
「高句麗の兵だ」
テ・ジョヨン「さあ、来い」
戦うテ・ジョヨンとフクスドル。
テ・ジョヨン「陛下はいずこに? スギョン様」
「(我に返り)陛下、陛下(走り出す)」
後を追うテ・ジョヨン。

戻ったけれども、ポジャン王の姿はない。
皇宮を探し回る。
「陛下、陛下」
「敵が皇宮内に入った、早く逃げるんだ」
スギョンがあせって走り回る。
「スギョン様」「時間がない、コルサビウ、おい、あの野郎」



イジョクとソリンギが大勢の兵士を連れて歩いている。
ソリンギ「将軍、急ぎましょう。これでは新羅軍に皇宮を取られてしまいます」
「どこかに王が隠れているはず。皇宮を焼き払い、高句麗王を探せ」
「高句麗王を探せ、皇宮を焼き払え」
「はい」
「高句麗王を捕らえよ。すべて残らず焼き払ってしまえ」

玉座に座っている王。

「陛下」
「陛下」
「陛下」
「陛下、早くお逃げ下さい」
「陛下」
「時間がありません」
「スギョン、手副将についてお行き」
「陛下、陛下は?」
「朕はここを去れぬ」
「いいえ、陛下を置いて行けません」
「朕以前に27人の王がおられた。先祖様の成した高句麗を、この無能な朕が潰した」
「陛下」
「朕は高句麗と運命を共にする。早く行け」
「陛下」「スギョンを頼む。実の娘のように育てた子だ」
「陛下」
「早く連れて行け。皇命だぞ。さあ、早く、行け」
フクスドル「時間がない、行くぞ」
テ・ジョヨン達、敬礼して、スギョンの手を取り行く。

戦いのさなかを、コルサビウとフクスドルが道を斬り開く。

コ・サゲ発見。
「将軍、将軍」
「無事か? 陛下は? おのれ、唐軍め」
コルサビウ「他の将軍は?」
「別れて生死も分からん」
「時間がありません、逃げましょう」
コ・サゲ「民を連れて東門へ行くぞ」
テ「将軍、ところで、大莫離支は?」

ナムセンが走っている。
ナムゴン「父上、どうか、愚かなナムゴンを許さないで下さい。私は父上の偉業を守れませんでした。とうとう高句麗を潰してしまいました。父上、父上!!(剣を見つめ自害する)」
そこへ、ナムセン。
「(剣を落とす)ナ…ナムゴン!、ナムゴンしっかりしろ、目を開けるのだ」
「兄上…」
「そうだ。私だぞ」
「ずっと…、兄上を待っていたのに。怖かった…兄上もおらず、国の大莫離支の座があまりにも怖かった」
「すまぬ、許してくれ」
「悔やまれます。兄上と私が協力していれば、我ら兄弟が互いに信じて頼っていれば、こんな日は来なかったのに」
「ナムゴン…」
「すべては我ら兄弟のせいです。我らが、父上の遺志を継げず、高句麗を潰してしまいました」
「お前のせいじゃない、すべて私が悪いのだ」
「兄上…」
「ナムゴン」

契丹部族長とチョリン達がいる。
兵士「可汗、可汗(走ってくる)、高句麗の敗残兵が城門を攻めています」
イ・ヘゴ「敗残兵だと?」
モゲ「民を連れて脱出を図っています」


城門の前で戦うテ・ジョヨン達。
「ここは、我らに任せて民を連れて脱出を」
コ・サゲ「お前達は?」
「すぐ行きます。早く民の引率を」
コ・サゲ「皆、こっちだ」
コ・サゲとスギョン、民が城門を出る。
契丹兵が来るのに気づくテ・ジョヨン。
「早く城門を閉めろ」

スギョンは逃げながらテ・ジョヨンを目で追っている。
「姫、早く」
城門が閉まる。
テ・ジョヨン達と契丹兵が対峙する。

イ・ヘゴ「こやつらを殺し、逃げた民を追え。一人も生かすな」
テ・ジョヨン「民を殺すなら、我らを殺してから行け」
コルサビウ「命ある限り、一人でも多く殺す」
フクスドル「早く来い、皆相手をしてやる」
イ・ヘゴ「よし、皆殺してやろう。者ども、今すぐ奴らを」
チョリン「やめろ。父上、彼らを生かして下さい」
イ・ヘゴびっくり。
「戦は終わりました。高句麗は滅び、我らはヨンジュを得られます。これ以上、我が兵を死なせてはなりません。だから彼らを逃がして下さい」
イ・ヘゴ「生かして花はなりません。禍根を残しますぞ」
「父上」
「可汗」
「これまでに部族や国を代表する勇者を何人も見た。だが敵を倒す勇者は多かったが、民のために命をかける勇者は、初めて見た。テ・ジョヨンとやら、真の勇気は賞賛されるべきだ。皆の者、彼らを逃がしてやれ」
「可汗、なりませぬ」
「我らが他国の戦に出たのも、草原にいる我が民のためだ。彼らを殺せば、我が民は、可汗の不徳を詰るだろう。なにをしておる、早く行け」

テ・ジョヨン「(じっと見つめている)行くぞ」
剣を構えながら、後ずさりし、城門からでるテ・ジョヨン達。
「可汗」
「テ・ジョヨンを覚えておけ。敵であれ同士であれ、いつか必ず再会するだろう。仮名あらずそうなる」
怒りのイ・ヘゴ。

山道を歩いていくテ・ジョヨン達。
「あれをご覧なさい」
フクスドル「平壌城が燃えている」
コ・サゲ「皇宮が燃えている」

西暦668年9月、唐と新羅の連合軍はついに平壌城を陥落させた。紀元前227年のチュモ聖王から、最後の大王ポジャン王まで続いた高句麗は久遠なる900年の歴史に幕を閉じた。古代北東アジアの最強国として君臨してきた高句麗。その高句麗の滅亡は、韓民族史の痛みとして残った。
しかし、高句麗の歴史はこれで終わらなかった。絶望の底から民は高句麗の復活を夢見始めたのだ。後日、海東盛国と称された渤海は、こうして廃墟の中から始まったのだ。

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テ・ジョヨン36回目

騎馬兵が走る。

平壌城。高句麗陣営。

コルサビウ「将軍、今戻りました」
「新羅軍は?」
「蛇水に陣営を立てました」
「軍は?」
「報告どおり20万はいます」
ナムゴンは顔を引き締める。
コム「唐の陣営は?」
フクスドル「陣営外に出る気配は見えません」
コ・サグ「無理もない、我らにやられたのだ」
テ・ジョヨン「でも、いつ何をするか分からぬ輩です」
ナムゴン「その通りだ。新羅よりも唐の奴らに注意せよ」
「はい、大莫離支」


蛇水。唐の陣営。
パオのようなものがたくさん並んでいる。
「ここに来てもう一ヶ月だ。その間、一度も勝ったためしがない」
ソリンギ「将軍、新羅軍も着いた事だし、心機一転して…」
「うぉっ、ほん、敗因が兵力だとでも? 新羅軍と合流してでも、あの平壌城を落とせねば、全員蛇水に身を投げねばならん。分かったか?」


せきばらいしながら、ソリンギ達が出てくる。
部族長「大ソウ管の様子からして、このままでは終わりますまい」
ソリンギ「ナムセンは相変わらずか?」
ソン・マニョン「やはり平壌城攻撃に出るつもりはないようです」
「ナムセンが手伝ってくれればいいのに。平壌城を落とす方法がない。何とかならんか。やれやれ…」
イ・ヘゴが前に出てどこかへいく。

別室。
シン・ホン「方法はあります」
チョリン「平壌城を落とす方法が?」
「簡単ではないが、確かにあります」
イ・ヘゴ「話してくれ。平壌城をどう攻めればいい?」
「外から叩いても無駄です。弱点を突かねば」
チョリン「弱点を?」
シン・ホン「今は、平壌の臣下が団結していても、砂粒は長くはまとまらぬもの」
「では?」
「今、効果的なのは、攻城戦ではなく、心理戦です」
チョリン「心理戦?」
「そうです。彼らの不安を煽れば、あの団結は脆くも崩れ去り、難攻不落の城も一瞬で落ちます」
イヘゴ「シン公の計略を教えてくれ」
「お願いします。お助け下さい」
「私はヨン将軍に仕える身です。だが、主は戦意を失っています。高句麗を滅ぼすべきなら、今から、李副将に助力しましょう(辺りをうかがって、人がいないことを確かめて小声で)煮汁を入れなさい」

(ここから画面表示せずに、レコーダーを操作していたので不明)
ソリンギ「○×○×?」
契丹部族長「○×○×」
(画面表示回復)
チョリン「はい、平壌城に着いた頃です」
ソリンギ「計画は良いが、並の者には難しい任務だぞ」
部族長「誰が行った?」
イヘゴ「ヨン将軍の策士のシン・ホンです」
「シン・ホン? シン・ホン自らか? なら話は別だな」
ソン・マニョン「シン・ホンは知るほどに大した者です」
「ナムセンのためでないと軽々しく動かぬ者なのに…どういう風の吹き回しだ?」



平壌城から武将達が外を見下ろしている。
フクスドル「将軍、今、南門を見てきましたが、怪しい者が来ました」
「怪しい者?」
「平壌に縁者もなく調査していたところ、大莫離支の師父が連れて行きました」
コ・サゲ「大莫離支の師父?」
コム・モジャム「僧のシン・ソンです」
「ならば身元は確実だな。大丈夫だろう、放っておけ」
テ・ジョヨン「今は、些細なことでも注意せねば。私が確認してきます」
「早く行け」
「はい。行こう」

部屋の中。
シン・ホンが、落ち着かなく歩き回るそばで、モゲとイ・ヘゴがテーブルに着いている。シン・ホンは、何事かを考えているような顔だが、にやりと不敵に笑う。


門を開けると、外にはテ・ジョヨン達。
「何事だ?」
テ・ジョヨン「取調中の者を引き取られたとか」
「寺で一緒だった弟子たちだ。もう帰られよ」
シン・ソンは、テ・ジョヨンたちに背中を向けて、戻る。
「何…」
フクスドルとコルサビウが、しまりかける門を押し開ける。
「何をする?」
「この目で確認させて下さい」
「ここは、大莫離支邸だ。勝手に入るとは」
「今は戦時です。どこから間者が入るか分かりません」
「私が誰か知らぬのか? 私は大莫離支の策士だ。誰にそんな口を叩く? この邸を調べるなら大莫離支の許可を取って来い。でないと通さんぞ。門を閉めろ」
「おい、こら、おい」
コルサビウ「俺が塀を越える」
フクスドル「その必要はない。門を壊そう」
テ・ジョヨン「城門を開けたままだ。いったん帰ろう」
フクスドル「ええい…まったく」


シン・ホンとシン・ソン。
シン・ホン「(茶を飲みながら)いいお茶ですね」
「何事だ? それに共の者は何だ?」
「今は、我らが力を合わせる時です」
シン・ソン「私に唐を助けろという事か?」
「今は、大勢に従うべき」
「私は大莫離支に仕える身だ。城外に出る道を探すから、早く帰れ」
「兄上、主は常に替わり得ます。兄上が主になるときでは?」
「なぜナムセンと共に唐を助ける?」
「高句麗には希望がないからです」
「弟よ」
「南の平壌と北の遼東は敵対して久しく、ナムゴンとブ大臣の不仲で、平壌は東西に分かれました。南北が争い、東西に分かれては、国は切断されたも同然です。兄上、今は言えませんが、私には遠大な夢があります。私を信じてお助け下さい」
「お前に隠れ家をやろう。それ以上は望むな」
「ただ一度だけです。兄上だけに出来ることなのです、兄上」




高句麗陣営。
会議。
ナムゴン「国家の祭事を?」
シン・ソン「さようです。今の民心は最悪です。私の知る巫女がいます。護国の英霊を呼ぶのも良いかと」
オン・サムン「良い考えです、そうなさいませ」
イ・ギウ「軍の士気も落ちました。雰囲気を変えるのも悪くはありません」



一同が見ている中で、派手な衣装を着た巫女が、大きな音が鳴る中で、ぐるぐる回って踊っている。
手に剣と鈴のついた飾り物を持ちながら、全身をぶるぶる震わせ、目をひきつらせて、立ち止まる。
巫女「滅ぶだろう。この高句麗は滅ぶだろう」
一同びっくり仰天。
巫女は突然倒れる。
「巫女様、巫女様」
「巫女よ、しっかりせい、しっかりするのだ」
巫女「(突然目を開ける)北極星が、光を失った。月が日を遮り、白昼を暗黒に変えてしまった。どうしたらよいのだ。900年来のこの国が、80の老人に滅ぼされる。900年来のこの国が80の老人に滅ぼされるとは」
「何と」
「900年来のこの…この…」
「巫女様」
「巫女よ、気を確かに」
シン・ホンのほくそ笑む顔。


夜、物陰で、巫女役の女と待ち合わせたシン・ホンが、袋の中の金の音を立ててみせ、巫女に渡す。
巫女の後をつけるソル・ゲトウとモゲ。
見えないところで刀の音がし、ソル・ゲトウとモゲが姿を再び現す。
その後ろに、巫女が倒れている。

夜、モゲとソル・ゲトウが、次々に、井戸に、桶から赤い汁を入れる。

朝、フクスドルが、井戸から赤い水をくみ上げる。それを調べたコム・モジャムは、赤い水の入った桶をひっくり返す。
コルサビウ「ここだけでなく、すべての井戸が、血の水に」
コム「祭事以来、あちこちで異変が起きている」
テ・ジョヨン「何より民心が問題です。滅亡の噂に怯えています」
コム「民だけでなく、臣下も動揺している。また唐との交渉話が出た」
「交渉は降伏を意味します」
「そのとおり。奴らの忠誠心が長く持たぬとは思ったが…」




ポジャン王の会議。
「(テーブルを叩いて)とんでもない、この期に及んで、唐と交渉だと?」
ブ・ギウォン「天の啓示をご覧のはず。80の老人が900年来の国を滅ぼすと言った。900年来の高句麗を、80歳の唐のソウ管が滅ぼすという意味です」
ポジャン王「神託の意味はそれだったのか?」
「民の間では噂となっています」
ナムゴン「妖説はやめるのだ」
ケジン「陛下、すべての井戸が血の水と化しました。食料は底をつき、新羅軍は平壌を包囲しました。陛下、もはや高句麗を救う道は、唐と交渉することだけです」
コ・サゲ「何と愚かな。使者の首を飛ぶのを見てもまだ懲りぬか」
ブ「そうでなければ、軍馬と武器だけで敵を防げますか? なぜ答えられぬ? ここにいる武将方は敵を全滅できるのか? 武将に出来ぬゆえ、我らがやるのです。それをお忘れなく」
王「大臣らの話はわかる。だが、敵はもう対話はせぬとはっきり表明した。今度は誰が命がけの使者となる?」
ブ「今の高句麗で、敵陣に送れる者はただ一人です」
王「それは誰だ?」
「このブ・ギウォンです」
一同びっくり。
「国の危機も我らに大きな責任があります。首が斬られようとも、私がすべての責任を取ります」
ケジン「ブ大臣よ」
サブク「ヨクサル様」
「陛下、どうぞ許可を」

ブ・ギウォンの私的な集まり。
ケジン「そなたが使者となる必要はないのに」
サブク「今、敵陣に行くのは危険です。他の者を使者に」
「昨夜、徹夜で考えた末の結論だ」
「ですが、ヨクサル様」
「私以外に誰が、国を救えるのだ?」
「そなたに何かあったら、それこそ一大事だ」
「死ぬだけです」
「これ、ブ大臣」
「交渉内容も考えました。成功すれば国は救われ、失敗すれば、この首が飛ぶでしょう」「やれやれ…」


ブ大臣一行。

コム・モジャム「大莫離支がお見送りを命じられました」
ブ「結局、そなたらの忠誠心も国を救えなかった。交渉に失敗したら、私は殺されるだろう。命を惜しまず捨てられる勇気、これぞ忠誠心だ。どうだ、ついてくる自信は? どうした、死が恐ろしいか。口先だけの者にまともな奴はいまい。二度と勇敢な振りなどするな。亡き大莫離支もヤン将軍も、虚張声勢(実利もなく声ばかり大きいこと)だったから、こうなった」

ブ大臣一行は、すすもうとするが、その行く手をテ・ジョヨンが遮る。

テ・ジョヨン「私も行きます。どう考えても国運をかけた交渉を、大臣だけには任せられません。国を売り飛ばすか、敵に平和を乞うかを、この目ではっきり見届けなければ、」
ケジン「何という…無礼者め」
ブ「よかろう、ついて来い。テ・ジョヨンが一緒なら、敵陣へ行くのも寂しくないだろう」
ブ・ギウォン一行は歩き去る。
(録画ミスで若干飛び)
シン・ホン「(紙を渡し)詳細を書いた。本陣へ知らせろ」
ソル・ゲトウ「分かった(杯に残った酒を飲む)」
シン・ホン「(録画ミスで分からず)」
モゲ「承知した」
ソルは鷹に手紙をつけて飛ばす。



ソリンギ「本当か?」
「さようです。報告によると、平壌の民心は揺れ、臣下間にも不和が生じました」
「そうか。平壌城の崩れる兆しがやっと見え始めた」
契丹部族長「イジョク大ソウカンもこの心理戦に関心をお持ちです」
「(入ってきて)将軍、将軍、高句麗からの使者です」
「何…奴らがまた使者を?」
ポンペ「それが、今度はブ・ギウォンです」
ソリンギ「(驚いて)ブ・ギウォンが直接来ただと?」

テ・ジョヨンたちを、チョリンとイ・ヘゴが迎えに出る。
テ・ジョヨンとチョリンの目が合い、微妙な雰囲気。
イ・ヘゴは、苦々しい顔。
イ・ヘゴ「お久しぶりです」
ブ・ギウォン「ソリンギ将軍に会わせてくれ。私が来た理由はよく分かっておろう(テ・ジョヨンの方をチラ見して合図)」
イ・ヘゴ「案内せよ」
ブ・ギウォンに、テ・ジョヨン達が続く。
チョリンの前を振り向かずに歩いていくテ・ジョヨン。
チョリンは、切ない顔。


イジョクとブ・ギウォンが長いテーブルの両端に座っている。ブ・ギウォンの後ろにテ・ジョヨン。
イジョク「降伏しに来たなら、厚くもてなすが、前のように和睦を口にするならここあら生きて帰れぬぞ」
ソリンギが、ブ・ギウォンをのぞき込むように笑う。
ブ・ギウォン「唐の望むものは?」
イジョク「知っているはず。城門を開け、無条件に降伏する事だ」
「私の条件を呑むなら降伏しましょう」
テ・ジョヨン「ヨクサル様」
ブ「うるさい」
ソリンギ「ブ大臣、早くどうぞ。何を聞き入れれば、降伏するのです?」
「条件は三つです。まずは、我が陛下を認め、高句麗の王室を保つこと。次に平壌城の器物や書物、皇室内の宝物などすべてに許可なく手を触れないこと。最後は我が民を傷つけないことだ」
イジョク「今度は唐の条件を言おう。今後高句麗は、独自の年号を使ってはならん。天下の皇帝は唐の皇室だけにおわす。高句麗は大王の称号を使えぬ。皇帝の恩恵を受ける諸侯となるのだ。そして、国王以下すべての臣下が、亡き先帝陛下の墓に参詣し、謝罪するのだ」
テ・ジョヨン「馬鹿を言うな。祖国を蹂躙した敵の王に謝罪だと?」
ソリンギ「うるさいぞ」
テ・ジョヨン「屈辱的な降伏は駄目です。守ってきた千年の誇りを勝手に汚してはなりません」
ソリンギ「奴をつまみ出せ」
数人の兵士とイ・ヘゴがテ・ジョヨンを捕まえて、連れ出そうとする。
テ・ジョヨン「放せ。ヨクサル様、ヨクサル様、話を聞きますな。屈辱的な降伏は駄目です、決してなりません」
ソリンギ「早く連れて行け」
「なりません」
「行くぞ」
「決して、なりません(連れて行かれる)」
イジョク「王室を保ち、民を救うことこそ、臣下の第一の努めだ」
イジョク「さあ、答えよ。条件を呑んで降伏するか?」


テ・ジョヨンが無理矢理連れて行かれる。
その前に現れたは、ヨン・ナムセン。テ・ジョヨンびっくり。
イ・ヘゴ「行くぞ」
連れて行かれるテ・ジョヨンを見送るヨン・ナムセン。


イジョク「答えるがよい」
ソリンギ「ブ大臣の一言に、高句麗の運命がかかっている」
ブ・ギウォン「降伏しましょう。帰って、陛下と臣下の同意を得て、降伏の意をすぐに伝えます」
イジョク「三日だ。三日の猶予を与える。三日後、平壌城の東西南北の城楼に唐の皇室の旗をかけ、王と臣下全員がこの蛇水に来て、降伏の儀を行え」
「そうしましょう、王室を保ち、民を傷つけないという約束を必ず守られよ」
イジョク「ははははは、もちろんだ」
ソリンギ「ポンペや、大臣を陣営外までお見送りせよ」
「はい、将軍」
ソリンギ「待て、さっきの奴は?」
ポンペ「連れてきます」
ブ「待たれよ、奴は厄介者です。処分を任せます」
「はははは、そうしましょう」
ブ・ギウォン、席を立つ。

外で盗み聞きしていたヨン・ナムセンのそばを、ブ・ギウォンが通る。
ナムセン、ため息。


高句麗武将達。
コム・モジャム「うまく行かなかったようです。余りに遅すぎる」
声「将軍」
フクスドルが現れる。
フクスドル「将軍、将軍、使者団が戻りました」
コ・サグ「皆無事か?」
「何かの間違いなのか、テ・ジョヨンがいません」
コム「何、テ副将がいない?」
「どうなったんだ」

城門を入ろうとするブ・ギウォンに、武将達が刀を抜く。
ブ「貴様、早くどかぬか」
コルサビウ「テ副将はなぜ見えぬのです?」
「答える筋合いはない。早くどけ」
「お答え下さい」
「貴様」

コ・サゲ、コム・モジャム達が来る。
ブ・ギウォン「皇命を全うして戻ったのに、無礼な」
コ・サゲ「テ・ジョヨンは?」
「知らぬ」
コム「ヨクサル様のお供だったのですぞ」
「騒いで取り押さえられた」
コム。びっくり。
「場所もわきまえず、騒ぎおって、チッチッチ(舌打ち)、行くぞ」
ブ・ギウォン一行は馬を進めて去っていく。
刀を抜くコルサビウを抑えて止めるフクスドル。

唐の牢獄。
チョリンとイ・ヘゴが、牢獄のテ・ジョヨンを訪ねる。
テ・ジョヨン「使者は、どうなった?」
イ・ヘゴ「もう帰った」
テ・ジョヨン「では、とうとう…降伏を?」
「自分の身を心配しろ。すぐに処刑すべきだが、高句麗の滅亡を見せるために生かす」
チョリンはじっとテ・ジョヨンをみている。テ・ジョヨンは、やはりという表情で、思案顔。
ヨン・ナムセンが歩いている。会議をしているところに、耳をつけて立ち聞き。
契丹部族長の声「一体、何の利があります? 王室も民も殺めぬとは。何が降伏だ。苦労して攻めた甲斐がない」
ソン・マニョン「戦利品や奴隷を得るのは、勝者の権利。我が契丹としては納得できません」
ソリンギ「まあ、可汗よ。何と純真な…あの言葉を真に受けたので?」
「では、使者との約束は…」
「約束も何もない。高句麗のせいで苦労した事を思うと、寝ていても歯ぎしりする」
「ですが、確かに、信義をかけて約束なさった」
「今は戦時中だ。敵を信じるのは、死を選ぶのと同義だ」
イジョク「見ておれ、城門が開く瞬間、前を塞ぐものは皆殺す。王宮を焼き払い、目につく物はすべて奪い破壊する」
ソリンギ「もちろんです。今まで高句麗のせいでどんなに苦労したか。この機に思う存分報わせてもらわねば」
契丹部族長唖然。
ヨン・ナムセンもびっくり。


牢獄のテ・ジョヨン。

一人部屋にいるテ・ジュンサン将軍。
声「兄上、トルバルです」
「入れ」
「夜更けに何事だ?」
「やはり、軍を集めましょう」
「噂では、平壌の状況は最悪だとか」
「今は駄目だ」
「兄上」
「新城と扶余城一帯が敵の手中だ。安市城と遼東城まで落ちたら、遼東はおしまいだ」
「でも、平壌を見捨てられません」
「将軍」
「もしも、万が一、平壌城が落ちて高句麗が滅んだら、そのときは遼東が国を取り戻す基盤となる。もう少し待とう。天も高句麗をお見捨てになるまい」

唐の皇帝の会議。
皇帝「実に一日千秋の思いだ。高句麗はいつ滅ぶのだ?」
則天武后「陛下、歴史上では、千年にもなります。千年も待ってきたのです。数日ぐらいご辛抱を」
イメン「千年も続いた高句麗が、今にお足元に屈するでしょう」
「朕は、決して高句麗を許せん。父上の血の涙を見たのだ。我らを苦しめた報いがいかに恐ろしいかを、はっきり教えてやる」
ウィスン「当然です。高句麗さえ消えれば、天下は陛下のもの」
「お慶び申し上げます」

考え込むチョリン。決心して立ち上がり、いこうとするチョリンの前に立ちはだかるイ・ヘゴ。
「どこへ行く? テ・ジョヨンの所なら、今すぐにでも奴を殺してやる」
「戦の勝敗は決まった。奴を生かしても何の害もない」
「生かせと言う命令はなかった」
「生かせ、私の命令だ」
「チョリン」
家来が来て、イ・ヘゴに何かを告げ、イ・ヘゴは行く。
チョリンは悩み、どこかへ行く。


ナムセンがテ・ジョヨンの牢獄へ来る。
「早く開けろ。死にたいのか、早く開けろ。早くしろ」
テ・ジョヨンを外に出し、行こうとするナムセン。
声「何をなさる?」
イ・ヘゴ。その後ろにチョリン。
ナムセン「彼を釈放しろ。使者を捕らえてはならん」
イ・ヘゴ「私には、釈放の権限はありません」
ナムセン「私にはその権限がある。私は皇帝に任命された将軍だ。捕虜の一人くらい自由に出来る。後で大ソウカンに報告せよ、行くぞ」
出て行くときに、振り返るテ・ジョヨン。
チョリンの顔。

馬を連れてきて、テ・ジョヨンに渡すナムセン。
「ブ大臣は騙された。奴らは決して約束を守らぬ。城門を開けてはならぬぞ」
テ・ジョヨンは驚いて、ナムセンを見る。
「平壌城のすべてを破壊し尽くすだろう。最後まで戦う事だけが、平壌を守る唯一の方法だ。行け、降伏を防ぐのだ。民を救う方法を探せ」
うなずくテ・ジョヨン。
馬に乗って去っていく。

平壌城のコム将軍達。
テ・ジョヨンのかけ声が聞こえる。
フクスドル「将軍、ご覧下さい。敵なら頭の変な奴だな」
コルサビウ「」テ・ジョヨンだ、間違いありません
フクスドル「生きてたのか」
「早く城門を開けろ」
テ・ジョヨン「将軍、コム師範」
「一帯何が?」
「時間がありません、コ将軍は?」
「大田の朝会に出ておられる。ブ大臣が陛下に降伏を勧めている」
「防がねば。降伏すれば皆死にます」
「どういう事だ?」
「騙されました。ブ大臣も臣下たちも皆唐に騙されています」
一同びっくり。

ブ「陛下、唐との約束はあと一日です。お早く決断を」
「皇室を保ち、民を守れる最後の方法です。決死の抗戦だけでは、決して高句麗を守る事は出来ません」
ナムゴン「だが、奴らは信じられん」
「大莫離支」
「信じられません。しかも李世民の墓で謝罪しろとはあまりの屈辱です」
「皇室と民を守れるなら、どんな事でも耐え抜こう。だが敵の話が嘘なら、朕は騙されて国を潰した世にも愚かな王となるだろう」
「無駄な抗戦で民を死なせては、それこそ大罪です」
「お早くご決断下さい、お察し下さい、陛下」
「大莫離支の考えは?」
無言。
「夜明けまでに勅令を出す、そのつもりで皆下がれ」
「陛下」
「皆下がって、勅令を待つのだ」

臣下達。
ブ「明朝、陛下は勅令で降伏を命じるはず」
「仕方あるまい、高句麗を救う道はそれしかない」
サブク「大したものです。お一人で敵陣へ行き、交渉なさるとは」
「降伏を煽ったと非難する者もいようが、歴史と民の前で私には何も恥じる事はない」
「もちろんです。大莫離支たちも何も言えませんでした」
「行こう、今後のことを論じよう」

にらみ合い。
テ・ジョヨン一行と鉢合わせ。
「いつ来たのだ? 情勢が危ないので、うっかりお前を忘れていた。それより、明朝、各城楼に唐の旗を…」
剣を抜き、ブにつきつけるテ・ジョヨン。
「馬鹿なまねはよせ。気持ちは分かる。屈辱的な降伏は誰でも嫌だろうが、国の事なのだ…」

剣を手でどけて、切っ先を自分からはずすブ・ギウォン。
テ・ジョヨンは、更に刀を振りかざしてブ・ギウォンの喉首に狙いを定める。
「私は、母がどう死んだか、はっきり覚えている。骨を折られ、肉を切られて死んでいった母の悲鳴を。忘れようとした。それに母を殺した者どもをこの場で許す事もできる。だが敵に騙されて、高句麗を滅ぼす者は絶対に許せない。首を出されよ、千人の敵を倒すより、ブ・ギウォンを殺す方が高句麗のために価値ある事だろう。首を出されよ、早く」
ブ・ギウォンに向かって、刀を振り上げるテ・ジョヨン。

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テ・ジョヨン35回目

ソリンギ「皆聞け。夜が明け次第、あの安市城を攻撃するぞ。そして、その先鋒をヨン将軍に任せる」
「断る」
「命令に背く気か?」
「命令される筋合いはない」
「何?」
「これ以上将軍が負け続けるのを座視できん。能力がないなら、指揮権を私に任せられよ」
「何?」
刀を取るソリンギ。
「貴様、指揮権だと? 何…指揮権だあ? ナムセン、おのれ、ナムセンめ。よくも指揮権を渡せなどと…戦で手柄を立てたからと図に乗りやがって。またそんなことを抜かしたら、その頭が首と離れることになるぞ」
「そなたが本当に勇猛な武将なら、部下の命を重んじるだろうが、功名心に浮かれた小者なら、火にいる夏の虫のごとく、安市城を攻撃するだろう」
「何? 夏の虫? 貴様(剣を振りかぶる)」
「やめなさい、いい加減に剣を収めなさい」
「どかれよ、こいつをこの手で殺す」
「我慢して下さい、仲間割れはいけません、将軍、外に兵士たちがいます。こんな姿は見せますな」
「あー、まったく」


シン・ホンとイ・ヘゴが出てくる。
シン・ホン「ここで、安市城攻撃を望むのはbソル将軍だけです。ソル将軍を説得して下さい」
イ・ヘゴ「私は命令を受ける身だ。主の志は変えられない」
「私の主人と契丹の立場は似たようなものです。安市城にてこずれば、我が主は高句麗の統治権を得られません。契丹も同じです。戦で手柄を立てねばヨンジュを得られないでしょう」
「だが、何の名分で将軍に撤退を求める?」
「名分は作ればいいのです」
「方法はあるのか?」
シン・ホンがイ・ヘゴの耳にこそこそ話。


ソリンギ「ナムセンめ、お偉くなりやがって、私の指揮権を狙うとは」
ポンペ「とにかく大変です。大ソウ管も大敗し、明日の総攻撃まで失敗したら…この戦も失敗しそうで恐ろしいです」
「おい、こら、縁起でもないぞ」
イ・ヘゴ「(入ってきて挨拶する)将軍、お話があります」
「話すがよい」
「明朝の安市城攻撃を中断なされば」
「何だと? お前もナムセンの味方か?」
「私は、あの安市城に、我が誇りのすべてをかけた。そなたもこの気持ちが分かるはずだ」
「安市城は容易には落とせません。間違えば、誇りのための戦で、将軍のすべてを失い得ます」
「すべてを失っても仕方ない。私は誇りまでは、捨てられん」
「将軍、名分と実利を共に得られる方法があります。誇りも得られ、功も立てられる方法ですぞ」
「誇りも得られ、功まで立てられる?」
「まずは、最小限の兵力を残し、撤退なさいませ」
ポンペ「何を申すか、奴らを残して、撤退なんて」
「安市城は、後から陥落させても遅くはありません。今、劔山城では、大ソウ管の軍が苦戦を強いられています。我らが敵の背後を討てば、一気に城を陥落できます」
「そう…その通り。まさにそれだ。続けろ」



安市城で、敵陣を見つめるテ・ジョヨンに、フクスドルとコルサビウが近付く。
フクスドル「この野郎、コルサビウ、お前のせいだ。止めなかったら、ナムセンを殺せたのに」
コルサビウ「助かっただけ、幸いと思え。軍律通りなら、とっくに首が飛んだぞ」
「まあ、それは感謝する。一度は死ぬ身だった。粉々になろうとも唐の奴らと戦うぞ」
テ・ジョヨン「(敵陣の方角から振り向いて)何かが変だ」
「何が? 何が変なのだ?」
「数日前から動きがない。兵士たちの位地が同じだ」
「俺が見てくる。フクスドル行くぞ」
「おい、待てよ」


フクスドルとコルサビウが兵を従えて、馬で進み、ある場所で止まる。
コルサビウ「行くぞ」
戻っていく。


安市城会議。
「将軍、間違いありません。チュビル山の敵陣はがら空きです」
テ・ジュンサン「遠目から見える兵士は?」
フクスドル「あいつら案山子を立てて、兵士に偽装させていました」
「何、案山子?」
「高麗城を出る時に、我らが使った方法です」
コ・サグ「では、奴らはどこへ行ったのだ?」
「当然、唐の本軍と合流したはず」
コム・モジャム「ですが、腑に落ちません。ただの撤退なら我らを騙す必要はないはず」「まさか…奴らは…」
「どうした?」
「今、中部戦線では敵と接戦中です。奴らが密かに南下し、奇襲をかけたら…」
「劔山城…チ将軍が危ない」


チ将軍たち。
「イジョクの軍が動く気配はありません」
「腰を抜かしたのでしょう、ここまで応戦するとは予想外のはず」
チ・ミョンチョン「奴らを防げなければ、平壌城が危険だ。このまま一人も南下させてはならん」
オン・サムン「もちろんですとも」
そこへ、火矢が飛んでくる。
次々に倒れる高句麗兵。
「奇襲だ、唐軍が奇襲を始めたぞ」
チ将軍「持ち場を守れ、敵は先鋒隊に過ぎん。落ち着いて応戦せよ」
「将軍、ご覧下さい」
「どうして、南門から火の手が…」
「そんな…、敵が南門へ移動したとは聞いておりません」
「将軍、将軍、南門が突破されました」
「何だと? 南門が突破された? 奴らはどこから来たのだ? ここはお二人に任せる。南門から来た唐軍は私が防ぎに行く。さあ私に続け」
「はい」
逃げ惑う民。
南門付近。
侵入したソリンギ、イ・ヘゴ達の軍と、チ将軍が対峙する。
ポンペ「(剣を構えて)何者だ?」
チ将軍「高句麗の模達であり、都城守備隊の総司令チ・ミョンチョンだ」
ソリンギ「チ・ミョンチョン? お前がチ・ミョンチョンか
チ将軍「問答無用。奴らを殺せ」
ソリンギ「討て」
両方の軍が入り交じって、戦う。
チ将軍に跳び蹴りし、追い詰めて、傷を負わせ、首に刀を突きつけるソリンギ。
チ将軍「貴様ら…この蛮族め」
ソリンギ「先に逝って、高句麗の滅ぶ姿をしかと見るがよい。ポンペよ」
ポンペ「はい(後ろからチ将軍に斬りつける)」
チ将軍「(背中に深手を負って倒れながら)我が高句麗を…、高句麗を…」
ほっとしてため息をつくソリンギ。しかし、急に焦ってぴょんぴょん跳び始める。
ソリンギの足に火が付いていて、足をこすり合わせて、消そうとするソリンギ。


テ将軍が部屋の中にいる。
声「父上、私です」
テ将軍「お入り」
テ・ジョヨンが入って、一礼する。
「出発の準備はできたか?
「はい」
「劔山城が落ちたら、中部戦線は崩壊したも同然。平壌城を死守することが、高句麗を守る唯一の道だ」
「ですが、遼東はがら空きになります」
「私とトルバルが残る。コ将軍の補佐を頼む。そして、自分の任務を果たすのだ」
「肝に銘じます」
一礼をして、テ・ジョヨンは出て行く。

ソリンギの会議。
「まさか、ソル将軍が来るとはな」
「申し訳ありません。敵を騙すには、機密保持が大事だったので…」
「ところで安市城は諦めたのか?」
「何度言えば分かる? この作戦のために涙をのんで撤退したのだ」
「結局、今回も安市城を落とせなかったのだな」
「違う、落とさなかったのだ。劔山城を落とすために…」
「もう、いい加減にせい、とにかく、平壌城への道が開けた。そなたらの功は忘れぬぞ」「私は何もしていません。すべての知略は、イ・ヘゴ副将の頭から出ました」
「イ・ヘゴ?」
イ・ヘゴ「とんでもない」
「この戦で諸君は大いに戦力になった」
イ・ソンチュン(契丹部族長)「高句麗が滅んだ時、我らをお忘れなきよう」
「もちろんだ。決して忘れるものか」
「ありがとうございます」
チョリンも嬉しそう。
「ところで、ヨン将軍はなぜ何も言わぬ?」
ヨン・ナムセン「雑談する心境になれません。平壌城が目前なのですぞ」
ソリンギの忌々しそうな顔。


平壌城の宮殿。
「どういうことだ、劔山城が陥落した? チ将軍が戦死しただと?」
「陛下。我らは皇命を全うできませんでした」
「処刑して下さい。どうか、処刑を」
ポジャン王「中部戦線が崩壊した。今後はどうなる? 誰かが唐を防ぐべきだろう?」
ヨン・ナムゴン「陛下、今は城外に出兵できません」
ケジン「さようです。漢城以南にいる新羅軍がいつ襲うか分かりません」
チャン・サネ「しかも、軍需品や食糧も不足しています。おいそれと出兵できません」
「何ともどかしい。唐が来るのに座視するしかないのか?」
サブク「(入ってくる)陛下、陛下、申し上げます。今、遼東から援軍が着きました」
「援軍? 統領が援軍を送ったのか?」
「はい、陛下」
ブ・ギウォンの変な顔。

コ将軍を先頭にして、テ・ジョヨン、フクスドルらが平壌城の中を歩いて宮殿に入る。

コ将軍「陛下、コ・サグ以下諸将がご挨拶申し上げます」
「ご挨拶申し上げます」
ポジャン王「よく来た。今、平壌城は危機に瀕しておる」
「それを聞いて、飛んで参りました」
「ありがたい。皆の忠誠心に感謝するぞ」
「恐れ多うございます」
「じきに唐の大軍が来るだろう。国運をかけた大戦が始まるのだ。他に方法はない。何としてでもこの平壌城を守り抜くのだ。よいな?」
「はい、陛下」
テ・ジョヨンの顔と、ブ・ギウォンの顔。

ナムゴン「知っての通り、今の平壌城は最悪の状況だ。軍需品も兵士も何一つ満足なものはない」
「遼東の状況も同じです。新城や扶余城など、遼東の半分は唐の手中に落ちました」
「新羅も問題です。唐と連合して百済を攻めた時は、5万の軍を送りました。ですが、この戦には何と20万の大軍を送りました」
「一つ幸いなのは、平壌の軍と民の意思が固いという事です」
「それだけでも大したものだ。結局は民と共に守らねばならん。今日から死力を尽くして万全に期すのだ」
「はい、大莫離支」
「ジョヨン、そなたは残れ。さるお方がお呼びだ」

ポジャン王とスギョン姫、ナムゴン。
テ・ジョヨンが着席する。
ポジャン王「急ぎ調べたい事があってな。烏骨城の一件だ」
「お前は、最後まで大将軍を守った。暗殺についてお前の考えを聞きたい」
「誰が犯人だと思う? お前の思う犯人は誰だ?」
「私には分かりません」
「分からぬ?」
「推測だけでは申し上げられません」
「お前の考えを聞いておるのだ」
「敢えて申し上げるなら、犯人は唐の奴らです。倒した者が誰であれ、ヤン将軍が憎んだのは、この国を脅かす唐だったからです」
「そなたが言わずとも、陛下にも心当たりがある」
「申し訳ありませんが、今は心を合わせる事をお考え下さい。心を合わせ、国を守れるなら、炎までも抱き込むべきです」
「そのとおりだ。今こそ、文武臣下と民が力を合わせる時だ」
「はい、陛下」
「久しぶりに、心強く思った。その忠心を変えるでないぞ」
「皇恩の極みにございます」
声「陛下、コム将軍です」
「通せ」
コム将軍「陛下、急報です。イジョクの大軍が来ました」


蛇水。
唐の陣営。
イジョク「我らがここに着く前に、遼東城城主のコ・サグの援軍が着いた」
「一足遅れました。先に来て、平壌城を孤立させるべきが…」
「しかし、心配は無用でしょう」
「なぜだ?」
「報告によると、軍需品はなく、兵だけが着きました」
「そうだろう、遼東も苦しい状況だ」
「平壌の最大の問題は、干ばつで食糧が不足している事です。いくら援軍が多くても、食糧不足ならむしろ邪魔です」
ソリンギ「それは、可汗の言うとおりだ。待つ事はありません。今すぐ攻撃命令を。大ソウ管」
ナムセン「いいや、いくら優勢でも平壌城を甘く見てはならん。敵勢を詳しく調べた後で、攻撃しても遅くはない」
イジョク「ヨン将軍の言うとおりだ」
ソリンギ、咳払い。
「軍馬を休ませ、戦列を整えろ。敵の状況を把握したら、総攻撃に移る」
「はい、大ソウ管」
ソリンギとナムセンにらみ合う。


チョリンが剣の手入れをしているところに、イ・ヘゴ。
「チョリン、無理しすぎじゃないのか?」
「今度が最後だから。必ず高句麗を滅ぼして、ヨンジュを得る」
「もうすぐだ。我らの流した血と汗が実を結ぶだろう」
「兄上、契丹がヨンジュを得たら、私は部族を去るだろう」
「どういう事だ? 馬鹿を言うな。お前は部族を導く可汗になる身だ」
「部族のためなら、私より兄上が適役だ」
「チョリン」


鎧姿のコ・サグ将軍達。
「城郭の規模や堅固さでは、安市城や遼東城に引けを取らん」
テ・ジョヨン「この平壌城は、一度も陥落していない難攻不落の城です。皇宮のあるところだ。このくらいでないと」
コム将軍「(馬に乗って近付く)将軍、将軍、将軍、すぐ皇宮へ行って下さい」
「何事だ?」
「敵陣に使者を送るそうです」
「使者だと?」
「会談を行うつもりです」
「何と、愚かな。まだ奴らを知らんのか?」



ポジャン王の会議。
王「前にも遼東に使者を送った事があった」
ブ・ギウォン「彼らの行方は誰も知りません。きっと敵陣に着けなかったか、事情があったはず」
ナムゴン「一体、奴らと何の会談を?」
「ご存じでしょう。国を救う平和会談です」
コ・サグ「話にならん、奴らは高句麗を滅ぼすために、来たのだ」
「陛下、今の高句麗の兵力では、唐の大軍を防ぎきれません」
「では、使者を送れば、敵は退くのか?」
「少なくとも無謀な戦から民を救えるでしょう」
王「誰が行くのだ?」
ソンギョム「陛下、西部辱薩のソンギョムが参ります」
「ソンギョムが?」
「陛下、戦時中に敵陣へ行くとは、大した勇気です。我らの忠誠心をお察し下さい」
「できるのか?」
「国を救う事です。身命を尽くします」



ブ・ギウォン一行の前に立ちふさがるテ・ジョヨン達。
ブ・ギウォン「皇命を遂行中だ。城門を開けろ。聞こえないのか、早く城門を開けろ」
テ・ジョヨン「(剣をおろして)城門を開けろ。心を開くなら、まず相手をよく知るべきです。大臣は相手を間違えました。友になるには、奴らによる被害が多きすぎます」
「この世は、力と勇気だけで回るのではない。お前のような青二才が世の理を知る由もない。よく見ておれ。お前たちは、敵と戦う事はできても、敵の心を掴む事はできん。それが年齢と経験の差だ。しかと見て学ぶがよい。行きましょう」


唐の陣営。
イジョク「ブ大臣と約束したのか?」
ソリンギ「約束ですと? 何の約束です?」
「この手紙に両国の和睦に関する条項がある。そなたらが密約を交わしたとあるが」
「それは初耳です」
「何をおっしゃる。そちらの要求にすべて従ったのだ。唐と高句麗の平和のためにな」
「帰って伝えよ。両国間の戦をなくすには、どちらかが滅ぶべきだ。高句麗を滅ぼそうとするのも、天の下で平和をなすためだ」
ソリンギ「大ソウ管、伝える必要もありません。あの者の首を斬って、平壌城へ投げ入れて来い。それで十分答えになるだろう」
ソンギョム「貴様ら、禽獣でも守るべき道理がある、天を恐れぬか」
「うるさい、者どもさっさと首を斬れ」
「はい、将軍」
兵士らが、ソンギョムを捕まえる。
「放せ、死んでも貴様らを許さんぞ。邪悪な蛮族どもめ」
「何をしておる。早くせい」
「貴様ら、放せ、放せ」
ナムセンの顔。
「皆、よく聞け」
「はい、将軍」
「あの者の首が宣戦布告となるだろう。平壌城を総攻撃する。戦闘準備を」
「はい、大ソウ管」
にやりとするソリンギ。


コ・サグ将軍達が平壌城から眺めている。
城壁に、騎馬兵が近付く。
コム将軍「何者だ?」
イ・ヘゴの顔。
「何者かと聞いておる」
イ・ヘゴ「我が唐から、高句麗への贈り物だ」
黒い包みを補折り投げるモゲ。
「こちらに来た高句麗の使者の首だ。和睦に対する我が唐の答えはこれだ、持って行き高句麗王にはっきり伝えよ、この者の運命のように、高句麗の国運もあとわずかだと」
高句麗陣営、びっくり。
イ・ヘゴ「行くぞ」
フクスドル「あの野郎、待たんかい」
テ・ジョヨン「首を持ってこい」


テ・ジョヨンは、首を持ってポジャン王の御前会議へ。
「陛下、ソンギョム大臣の首です」
「一体…どういうことだ。何か話せ。ブ大臣。一度ならずも、なぜソンギョムまで死なせた?」
ブ「陛下」
「これが、ブ大臣の言う外交術か? これが和睦なのか? 何とか言うがよい、ブ大臣」「陛下、すべては、愚かな私のせいです。処刑して下さい」
一同「どうか、処刑を、陛下」
「実に悔しくも恥ずかしい。あの蛮族どもが朕をどう思い、我が高句麗をあざ笑っただろうか」
「陛下、今死んでも文句はございません。しかし、奸悪な唐軍と戦う機会を下さい。国のためなら、何でもいたします」
ケジン「さようです。今から、全五部家の臣下は、家の穀物倉庫を開放します」
ブ「家財だけでなく、武器を持てる家来も皆戦線へ送ります。お収めくださいませ」
一同「お収めくださいませ」
声「(遠くから駆けつけながら)陛下、陛下、唐軍が押し寄せて来ます。総攻撃が始まりました、陛下」
王、テ・ジョヨンびっくり。
ケジン「何…総攻撃…」

唐の大軍の中に、イヘゴ、チョリン、モゲ、ソリンギ、契丹部族長が先頭に馬に乗っている。

ナムゴンも加わって、高句麗武将全員が、鎧兜姿で、城から見下ろしている。

コ・サグ「一見しても数十万の大軍です」
「唐の全軍が総動員されました」
ナムゴン「平壌城を一気に攻めるつもりだ。城門を突破されてはならん、持ち場を守り、敵を一人も近づけるでないぞ。よいな?」
一同「はい、大莫離支」
フクスドル「あそこをご覧下さい」


数人の騎馬兵が前に出る。
「平壌の武将は聞け。今までお前達は、恐れ多くも天孫を自称し、傲岸不遜な行いをしてきた。これに対し、我が皇帝陛下は、高句麗を滅ぼし、天下の秩序を正せと命じられた。城門を開けて降伏する者は生かすが、抵抗する者は死を免れんぞ」


ナムゴン「唐の蛮族どもはよく聞け。高句麗は天孫として、そなたらに慈悲を施した。だが、国を蹂躙し、使者を殺した極悪非道な唐に、これ以上の慈悲は無用だ。者ども、奴らを殺せ」
テ・ジョヨン達が火矢を放つ。
唐兵が火矢を受けて倒れる。
「退却だ、皆、退け」
ソリンギ「将軍」
イジョク「偉大なる唐の武将よ、総攻撃せよ」
ソリンギ「総攻撃だ」
イ・ヘゴ「イヤー」
イ・ヘゴやチョリンも剣を抜く。

コ・サゲ「持ち場を死守しろ」
「はい、将軍」

太鼓が鳴らされ、城壁から矢が放たれる。
唐兵がばたばたと倒れる。
ナムゴン「高句麗の先史よ、ひるまず戦え」
唐軍は大きな機械で、火の玉を投げ入れる。
はしごをかけて、城壁をよじ登る唐兵。
火矢が飛び交う。
ソン・マニョン「皆、攻めるのだ」
唐の猛攻撃に防戦する高句麗。
ナムゴン「城門を死守せよ。決して破られるな」
「攻撃せよ、どんどん登れ」
チョリン「攻撃せよ」
猛烈な戦闘シーンの中、城壁のテ・ジョヨンを見つけて、立ちすくむチョリン。
テ・ジョヨンもチョリンに気づく。
目が合う二人。
しかし、再び戦い始めるテ・ジョヨン。
それをみて、チョリンも号令をかける。
チョリン「平壌城を攻め落とせ」
イ・ヘゴが、次々に高句麗兵をなぎ倒す。
ソリンギ「衝車は何をしている。城門を破れ」
城門に、大きな衝車をぶつけて、攻撃する唐軍。
契丹部族長「攻撃せよ」
コ・サゲ「蛮族どもを皆殺せ」
衝車に、城壁から油をまいて、火矢を放つフクスドル。
火だるまになって、落ちる唐兵。
城壁にたてかけられたはしごを押し倒す高句麗兵。
モゲ「契丹戦士の闘志を示せ」
ソリンギ「おのれ、者ども、城壁を登れ(はしごを登り始める)」
ポンペ「攻撃せよ」
城壁にたてかけたはしごの一番上で、火の付いた刀で戦っているソリンギ。
それを見たテ・ジョヨンが矢を射る。
矢に気付き、防いだ手に矢を受け、下に落ちるソリンギ。
ポンペが駆け寄る。
「将軍」
「くそっ」
「大丈夫ですか?」
「何のこれしき…(矢を抜き、捨てる)あー、何をしておる、登るのだ、攻撃せよ」
イジョク、驚いている。
「(イジョクに駆け寄る)将軍、兵の損失が甚大です。退却命令を」
「奴らめ…」
「時間がありません、全滅しますぞ、将軍」
「おのれ、高句麗め…」


林の中をかける高句麗の旗を持つ騎馬兵達。
テ・ジュンサン将軍がうろうろしている。
声のみ「兄上」
「平壌城はどうなった?」
「大勝です。連日の戦で、唐は連敗しています」
「兵士だけでなく、民や臣下たちまで共に戦っています」
「信じられん、高句麗が昔の強かった頃の姿に戻った」


唐・長安城。
「何とか言ってみよ。高句麗は枯れ木も同然だ。なのになぜ平壌城を落とせないのだ?」則天武后「陛下、お体に障ります」
李治(唐の皇帝)「話にならんではないか。軍も食料も、何一つ劣る物はないのに、何が問題なのだ?」
イメン「言いにくいのですが、高句麗の臣下全員が、全財産を軍需品として出したのです」
ウィスン「のみならず、兵も馬も一丸となって、戦場に出ています」
「うーむ、何としぶとい奴らだ。一体どこから、そんな力が?」
則天武后「陛下、高句麗は起死回生を繰り返してきました。平壌攻撃に手間取っては、予期せぬ状況に陥る恐れがあります」
「そうだ、高句麗には油断してはならん」
「息の根を止める方法があります」
「早く申せ、皇后」
「新羅を使うのです」
「新羅、新羅を?」
「新羅は、同盟国の役目を果たしていません。高句麗南部の攻撃も振りだけでした。それに大角キム・ユシンは健康を理由に帰国しました。高句麗攻撃に参戦するよう圧力をかけるのです」
「良い案だ、どうして我らだけが血を流せよう」
「さようです。すぐに新羅に使者を。新羅が加わるなら、平壌城以上の強固な城でも崩れるでしょう」
「新羅、新羅か…」



唐の陣営。
「すべてソル将軍のせいだ」
「何? 私のせいだと?」
「そなたが使者を殺したせいで、敵の士気が上がった」
「こら、たかが使者一人で」
イジョク「ソル将軍の言うとおりだ。その事で、平壌城の臣下が団結してしまった」
「皆で殺そうと同意しておいて…言ったではないか、使者を殺して、敵の士気を挫こうと」
「私は言ってない」
「何を言う、この耳ではっきり聞いたぞ」
ポンペ「申し訳ありません、私が言いました」
「何…ポンペ、お前、ポンペ、貴様…私の大失敗だ。私のせいだから、何とか突破口を開きましょう」
イジョク「ところで、ヨン将軍は部屋に籠もりきりか?」
部族長「平壌城攻撃に乗り気でないようです」
ソリンギ「将軍、いつまでヨン将軍を庇うのです?」
「この戦の一等功臣だ、放っておけ」


ヨン・ナムセンの部屋。
シン・ホン「だんな様への視線が思わしくありません」
ナムセン、何杯も酒を飲んでいる。
シン・ホン「あとは、平壌城だけです。もうすぐ望む物が手に入ります」
ナムセン「(フンという顔)ここに来てから、毎夜のように父上が現れる。いっそお叱りなら、耐えられる。しかし、父上は私にすがって、泣かれるのだ。父上が涙なさるのだ。死の前でも動じなかった父上が…私にすがって、子供のように大声で泣くのだ(酒をあおる)放って置いてくれ。いっそ平壌が早く落ちて、この身も朽ちてしまいたい(ため息をつき、酒をあおる)」


平壌城。
騎馬兵が走る。
戦いの跡が残る戦場。
テ・ジョヨンが、唐の旗を蹴落とす。戦いの終わった戦場を歩く。
コ・サグ達。
テ・ジョヨンの声「将軍(テ・ジョヨン達がかけつける)今の伝令は何です?」
コム「漢城からの急報だ。新羅が動いた。20万の大軍が漢城とその周辺を攻め始めた。平壌に着くのも時間の問題だ」
唖然とするテ・ジョヨン。

西暦668年新羅の文武王は、20万の大軍で高句麗を攻撃し始めた。新羅は高句麗の副首都漢城を落とし、破竹の勢いで、黄海道一帯を攻めた。そして、ついに新羅は、平壌城へ至り、唐の大軍と合流した。

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渤海国という本が面白かったです

テ・ジョヨンというドラマを見て、渤海国に興味を持ちました。

本屋さんで、偶然、渤海国という本を見つけ、買って読みました。

文庫本なので、小さくて、安かったので、バッグの中に入れて、暇なとき読めました。

著者の上田雄氏は、渤海研究の専門家だそうだ。
冒頭の学術文庫版まえがきに、渤海史をめぐる政治情勢の変化ということについて、書かれている。
1992年に前著「渤海国の謎」を書いたときは、それほど顕著ではなかったけれども、十年あまりすぎた時点で、
「渤海国は、マッカツ人の国か、朝鮮族の国か」という論争が、火花を散らすほど激しくなっていると。

中国と朝鮮の間で論争があり、また日本海の表記についても韓国と日本の間で論争があるとか、いろいろの点について断り書きがある。

渤海という国が成立した時点で、周りを敵国に囲まれていたため、日本と仲良くしようということで、始まった渤海からの使節だったらしいが、最初の使節は、秋田県で、原住民(おそらくアイヌだと思われるが)に、攻撃されて、生き残りが、京都に上ったそうだ。
その後も、秋から冬にかけて大陸から日本へ向けて吹く季節風に乗り、日本に漂着する渤海使の話や、渤海国の事情などが、非常に面白かった。
平和な国で、ほとんど戦争がなかったため、歴史が残っていないらしい。

契丹が、滅ぼしたときに、破壊しつくしたため、遺物もなかったらしい。

そのため、謎の国だったそうだが、渤海使と日本でのやり取りが、詳しく記録に残っているという。

渤海使は、最初、軍事同盟を目的として、送られてきたが、平和が続くと、貿易というか、物々交換が目的になったそうだ。

日本の平安貴族は、渤海からきた毛皮を着るのが流行していたという。

なんか、おかしい。

平安朝の十二単を着ている貴族達が、毛皮を着て、自慢していたなんて、笑っちゃう。

日本中のいろいろな場所に、漂着して、やっとたどり着き、ドンちゃん騒ぎや、漢詩を送りあって、楽しんだそうだ。
菅原道真や、その庶子などが、日本側の接待役で、すばらしい漢詩を残している。

渤海側の漢詩も残っている。

そして、帰るときは、船を作ってもらい、お土産をいっぱいもらって、護衛や船を操る人を乗せて、帰っていったそうだ。

そして、日本側は経費がかかるので、10年に一回にすると宣告したのに、何とか理由をつけて、頻繁に日本に来たがったそうだ。

すごく親しみを感じる。

しかし、今は、忘れられた国になってしまった。

渤海のあった場所は、広大だったのに、今は、ほとんど記録が残っていないそうだ。

著者はそのわけを、二つあげている。
一つ目は、戦争とか征服というようなドラマチックなことに縁がない平和な文化国家だったから。
二つ目は、空白地帯だったから、
渤海国が滅びた後、その地域には女真人が住み続けたものの、国家らしいものは建設されることがなく、彼らの子孫の中から英傑が出て、民族を統率した場合も(金や清がそうであるのだが)、渤海国の跡地に国を作ろうとせず、いずれも中原を目指してなんかし、中国の王朝国家を継承することに件名となり、自らの出身地は、変居欧の地として顧みなかった。ついにその跡地には、1000年以上にわたって、というよりは、現在に至るまで、国家らしい国家が形成されたことがない。

現在、渤海国のあった場所は、中国東北部、北朝鮮、ロシア極東地域・沿海州と3つの国に分断されているそうだ。

しかし、200年間にわたって、日本に文化使節を送り続けていた。

詳しくは、「渤海使の研究」という分厚い本があるそうだが、この渤海国という文庫本には、読んで面白い内容が、コンパクトに書かれている。

唐と行き来する航路は、南に流されると、とんでもない場所へ行ってしまって、ベトナムとかまで流されてしまうこともある。
それに比べて、渤海経由は比較的安全な航路だったらしい。

古代の船はどんな船だったか、わからないそうだが、古代人の国際交流の様子がわかってとても面白い。


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テ・ジョヨン34回目

ナムセンとシン・ホンが外に出てくる。
「思ったとおりだ。ヤン将軍の暗殺犯はブ大臣だ。今も唐の和睦を信じてるだろう。一国の大臣が唐の姦計に弄されるとは、何と情けない事か」
「あとはだんな様だけです。和睦を結ぼうとする大臣たちの望みは破れ、だんな様だけが古びた王朝を打破し、新たな歴史を作れるのです。今は裏切り者とされる事を恐れますな。唐の二重性をはっきり見たはず。高句麗は長続きしません。彼らから国を取り戻すには、だんな様も真意を隠すのです。結局は最後に残る者が勝者なのです」


数人の騎馬兵が高句麗の旗を持って川沿いを走る。

王の前の会議。
サブク「(入ってくる)陛下、陛下、遼東からの急報です」
王「急報だと?」
「ヨン州の唐の本軍が遼東へ向かいました」
ナムゴン、ブ、王びっくり。
王「どういうことだ? 唐が侵略したのか?」
「さようです」
「どういう事だ、ブ大臣?」
ブ「有り得ぬ事です。今頃、使者が唐に和睦の意思を伝えたはず」
ヨン・ナムゴン「間違いなく遼東から、そう伝えられたのか?」
サブク「はい、大莫離支」
「陛下、遼東は戦のことしか頭にありません。きっと誤報でしょう」
チ・ミョンチョン「今まで、こんな誤報はありませんでした」
「では、使者が失敗したと言うのか?」
「やめんか、すぐに遼東へ伝令を送れ。正確な情報を調べよ」
「承知しました」


安市城に高句麗の旗を持った騎馬兵数人が入る。


テ・ジュンサン将軍の会議。
「(入ってくる)将軍、将軍」
テ・ジュンサン「唐軍はどうなった?」
「敵は今、新城へ向かっています」
「安市城でも遼東城でもなく新城へか?」
「さようです」
「憂慮していた事が起きた」
「憂慮していた事? 新城は遼東でも屈指の要塞です」
「だが、今は、穏健派と強硬派に分かれ、大いに揉めているのだ」
「では、敵が内紛を利用するとでも?」
「唐の奴らは我らの弱点を隅々まで知っておる。奴らの先鋒がナムセンだからだ(一同びっくり)一時であれ、大莫離支だった者だ。遼東の防御線の状況や、各城の規模や軍馬状況などを、掌を見るように知っている」
フクスドル「野郎…」
テ・ジョヨン「新城が陥落されたら、周辺の城も危険です。黙って見ていられません」
「軍を集められる状況ではない。今としては、新城が持ちこたえてくれる事を願うしか…」


攻撃の映像。
「攻撃せよ」
西暦六六七年九月、唐の主力軍は遼東を正面攻撃したs。そしてついに内部分裂を利用して、遼東の要の一つ新城占領に成功した。新城の陥落後、周辺の十六の城も相次いで陥落した。遼東の西の防御線が崩れたのであった。そして、翌年の西暦六六八年二月、唐の大ソウ管イジョクは、ソリンギを先鋒とし、高句麗の北方要衝地、扶余城を攻撃させた。高句麗西部の兵站基地だった扶余城が陥落すると、周辺の四十余りの城は唐に一斉に降伏した。難攻不落だった遼東が崩れると、高句麗は急激に押され始めた。そして、その立役者は高句麗を熟知していたヨン・ナムセンだった。



ポジャン王「ヨン・ナムセンだと? 遼東を陥落させたのが、ナムセンか?」
「はい、裏切り者のヨン・ナムセンです」
「そんな…降伏の話を聞いて、まさかと思ったが…ブ大臣はどこだ?」
ケジン「それが具合が悪いらしく…」
「和睦で戦を避けると豪語したのだ。この場を避けたとて何になる?」
「避けたのでは…」
「聞きたくない。状況が急変しているのだ。文武臣下全員で敵を防ぐ対策を立てよ」

ブ・ギウォンが部屋の中をうろうろ歩いている。
ヤン将軍の声「そなたこそ現実を見据えるが良い」
(回想)
ヤン将軍「高句麗の真の平和は誰にも頼らず、高句麗の民が一つになった時にだけ得られる」
「それは将軍の考えです。外交でも十分に平和は守れます」
「高句麗の平和など唐の眼中にはない。彼らの望みは高句麗の滅亡だけだ。この和睦も高句麗を滅ぼす手段だと分からぬか」
(回想終わり)

ブ・ギウォンは目をつぶってため息をつく。
「ヨクサル様、シン・ソンです」
「入れ。どうなった? ヨンジュへ行った使者はまだか? 弟がヨンジュにいるのだろう? 一体どういうことか詳細に話せ」
シン・ソン「それが私にも分かりません」
「分からぬだと? ヤン将軍暗殺を仕向けたのはそなたの弟だ」
「遙か遠くで消息を絶った者です。今から態度を変えては自らの非を認める事になります。それも国を滅亡の危機に陥れたのです。なすべき事は最後まで唐との和睦を成就させる事」
「この期に及んでまだ和睦の主張を?」
「遼東が崩れました。この戦には決して勝てません。ヨクサル様もご存じでしょう? 力で防げねば、その時はヨクサル様の出番です。対話による交渉こそ、国を守る最後の手段となるでしょう」
「そのとおりだ。この身が砕けようとも、奴らを必ず防いでみせる」


安市城。
傷ついた兵士や逃げてきた民。
それを見ているテ・ジョヨン、コルサビウ、フクスドル、コム・モジャム。
フクスドル「すべてはナムセンのせいだ。もっと早く殺しておけば…」
コルサビウ「逃がしたのはお前だぞ」
「(兜を取り頭を叩く)石頭め、空っぽのくせに、兜なんかかぶって…この石頭」
テ・ジョヨンの悲痛な顔。

夜、テ・ジュンサンの部屋。
テ・ジュンサンに頭を下げて座るテ・ジョヨン。
「避難民はどうした?」
「収容所が足りません。しかも城内の食料も不足しています」
「予想通りなら、敵は平壌へ向かうだろう」
「敵の南下を座視することはできません」
「コ将軍が残りの兵を糾合している。兵が集まり次第平壌を救いに行かねばならん」
「では…遼東は…」
「今は遼東どころではない。平壌に危機が訪れたのだ」
「どういう事です?」
「じきに新羅が代々出来名攻撃を始める。今頃攻撃編成を終えたはず。新羅のキム・ユシンが総司令だろう。山また山か。一体、高句麗をいかに守るべきか…」


新城。
ソリンギ「どういう意味だ。安市城はじめ遼東はまだ健在だ。奴らをそのままにするのですか?」
ナムセン「南下しても奴らはもう脅威ではない」
イジョク「ナムセン将軍の言うとおり。しかも新羅軍が我らを待っている。早く平壌に攻め入り、新羅と挟撃するのだ」
「大ソウ管、大ソウ管は先帝の屈辱をお忘れですか? このままでは帰れません。安市城を焼き払い、ヤン・マンチュンの遺体を切り刻むまでは絶対に帰れません」
「今は些細な事より全体が大事だ。感情に振り回されるのは、小者のすることですぞ」
「な…小者だと? ヨン将軍よ、私が小者だと言うのか?」
「やめるのだ」
「大ソウ管、私を小者と言ったのですぞ」
「ソル将軍」
「まったく忌々しい」
「我らとて安市城に恨みはあるが、今は高句麗を滅ぼす絶好の機会だ」
「大ソウ管、戦況は存じています。だが今を逃したら、先帝の恨みをいつ晴らすのです?。重ねて申し上げます。私はこのままでは帰れません」
「では、残って安市城を攻め落としてくるか?」
「何とおっしゃいました?」
「そなたに軍をやろう。安市城を落とせるか?」
「国のために去る20年間復讐だけを考えてきました。あの安市城を跡形もなく消し去ります」
ナムセン「私も残ります。安市城は、今までの新城や扶余城とはまったく違う。安市城を熟知する私が行くべきだ」
イジョクうなずく。


廊下を歩いていくソリンギを追いかけるポンペ。
「将軍、将軍、何であんな事を?」
「何がだ? 100万の大軍でも失敗しました。安市城を落とすだなんて」
「私にできぬと思うのか?」
「はい、将軍」
「やれやれ…、こら、ヤン・マンチュンも死んだのだぞ」
「今の城主はテ・ジュンサンです」
「つまり、私が奴に劣ると言うのか?」
「万が一、攻撃が失敗したら、今までの功が無駄になります。輝かしい未来が目前なのになぜ?」
「こらこら」
「今、契丹族も不満だらけです。まだ間に合い…」
「貴様、説教はよせ」
「将軍」
「出世も良いが、甘い汁ばかりは吸えんのだ。亡き先帝陛下の屈辱をそそぎ、魂を慰めねばならん。世には苦いと知っていても、口にすべきものがある。ところで、あいつずいぶん偉くなりおった。事ある毎に文句を言って、今度は私について来るだと? まったく…」


シン・ホンとナムセン。
シン・ホン「どうしたのですか? 安市城に留まっては、功を立てるのは大変です。本隊に合流するとおっしゃいませ」
ナムセン「安市城は決して唐に奪われたくない。ソリンギが攻めたら、安市城には何も残るまい。後日唐を排除するには、安市城の力が必要だ」
「ソリンギは簡単に諦めません。それより大変なのは、安市城を味方につける事です。できますか? 安市城を説得する自信は?」
「私の真心を知れば、皆従うだろう」
「時間がありません。唐の本軍が平壌に着く前に、終わらせるべきです」
「そうだろう、平壌城ももう終わりか。その光景をどうして目にできようか」



ポジャン王とスギョン姫。
スギョン姫「新羅軍の動きが不穏だとか。漢城以南は遼東以上に平壌の手が及ばぬ、今のような戦時に辺境の警戒を怠ってはならぬ」
「陛下、大莫離支です」
「中へ通せ」
ナムゴンが、平壌城の武将を連れて入ってくる。
「陛下、唐の本軍が南下し始めました。じきに鴨緑江(アムロクコウ)を渡るはず。主力部隊で敵を防ぎましょう」
「誰がその大任を?」
「それができるのは、チ将軍だけです」
「チ・ミョンチャンか」
チ・ミョンチャン「陛下、私は老躯の身ですが、生涯を戦場で送りました。最後に身命を捧げる機会を」
「チ将軍なら、賃も信用できる。どうか蛮族どもから、高句麗を守ってくれ」
「陛下、皇命に従います(ひざまずく)」
「遼東からの援軍は?」
「無理でしょう」
「何? どういうことだ?」
オン・サムン「陛下、唐の大ソウ管イジョクが、安市城へ大軍を送りました」
イ・ギウ「今頃、安市城も戦闘中のはずです」
スギョン「安市城が落ちたら、両党を支える基盤が崩れます。安市城だけは何としても守らねば」
王「困った、一体、なぜ高句麗がこうなったのか…」

安市城。
兵士や民が大勢逃げてくる。
コルサビウとフクスドルは横たわっている兵士の傷を手当てしている。
テ・ジョヨンは、女の子を布でくるんであげる。
「しっかり包まっていろ」
兵士の傷の手当てをするテ・ジョヨンにかけよる将軍。
「援軍だ、遼東から援軍が来た」

コ・サグ将軍一行を迎えるテ・ジュンサン将軍たち。
テ・ジュンサン将軍「ようこそ、将軍」
コ・サグ将軍「唐軍は?」
「チョビル山の陣営に下がりました」
「大したものだ、敵の猛攻を防ぎきるとは」
「これからが問題です。城内の食料はすべて底をつきました」
「兵は連れてきたが、食料は持参できなかった」
「敵将は誰だ?」
コム「ソリンギです」
「ソリンギ? 扶余城が陥落した時、先鋒だった武将か」
「それよりも、驚く事があります」
「驚く事だと?」
「ナムセンも一緒です」
「ナムセンが?」
「むしろ好都合です。裏切り者を消しましょう」
テ・ジョヨン「しかし誰よりも安市城を熟知しています。城内に食料がない事も知っているはず」
テ・ジュンサン「まだ姿を見せていないが、じきに彼が先鋒となるだろう」
「我らを知る者と戦うのか、簡単には勝てまい」


ソリンギが咳払いしながら、席に着く。
「(机を叩きながら)もう10日だぞ、10日。その間一日も休まず攻めた。なのに遼東を荒らしたこのソリンギの部隊が、なぜ一度たりとも彼らに勝てぬのだ」
ソン・マニョン「名不虚伝です」
名不虚伝:名はでたらめには伝わらないという事。
「いくら弱っていても、さすがは安市城です」
契丹部族長「正攻法だけでは無理でしょう」
ソリンギ「それはどういう意味だ?」
「我らも安市城の事は存じています。しかも敵の援軍まで来たのです」
チョリン「不用意に攻めては被害が増えます」
「戦いに来て、死を恐れるのか?」
ソン・マニョン「怒る場合ではありません。今は冷静にならねば」
「冷静も何も安市城は目前だぞ」
イ・ヘゴ「将軍、我が契丹の目的は、手柄を立てヨンジュを得る事です。なのに高句麗滅亡を目前にして、この安市城で時間を無駄にはできません」
「私はもう決めたのだ。あの安市城を必ず陥落してやる。シン・ホンよ」
「はい、将軍、そなたの主人はなぜ姿を見せぬ? 私を補佐しに来たのなら、とにかく顔を出すべきだ」


ナムセンの居場所に、ソリンギとポンペが来る。
ポンペ「ソリンギ将軍です」
ソリンギ「ヨン将軍」
ナムセン「何事です?」
「それで、安市城を潰す作戦は立てたのか?」
「最初から、私は安市城攻撃には反対した。まだ間に合う、本隊と合流なさい」
「あー、ポンペよ、しばらく下がれ」
「え…、私まで退けるとは…」
「いいから、下がっておれ」
ポンペ下がる。
「今から、腹を割って、単刀直入に言おう。私はどんな事をしてでも安市城を潰してやる。だがいざ交戦してみると、昔の悪夢が思い出されて耐えられんのだ。私を将軍にして下さった先帝や、あの日の惨めな敗北まで、恋しさや、悲痛さで、胸がどきどきして、とても我慢できん」


ヤン将軍の霊前。
テ・ジュンサンとテ・ジョヨンが座っている。
「ジョヨン、お前が生まれた頃、唐の皇帝李世民(イセミン)が、100万の大軍を率いて駐○山に来た事がある。当時はヤン将軍が健在で、私はただ命がけで、勇敢に戦うだけで良かった。だが今は、あの時の大軍より、城を守らねばという責任に、恐れを感じる」
「父上」
「将軍もそうだっただろう。だがこれほどの威圧感と恐れを、あの方は決して表にあらわさなかった」
「ヤン将軍は、民のために戦ったそうです。安市城で戦ったのは、他ならぬ民で民のために戦えと言いました。知りとうございます。あの時の戦いを、この小さな城がいかに100万を防いだのかを」
「あの時は、本当にすごかった。民の中でただ一人も、力を貸さぬ者はなかった。中には臨月の身で協力する妊婦もいたのだ」

(回想シーン)
テ・ジョヨンの母も臨月のおなかで土を運んでいる。
「急いでくれ」
土山の戦い。
はしごを登ってくる兵士を突き落とすテ・ジュンサン将軍。
テ・ジュンサン「皆殺しにしろ」
ソリンギ「雲梯(うんてい)をかけろ、城壁を上がれ」
城壁では、苛烈な戦い。
「登れ」
イジョク「土山から攻撃せよ、土山に登れ」
ヤン将軍「あと少しだ、土山が崩れるぞ。諦めるな」
コ・サゲ「城壁を越えさせるな」

唐の兵士が土山に登っていく。
ヤン将軍「今だ。水を流せ、土窟に流し込め」
水が流れ込み、ぎりぎりと音を立てて、土山が崩れ始める。
「土山が崩れる、土山が崩れ始めた。唐の大軍が崩れるぞ」
土山が崩れる様子をじっと見つめるヤン将軍。
イジョク「そんな…」
ソリンギ「後退しろ、皆後退しろ」
「退却せよ」


ソリンギ「多くの唐軍が土山の下敷きになって、生き埋めになった。まさに生き地獄だった。今でも兵士たちの叫び声が耳に残っている。私は安市城を陥落させ、骨に刻まれた多くの怨魂を慰めねばならん。ヨン将軍、私を助けてくれ。誰よりも安市城に詳しいではないか。いかにすれば城を落とせるか、どうか秘訣を教えてほしい」
「安市城は、兵も民も皆決死の覚悟で戦っている。決して砲車や雲梯などでは落ちぬ」
「だから、恥を忍んで方法を聞いておるのだ」
「助けてくれ」
「方法はない。すぐに撤退なさい。本隊に合流するのが上策だ」
「最後まで補佐を拒否するか(うなずく)よろしい。助けは要らぬ。安市城を必ず焼き払ってやる。その目でしかと見よ(立ち上がって出て行く)」

部屋でうろうろしているソリンギ。
イ・ヘゴ「将軍、お呼びですか」
「今日から、ヨン・ナムセンを監視するのだ。どう考えても不審な点が多い。そう…今は我らの味方だが、血は水より濃しと言う。高句麗の奴らは信用ならん。抜かりなく行うのだぞ」
「承知しました(出て行く)」
苦い顔のソリンギ。

シン・ホン「安市城へ行くのですか?」
ナムセン「ソリンギが戦列を整え次第、攻撃を始めるだろう。安市城の被害を抑えるべきだ」
「しかし、危険です」
「今夜、密かに行って来る」
「敢えて行くなら、私も参ります」


夜。
モゲが走ってイ・ヘゴのところへいく。
モゲ「副将」
イ・ヘゴ「どうだ?」
「間違いありません。ヨン将軍は安市城へ入りました」
「ただじゃおかねえ(刀を抜こうとする)」

テ・ジョヨンたちが走る。
ヨン・ナムセンとシン・ホンが馬に乗っている。
ナムセン「元気そうだな。城主のテ将軍に会いに来た」

部屋の中。
テ将軍に挨拶するナムセン。
「お久しぶりです」
テ・ジュンサン「何用で来られた?」
「ヤン将軍に会わせて頂きたい」
コルサビウ「とんでもない、よくもそんな事が言えるな。将軍に会わせてほしい。御堂へ案内してくれ」

ヤン将軍の御堂で、何回もひざまずいて挨拶するヨン・ナムセン。
テ将軍とテ・ジョヨンがそばで見ている。
声「少なくとも貴様は」
(回想)ヤン将軍「亡き父の遺志を継ぐと思っていた。ゲソムンは最後までお前を気にかけていた。なのに、この手でお前を捕らえるとは。お前だけでなく、私も死んで我が友に顔向けできん。一体なぜ、こうなってしまったのだ」
(回想終わり)
涙ぐむナムセン。
ナムセンの声「将軍に、私の心をお見せできると思いました。でもその日を待たず、こうも早く逝かれるとは。生前に尽くせなかった私を、お許し下さい。死にゆく高句麗を、私がいかに立て直すか、見守っていて下さい」
テ・ジョヨンが不審そうな顔。

ソリンギ「何? ナムセンが安市城へ?」
イ・ヘゴ「確かに城に入るのをこの目で見ました」
「まさか、奴が我らを…」
ポンペ「今、高句麗は風前の灯です。こんな時に裏切るのは無理です」
「一体、何を考えているのか…手柄を立てておきながら、今になって我らを裏切るはずはなかろうに」

テ・ジョヨンとシン・ホンが立っている。
テ・ジュンサン「早く申されよ。話とは一体何だ?」
ナムセン「もう7年もひどい飢饉が続いている。食料もない上に、ヤン将軍亡き後、軍の士気はどん底だ」
「心配しに来たのなら、帰られよ。我らは血一滴に至るまで流す覚悟だ」
「無駄な血は流すな。私に高句麗を救う妙案がある」
「国を乱しておいて妙案だと? でたらめを言うな」
「唐軍については、誰よりもよく知っている。今の兵力では到底この戦に勝てない。城門を開けて、唐に降伏するのだ」
「(テーブルを叩く)一体何を申すのだ」
「安市城まで唐に奪われたら、もう国を取り戻せぬ」
「その口を閉じぬか。すべて誰のせいだか忘れたか」
「私は、国を潰したブ大臣らを一掃する。その後で、折を見て唐を追い出す。よろしいか。唐の力を借りて奸臣を消し、狩りの後で猟犬を食うのだ。菟死狗烹だ。高句麗を救う道はこれしかない。よく考えてほしい」
「一考の価値もない。この安市城は高句麗と命運を共にする」
「テ・ジュンサン将軍」
「貴様(コ・サゲ将軍たちが入ってくる)何をしておる。この者の首をはねろ」
「なぜ分からぬ、私を助ければ高句麗は助かる」
「早く連れ出せ」
「はい」「やめよ。今回だけは見逃す。だがこの次はないぞ」
「テ将軍、この機を逃しては駄目だ。連れて行け」
「はい」
「将軍、テ将軍、将軍」
テ将軍、立ち上がる。

テ・ジョヨンとコルサビウたちが、夜道をナムセンとシン・ホンを送っていく。
その前に立ちふさがるフクスドル。
「フクスドル」
「こん畜生め。逆賊をこのまま帰すのか?」
テ・ジョヨン「何を言う?」
「俺が殺るべきだった。まさかと思ったが、唐の将軍となり来るとは、もう死んでくれ、俺に殺されてくれ(剣を振り上げる)」
コルサビウが止める。
ナムセン「(ジョヨンに)私に時間をくれ。お前なら分かるはずだ、最後まで聞いてくれ」
テ・ジョヨンはうなずき、先に立ってナムセンと行く。

部屋の中に、ナムセンとジョヨン。
「お前は子供の頃から一緒だった。お前は私が国を守りたがっている事を知っているはず」
「唐の皇帝に忠誠を誓ったとか」
「国を救うためなら、私は何でもやる。ジョヨン、唐の皇帝が私に約束した。高句麗を滅ぼせば、その統治は私に任せると。その日を待とう。そして私と共に唐を追い出すのだ。いいか? よく考えろ。今イジョク大ソウ管の本隊が平壌に進軍中だ。新羅のキム・ユシン軍まで来たら、朝廷の無能な輩は一日も耐えられん。これが国を救う唯一の道だ。テ将軍を説得してくれ」
「だんな様の言う方法は、本当に高句麗のためですか? 国や民のための物ですか? だんな様は誰よりも高句麗を思っておいでです。しかし、今なさっている事は民の望むものではありません。だんな様、まだ間に合います。唐を捨て高句麗へ戻るのです。だんな様は誰よりも唐を熟知しています。この戦で大きな戦力になります。高句麗へお戻り下さい」
「お前…私を説得する気か?」
「だんな様、亡きお父上を考えて下さい。大莫離支は…」
「やめろ、もういい。何と言われようと、自分のやり方を信じる」
「ですが、もしだんな様が唐の奴らに騙されているのなら、高句麗の歴史上最低の愚か者として残るでしょう
「もちろん、それも有り得る。だが成功したら高句麗の歴史は万年にもなり得るのだ。お前はお前のやり方でいけ。私が正しかったと知った時、私を補佐するがよい。その時のために、安市城は残しておく」
ナムセンは立ち上がり去る。

馬に乗っていくナムセンとシン・ホン。
ナムセンの顔。
ジョヨンの声「だんな様が、唐の奴らに騙されているのなら、高句麗の歴史上最低の愚か者として残るでしょう」
シン・ホン「だんな様、大丈夫ですか?」
ナムセン我に返る。
「安市城で聞きましたが、イジョク大ソウ管が平壌で大敗したそうです」
「本当か? 間違いありません。ところで駐○山では我らの不在に気づいたはず」

高句麗会議。
「チ将軍がやりましたな」
「さようです」
「見送ったか?」
「はい」
コム「今朗報が届いた。チ将軍がイジョクの大軍を迎撃し、大勝したのだ」
「唐軍は劔山城で足止めされている。チ将軍が大任を果たした」
嬉しそうなジョヨン。

ソリンギが歩き回っている。
「えへん、やれやれまったく…、えへん。何一つうまく行っておらん。我らは安市城に手詰まり、イジョク大ソウ管は、その…誰だ?」
「チ・ミョンチャンです」
「そうだ、そいつだ、ヨン・ゲソムンでもあるまいし…何て不運なんだ」
「安市城へ行ったヨン将軍が戻りました」
「そうか」
「イ・ヘゴ将軍が連れてきます」
「今すぐに、諸将軍を集めろ」
「はい」「ナムセン…ヨン・ナムセンめ…」

大勢が座っている会議室。
ナムセンが連れてこられる。
ソリンギ「今から、決して嘘を申すな。安市城へ行って、奴らと何をした? 一体、どんな機密を教えた?」
「安市城へ行ったのは、降伏を勧めるためだ」
「何? 降伏を勧めた?」
「それと、機密漏洩ではなく、敵情を見てきたのだ。裏切るつもりなら、この昼日中に戻りはしまい」
「安市城の様子は?」
「やはり、攻撃は諦めた方がよい」
契丹部族長がソリンギの顔を見る。
「諦める?」
「高句麗は滅ぼせても、安市城を落とすのは無理だ」
「安市城ではなく私を降伏させる気か?」
「忠心から言ったまで。民を無駄死にさせるな」
「皆聞け。夜が明け次第、あの安市城を総攻撃するぞ。そして、その先鋒をヨン将軍に任せる」
「断る」
「命令に背く気か?」
「命令される筋合いはない」
「何?」
「これ以上、将軍が負け続けるのを座視できん。能力がないなら。指揮権を私に任せられよ」
「何? (そばに飾ってある剣を抜いて)貴様、指揮権だと?」
「何…、指揮権だあ? ナムセン、おのれナムセンめ」

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テ・ジョヨン33回目

辺りを見回し、いいにくそうな烏骨城城主。
「大丈夫だ、話せ。城主、」
「あの、中にー酒と肉を用意しました。召し上がって、今夜はごゆっくりどうぞ」
「感謝する。肉は兵士たちにやってくれ」
「召し上がらないのですか?」
「私は徹夜でやる事が多くてな(歩き去る)」
城主は、目を細めて首をかしげる。


夜、サブクたちが城門から入ってくる。
城内には城主と兵士たち。
城主「来たか」
サブク「ヤン将軍は?」
「酒を飲ませるのは失敗したが、兵には飲ませた。作戦が楽になるだろう」
「他にこの事を知るものはいますか?」
「私の部下だけだ」
「決して、他に知られてはなりません」
「承知しておる。兵を隠して、こちらへ」
サブクは、振り返って譜白の兵士に何事かささやく。
「はい。行くぞ」兵士はどこかへ行く。
サブク「(城主に向き直って)城主」城主「行くぞ」

兵たちが走っていく。
コム将軍「異常ないな?」
「はい」「国運を担うお方だ。警備に手抜かりのないように」
テ・ジョヨン「承知しました」
コム「(行きかけて振り返る)この夜更けに将軍の部屋に明かりが…」
「私が見てきます」「頼むぞ」
テ・ジョヨンが歩いていく。

ヤン将軍の部屋。
机に向かって本を照らし合わせて仕事をしている。
「ジョヨンか? お入り」
テ・ジョヨンが部屋に入り、椅子に座る。
「夜も更けました。お休み下さい」
「はー、今、唐軍が遼河に集結している。今度はまたどんな方法で攻めてくるか…」
「将軍がいる限り、唐軍は高句麗を脅かすことなどできません。その昔、安市城で将軍は、唐の100万大軍を防いだと聞きました。勝ち目のない戦を将軍が勝利に導いたのです」
「その勝利は、私が導いたのではない。城内の我が民が、最後まで頑張ったお陰だ。ジョヨン」
「はい、将軍」
「高句麗のために何かできるのも、これが最後だろう」
「将軍」
「私が死んだ後は、お前たちが国を守るのだ。この地では、今後も戦があるだろう。だが覚えておけ。民を守り抜けば、高句麗が滅ぶ事は決してない。万が一、国運が尽きて王朝が終わろうとも、民が死なぬ限り、その国はいつかきっと再起できる。百済が復興に失敗したのも、民を守れなかったからだ。私の話を肝に銘じよ。常に民とすべてを共にすれば、お前がどこで何を夢見ても、その夢は必ず成就するだろう」
「(頷く)この胸に刻みつけておきます」


烏骨城城主がサブク達の居場所にくる。
城主「じきに護衛が交替する」
サブク「今から、作戦を開始する。直ちに兵士の宿所を急襲なさい。一人も逃さず、その後は焼き払って証拠を消すのです」
「分かった」
「私とお前らで将軍を襲う。将軍を暗殺したらすぐ、その場を去るぞ。決して正体を知られてはならん。よいか?」
「はい、将軍」
黒マスクをするサブク。

黒マスクの兵士達と城主が、番兵を襲う。
城主「向こうへ(右後ろの人間に右手を振って)、こっちだ(左後ろの人間に左手を振って、進む)」
次々に番兵を倒す。

コム将軍がきて、テ・ジョヨンに告げる。
コム「おい、今すぐ城門へ行け」
テ・ジョヨン「何事です?」
「平壌からきた者が一悶着起こした。お前たちを呼んでいる」
「我らを訪ねるとは…あの野郎か?」

フクスドルを押さえようとした兵士を、ぶっとばすフクスドル。
「早くどけ、邪魔したら殺すぞ。何度言えば分かる? ヤン将軍に危険が迫っているのだ。この分からず屋が。よし来い、早く終わらせよう」
テ・ジョヨン「何事だ?」
「俺だよ、フクスドルだ」
コルサビウ「ここをどこと心得る?(フクスドルを手で打つ)」
「この…」フクスドルを止めるテ・ジョヨン。
「おお、今、ヤン将軍が危険なのだ。ここには刺客がわんさといる」
「誰が将軍を狙うというのだ?」
「まったく、この野郎(殴ろうとするが、ひだりの方を見て、はっとして、指を指す)あそこを…」
火事。
テ・ジョヨンびっくり。
コルサビウ「兵士の宿舎に火事が起きた、火事だぞ(走っていく)」
テ・ジョヨン「将軍…将軍が危ない」

「火事だ、火事だぞ」
火事の建物から出てきた兵士を次々に刀で斬りつける。
城主は、刀を振りかざしながら、斬りつける。
火だるまの兵士「火を消せ…」

コム将軍「一体どうしたのだ? 何事だ? あの火は何だ?」
兵士「兵士が…、兵士達が…(倒れる)」
コム「私が見てくる、皆この場を動くな」
「はい、将軍」

ヤン将軍が一人部屋で、仕事をしている。
物音に気づき、何事という顔をする。

床下では、兵士達が戦っている。
階段を上がり、建物に入る兵士。

ヤン将軍は、ろうそくの明かりを手で消す。
暗い部屋の中から、障子越しに、外にいる兵士の姿が見える。
ヤン将軍は、刀を取り、兵士を二人突き殺す。
次々に倒し、廊下に出るが、さらに大勢の兵士が集まってきて、ヤン将軍に向けて、刀を突き出す。
ヤン将軍「お前達は誰だ?」
サブクが現れる。
ヤン将軍「唐の刺客ならこの手で殺す。だが、高句麗の兵なら今すぐ武器を捨てろ」
ヤン将軍の背後にある障子に兵士の影が映り、その兵士は刀を構える。
ヤン将軍「どう見ても、高句麗の兵に違いないな。誰が…お前たちを送った? 誰が私を殺せと?」
その瞬間、障子越しに、ヤン将軍の背を、刀が突き刺す。
刀が抜かれて、ヤン将軍は後ろを振り返り、刀で払う。
前にいるサブクは、向き直ったヤン将軍を刀で突き刺す。
刀が刺さったままのヤン将軍は、サブクを突き飛ばす。
サブクは、覆面を取る。
ヤン将軍は腹に刺さった刀を手で押さえ、うめく。
「お前達だったのか…」
サブク「大将軍は、私に武将の夢を見させてくれました」
ヤン将軍「ぷはっ(血を吐く)お前達が…結局は、我が高句麗を潰すのか…」
「将軍を深く尊敬しつつ、ここまで来ました。だが高句麗のために、国の将来のために、死んでもらいましょう。このサブクをお許し下さい。いえーっ(斬りつける)」
ゆっくりとヤン将軍が倒れる。
床に倒れたヤン将軍「高句麗、高句麗!」
サブクの顔がゆがむ。

戦いの跡。
テ・ジョヨンとコルサビウ、フクスドルが現れる。
正面から城主と兵士達。
城主「奴らをとらえろ」
「はい」
コム将軍も戦う。
城主「(険しい表情で見ている)交替しろ、兵を皆引かせろ」
テ・ジョヨン「(我に返り)将軍、将軍…(後ろを向いて家の中へ入る)」

老化に横たわるヤン将軍を発見し、かけよるテ・ジョヨン。
「そんな…、駄目だ…駄目だ、将軍、将軍」
後ろから、フクスドルとコルサビウ。
「どうして…、一体どうして…私は将軍のご恩に何も報いていません。逝ってはなりません。目を開けて下さい。逝っては駄目です。死なないで下さい、将軍…」
フクスドル「あの野郎どもめ、皆殺してやる」
コム将軍「(フクスドルの襟首を捕まえて)早く…早くしろ、ここから出るんだ」
テ・ジョヨン「このままでは、行けません」
コム将軍「遼東にこの事を知らせねば、急げ(テ・ジョヨンを引っ張る)」
テ・ジョヨン「(コム将軍を振り払う)将軍を守れなかったのに、生きられますか」
「将軍の望むことではない。憤怒するのは当然だ。だが今は、無駄死にしてはならん。必ず生きて、将軍の遺志を果たすぞ」
テ・ジョヨンは悲痛な叫び声。
コルサビウもフクスドルも泣く。
コム将軍「時間がない、急げ、(テ・ジョヨン達を引っ張ってつれていく)早く」
フクスドル「将軍」
テ・ジョヨン「将軍、将軍!!」
コム将軍が引っ張って連れて行く。


外。
テ・ジョヨン「(号泣)放してくれ」
コム将軍「何のまねだ? 馬が要る。馬小屋へ行け。早く」
後ろから、城主達。
「奴らだ、すぐに殺せ」

馬に乗った、テ・ジョヨン達。
テ・ジョヨン「将軍、将軍」
その後ろから、城主達が馬で追う。
「追え、奴らを捕らえろ、早く捕らえろ」
「奴らを殺せ、早く急げ」


サブク達。
「場外で皆が待っています」
サブク「まだやる事がある」
城主がくる。
城主「待ったぞ」
サブク「残党は?」
城主「数人逃がした」
サブクびっくり。
城主「戻ったら、ヨクサル様によろしく頼むぞ」
「もちろんです、この件の一等功臣はあなたです」
そなたの言うとおり、国を憂いての事だ
「最後にもう一度聞きます。他に我らの正体を知る者は?」
「言ったはず。私の部下だけだ」
「(横の兵に)彼らは?」
「とっくに殺しました」
「何? 殺しただと?」
サブクはものも言わず、剣で城主を突き刺す。
「貴様ら…」
「ご苦労だったな」
「(苦しみながら)貴様ら、貴様ら」
「世とはこういうものです。悪く思いますな(さらに突き刺し、頭を押し倒す)行くぞ」

騎馬兵と歩兵が城下を走っていく。
物陰で、ソル・ゲトウがイ・ヘゴに走り寄る。
「どうなった?」
「捕らわれたのは本当だった」
「金目の物はあるか? 看守に賄賂をやれば何とかなりそうだ」
イ・ヘゴは金の入った袋を渡す。
「(袋を軽く放り上げて)イフフフ、急ごう、こっちだ」

番兵の服装のイ・ヘゴとソル・ゲトウが歩いている。
「本当の兵士みたいに歩けんのかい?」

チョリンの牢屋の前。
イ・ヘゴ「チョリン、チョリン」
モゲ「副将」
チョリン「兄上」
ソル・ゲトウ「(イ・ヘゴをたたいて)時間がないんだ」
ソルが鍵を開け、イ・ヘゴが中に入る。
イ・ヘゴ「行こう」
チョリン「今は行けない」
「チョリン」
「すまぬ。帰ってくれ。時が来たら帰るから」
「今頃はヤン将軍が死んだはずだ。じきに戦が始まる。今、出ないとー獄中で死んでしまうぞ。さあ、早く」


テ・ジュンサン将軍の会議。
「将軍、将軍、平壌城から…」
「何と…」
テ・ジョヨン、コルサビウ、フクスドル、コム将軍が頭を下げる。
テ・ジュンサン「ジョヨン」
コ・サグ「その有様はどういう事だ?」
「大将軍は一緒じゃないのか?」
「父上…」
「話すがよい。何がどうなったのだ?」
「我らが将軍を守れませんでした」
コム将軍「どうか、処刑して下さい」
「処刑して下さい」
コ・サグは呆然と立ち上がる。
テ・ジュンサン「話せと言っておる。大将軍は…大将軍はどうなったのだ?」
テ・ジョヨン達はただ泣く。

ブ・ギウオンとサブクが侍女の開ける扉から入ってきて、一礼する。
ポジャン王とスギョン姫が座っている。
王「どうした、ブ大臣?」
「陛下、今から申し上げる事を心してお聞き下さい。ヤン・マンチュン将軍が亡くなりました」
ポジャン王「何だと? ヤン将軍が死んだ?」
「烏骨城で暗殺されました」
「暗殺だと?、一体…一体、誰に?」
サブク「(半泣きで)おそらく死んだ烏骨城の城主が、すべての元凶のようです。今城主と共に、この凶事の黒幕を捜しております」
「そんな…そんな馬鹿な。国の大黒柱の大将軍が死ぬなんて」
「唐に知られてはなりません。私に処理をお任せ下さい」
「ヤン・マンチュン将軍が…そんな風に逝くとは
「皆に知らせたか?」
「(さらに泣き真似をして)はい、ヨクサル様」
「(ため息)陛下、お気を確かに」。国家の非常事態です

ブ・ギォンが真ん中に座った会議。
「陛下は?」
「寝所に医師まで呼ばれました。相当衝撃だった様子」
「無理もない。国の柱だった人が亡くなったのだ」
「悲しむ暇はありません。諸君も、皇宮内外の治安維持に尽力を」
チ・ミョンチョン「一つだけ聞きます。その暗殺犯の正体に心当たりは?」
「よくぞ、言われた。遼東でも悲報を聞いたはず。彼らは我らを疑うでしょう。伝令を送り、疑義を解いて下さい」
オン・サムン「しかし、潔白を示す物は何もない」
ソンギョム「では我々を疑っているのか?」
イ・ギウ「真実を明らかにしましょう。そうしてこそ、内紛を防げる」
ブ「そのとおり。真実が分かるまで、遼東の疑いを防いでほしい」

コ・サグ「(机をたたいて立ち上がる)直ちに兵を集めろ。平壌を攻め、ブ・ギウォンを成敗する」
テ・ジュンサン「まだ、ブ・ギウォンの仕業という証拠はありません」
「唐の間者がいたそうだ」
フクスドル「私がこの目ではっきり見ました。以前ブ・ギウォン邸にいた野郎どもです」コム・モジャム「彼らは、もう平壌にはいないでしょう。ブ大臣がしらを切れば、方法はない」
「将軍が亡くなったのだ。何も言わせん。テ・ジュンサン将軍、何を恐れて迷うのだ?」「彼らを恐れてではなく、大将軍は和合を強調していたからです。今平壌を討てば、喜ぶのは、他ならぬ唐です」
「私は、決してこの件を黙視できん。必ずブ・ギウォンを殺して、将軍の敵を討つ。良いな? 早く決めよ」
複雑な表情の、テ親子。

ヤン・マンチュン将軍の肖像画の前に座るテ・ジュンサン将軍とその後ろに座るテ・ジョヨン。
「将軍の最期を看取ったか? お声や眼差しやお言葉は…将軍がお前に残したお言葉は…?」
「私が行った時には、すでにお亡くなりでした。私のせいです。私が最後まで守れなかったせいです」
「将軍は、私には父のようなお方だった。お前は知らぬだろう。将軍と戦場を駆け巡った頃ーどんなに幸せだったかを。将軍は私に、真の武将とは何かを教えて下さった。将軍の最後は私が看取るべきだった。なのにお一人で逝かせるとは。最後を見守れなかったとは…(泣く)」
「父上、父上…」
「明日、烏骨城に行く。そして、私が将軍をここへお連れする」
「今、烏骨城は敵陣も同然です」
「軍を連れて行ったら、将軍をお連れするのは難しくなる。数人の武将だけ連れて行くぞ」
「ですが父上」
「将軍の終の安住の地は、安市城であるべきだ。この堂に将軍をお連れせねばならん。今ー将軍がどんなにご不便かと思うと、私の胸は刺でも生えたように痛みが走るのだ」
「父上」


馬に乗って走るテ・ジュンサン将軍達。

烏骨城。
「私は、安市城の城主テ・ジュンサンだ。私の生涯の主がここにおられる。同じ武将として、そなたらに切に願う。大将軍を城外へお連れせよ」

烏骨城の兵士達が話し合っている。
「我らはこの件について何も知りません」
「元凶の烏骨城城主はすでに死んだのだ。もはや烏骨城に対して何の恨みや感情もない。我が主を早くここへ」
「今まで厳重に守っていました」
門から棺が出てくる。

テ・ジュンサン達は馬から下りて敬礼する。
テ・ジュンサン「(棺に手を当て)将軍、ジュンサンです、高句麗のため、将軍のやるべき事はとても多いのに、なぜこんなに早く眠りについたのです? 将軍のいない国をどうしろと、こんなに冷たい棺桶で、目を閉じられたのです? 将軍は常に兵士を心配しておられた。なのに愚かな私は、最後まで将軍を守れませんでした。今すぐ私を怒鳴りつけ、大いに叱りつけて下さいませ、将軍、将軍(泣く)」
「将軍、将軍…」
テ・ジョヨン「大将軍」


ケジン「まだ犯人は分からんのか?」
ブ・ギウォン「烏骨城城主の単独犯行のようです」
ケジン「そなたの…仕業じゃあるまいな?」
サブクとブは目をぱちくり。
ソンギョム「我らにまで隠す必要はない」
ブ「どんな理由であれ、ヤン将軍暗殺は許されません。この私が必ず犯人を捕らえてみせます」
ソンギョム「ブフブハ(せきばらい)もうこれでお暇する、エヘン」
ケジン「私もだ」
サブクも席を立つ。
兵士「居士様がお見えです」
「通せ」
「分かりました」
兵士が去り、シン・ソンが来て座る。
「位頭大兄はお元気か?」
「ヤン将軍の事で、悲しんでおられます」
「悲しまぬ者などいないだろう」
「ヤン将軍も消えたし、これでヨクサル様の思うままですな」
「何を言っておる?」
「私を騙そうとなさいますな」
「気でもふれたか、あらぬ事を言いふらしたら、許さんぞ」
「お釈迦様の掌の上です。大臣の計画すべてが、我が弟の考えた事と言ったら信じますか?」
びっくりするブ・ギウォン。
「弟が私に手紙をよこしました。もう騙す必要はありません。私の考えも、大臣の考えと同じです。高句麗の将来のために涙を呑み、大将軍を暗殺して正解でした。しかし、大莫離支の座は、我が主、位頭大兄のものです。もし大臣がその座に就けば、それは暗殺犯であると示すも同然です」
「誰が大莫離支になっても構わん。私は国を救うためにやったのだ」
「もちろんです」



テジョヨンが悩んでいる様子。
テジョヨンの叔父「お前の留守中、あの娘がここに捕らわれていて逃げた。彼女の手紙だ」
テジョヨンは、手紙を開き、読む。
チョリンの声「私がまた来たのは、お前に話があったからだ。(たき火をしているチョリンとイ・ヘゴのシーンになる)一言もなく、お前はまた私を捨てた。だが、私はお前の気持ちを知った。私と同じように、お前も私を深く想っていると。じきに戦が始まる。私を忘れるな。そして力の限り戦え。どちらが滅んでも、私はまたお前を探し出す。この気持ちは決して変わらぬ。お前もそうだと、必ずそうだと信じている。これが言いたかった」手紙を読み終えたテ・ジョヨン。
コルサビウが入ってくる。
「緊急事態だ。遼東が平壌を攻めそうだ。皆集まっている。行こう」


会議。
「遼東各地の城主の意見が一致した」
「私は違います。決して同意できません」
コ・サグ「ヤン将軍の敵を討つのだ。将軍の公認であるそなたが抜けるのか」
「将軍の敵を討つなら、我らを狙う唐とまず戦うべきです」
「テ将軍よ」
「お気持ちはわかります。そして、遼東すべての兵が怒っているのもです。ですが、今は国の状況が悪すぎます。兵を南に向けてはなりません」
「そなたは抜けろ。他の城の軍だけでも十分だ」
「将軍、どうか出兵の中止を。敵を背にして後方を攻めるなど…」
「すでに決まった事だ。いいな?」
「将軍、将軍、将軍(フクスドルが入ってくる)間者からの報告です。唐が詔書を発表しました」
「詔書だと?開戦したのか?」
「さようです。じきに敵がヨンジュへ集結するでしょう」
「奴らめ、ついに…」
テジョヨンの顔。



唐の皇室会議。

西暦666年、唐の高宗は、ナムセンを救う名目で、高句麗総攻撃を指示した。ポジャン王は、ナムゴンを大莫離支に任命して対処した。高句麗と唐の第三次全面戦争が起こったのだ。新羅も、唐から高句麗攻撃を要請されていた。高句麗に深刻な危機が訪れようとしていた。

高句麗の会議。
「唐の大軍は、ヨンジュに集結しました。大莫離支は唐を防ぐ策略をお持ちですか?」
ヨン・ナムゴン(ナムセンの次男)「遼東に使者を送った。遼東と平壌が協力すれば唐も簡単には攻めてこれない」
ブ・ギウォン「それは失敗です。唐を防ぐならヨンジュに使者を送らないと」
チ・チョンミョン「和睦への未練があるようだが」
「平和への希望は簡単に捨てられません」
チャン・サネ「すでに戦は始まりました。平和を求めるなら勝つしかない」
「この戦は決して勝てません。ナムセンが先鋒としてくるのです。しかもヤン将軍無き遼東に唐は防げません」
オン・サムン「だが諦めるわけにはいかん」
「諦める? 皆が論争に明け暮れる間に手を打っておきました」
イ・ギウ「手を打つ? いったい何の手を?」
ケジン「ブ大臣よ、どういうことだ?」
「大莫離支が遼東へ使者を送る間、唐の皇帝に密使を送りました」
「密使を?」
「しかとご覧あれ。唐はじき本国へ戻るでしょう。そして高句麗に平和使節団を送るはず。私の密使により、両国において新たな局面が始まる。必ずそうなるゆえ、今の私の言葉を覚えておかれよ」

ヨンジュ。唐の陣営。

イジョク大ソウ管らが馬で到着。
ソリンギ、契丹部族長らが迎える。
「ようこそ、将軍」
イジョク「ご苦労、挨拶は後だ。高句麗の動向を聞こう」
ソリンギ「承知しました。指揮官会議を開く。皆を集めろ」
「はい、将軍」


酒を飲んでいるナムセンと、シン・ホン。
シン・ホン「指揮部からお呼び出しです」
ナムセン「高句麗をどう攻めるか考えようというのか?」
「こうしていられません」
「分かっておる。ありがたくも、唐から高い位ももらった。遼東都督兼、平壌道安撫大使、玄菟郡公…、実に長ったらしい官名だ
「今の高句麗にはヤン将軍はいません」
「そうだ。だから官位を受け入れた。もはや高句麗に希望はないからだ」
「だからこそ、だんな様が先鋒に立つべきです」
「(驚いてシン・ホンをじっと見る)なぜだ?」
「高句麗を、唐に滅ぼさせてはなりません。いっそだんな様が高句麗を滅ぼすのです」
「この手で、高句麗を?」
「さようです、そしてその後に、新たな国を作るのです。高句麗の正当性を継ぐ新たな高句麗を」
「新たな高句麗? 古い高句麗を滅ぼし、新たな高句麗を?」
「そのためにも、だんな様が先に平壌に入るべきです。新高句麗の新王になるのです」
「高句麗をこの手で滅ぼすだと…?」
モゲ「(入ってきて)高句麗から使者がきました。お二人をお呼びです」


ソルがソリンギに手紙を渡そうとする。
ソリンギ「こら、まず大ソウ管にご覧入れる」
ソルが隣の大ソウ管に手紙を渡す。
ソリンギ「大ソウ管、私は見なくても結構です。ところで、ブ大臣はなぜ…」
「褥薩は唐との和睦を願っています」
「和睦? なるほど、それで。ブ大臣はお元気か?」
「はい(にっこり笑って頭を下げる)ソル将軍によろしくと」
「うーん、何とお優しいことか。だがご冗談がきつい」
「冗談ですと…?」
「何が和睦だ。今高句麗を頭から丸呑みにできるのに、仲良くできるものか」
「どういう意味です? 唐の和睦提案でヤン将軍を暗殺したのです」
ナムセンびっくり。
「そうそう、それは良い事だった。おかげで事が楽になった。だが今和睦を結ぶには、この胸の恨みが大きすぎる」
「し…将軍」
「今から、高句麗がいかに滅びるか、天の上からしかと見るが良い(剣を抜いて使者を斬る)」
ナムセンびっくり。
イ・ヘゴ、チョリン、契丹部族長びっくり。
「これから、高句麗の運命はお前と同じようになる。一人たりとも残さぬ、皆殺しだ(また斬りつける)お前たちの血で、先帝陛下と部下たちの恨みを洗い流してやる(また斬りつける)」


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テ・ジョヨン32回目

王宮前に罪人姿のヤン将軍。
ブ・ギウォン「陛下、何をおっしゃいます、大逆罪人を大莫離支に?」
ケジン「とんでもない事です、ご命令のお取り消しを」
「ご命令のお取り消しを、陛下」
王「すでに命令は下した。この件はもう論じるな」
ブ・ギウォン「なりません。高句麗の紀綱が揺らぎます」
ナムゴン「位頭大兄ヨン・ナムゴンが申し上げます」
「話すがよい」
「国法によれば、大莫離支は、父ヨン・ゲソムンの後を継ぎ、我らに機会が与えられます」
「さようです、国法に従うべきです」
「謀反を企てた兄ナムセンはその資格がありません。弟のナムサンは病が重く、大役を果たせません。今―ー大莫離支になれるのは、私だけです。私は大莫離支の位を放棄します」
サブクがびっくり。
テ将軍、コ将軍も驚く。
ヤン将軍はじっと座っている。
テ・ジョヨンの顔。
ナムゴン「大莫離支の地位は、民の支持がなければなりません。私は大将軍を救うために、命を投げ出す民を見ました。今の高句麗にヤン将軍ほどの者はいません。陛下、このナムゴンは、何があろうとも、陛下の命令に従います」
ケジン、ブ・ギウォンはあっけにとられる。
チャン・サネは頷く。
王「話すがよい、ヤン将軍、大莫離支を引き受けるか? 高句麗の運命を担う大役を引き受けられるか?」
ヤン将軍「私は老いて、力も不足しています。ですが、願いをお聞き入れくだされば、残りの人生、力の限り、大役を務めましょう」
「早く申せ。朕にできる事なら何でもしよう」
「南部褥薩ブ・ギウォンを莫離支にして下さい」ブ・ギウォンら一同びっくり。
「これまで、高句麗最大の問題点は派閥と紛争でした。それが解決されなければ、誰が大莫離支になろうとも無駄な事です。私はブ大臣の忠心と力量を存じています。国のためなら、私が莫離支で、彼が大莫離支になっても構いません。陛下、ブ大臣を重用なさいませ。今高句麗を救う道は、文武臣下が一丸となり心を合わせる事です」
武将たちは頷き、一同びっくり。


ヨンジュ。
「将軍、今間者から報告がありました」
ソリンギ「それでどうなった? ヤン・マンチュンは死んだか?」
「なぜ答えぬ?」
「ヤン・マンチュンは大莫離支に任命されました」
ソリンギ「(びっくり)何? こいつめ、馬鹿を申すでない。死を目前にしていた者が大莫離支だと?」
ソル「(手紙を出してソリンギに渡す)これが間者の報告書です」
ソリンギは、手紙を広げて見る。
ポンペ「(手紙をひったくる)貸して下さい」
ソリンギ「やれやれ…」
「報告は本当か?」
ポンペ「そうです、大莫離支はヤン・マンチュンです」
ソリンギ「何と…青天の霹靂ではないか。枯れかかった古木に花が返り咲いたのか」
部族長「実にしぶとい国ですな、あの高句麗は」
イ・ヘゴ「ナムセン殿は?」
ソル・ゲドウ「一日中宿所でじっとしています」
ソリンギは、テーブルを叩いて立ち上がる。


契丹陣地のナムセンの部屋。
シン・ホンと話をしている。
ソリンギがイ・ヘゴたちを連れて入り、咳払いをする。
「計画通りなら、ヤン将軍が処刑され次第―ー高句麗を攻めるつもりだった。だが今は、すべての計画が水の泡だ」
イ・ヘゴ「高句麗について、誰よりもご存知のはず。お話し下さい。今後高句麗はどうなります?」
ナムセン「亡き父が知略と勇気を兼ねた勇将なら、ヤン将軍は、兵の和合と士気を重んじる徳将だ。将軍が大莫離支になったのなら、政治勢力と軍部が和合したと言う事だ。私の予想では、じきに高句麗は再起するはず」
「再起する…高句麗が…ヤン将軍には、十分その力がある。むやみに攻めたら、昔の敗北を繰り返すでしょう」
頭を抱えるソリンギ。

イ・ヘゴのところへ、シン・ホンとソル・ゲドウが近づく。
「大人は我らに協力しないつもりのようだ。代わりにシン公に協力してもらう」
シン・ホン「私は非力です」
「見たところ、シン公は十分我らの力になり得る」
「力になれたとしても、私は主に従うだけ…」
剣を抜いて、シン・ホンにつきつけるイ・ヘゴ。
「勘違いするな。国賓扱いするのは、協力するという前提の下でだ。役立たずなら、今すぐ消してやろう」
「無駄な事ですぞ。私は主に従うだけだ」
「それほど死にたいのか」
シン・ホンは、イ・ヘゴが突きつけている剣の飾りの部分を見て驚く。

回想シーン。
シン・ホンが懐から刀を出して、差し出す。
ブ将軍「私には不要だ。捨てろ」
シン・ホン「代々伝わる宝剣です」
「私には資格がない。早く捨てろ」
回想終わり。

呆然とするシン・ホン。
はっとして我に返り、イ・ヘゴを見る。
「答えろ。協力するか?」
「今夜まで待ってほしい」

夜、部屋に一人のシン・ホン。
「確かにブ家の宝剣だった。そんな…若様が生きていたとは」
イ・ヘゴとソル・ゲドウがくる。
シン・ホンは、イ・ヘゴの腰のベルトにさしてある宝剣を見る。
イ・ヘゴは、シン・ホンが宝剣を見ていることに気づく。
「どうされた?」
「その宝剣を見せてもらえますか?」
イ・ヘゴは宝剣を渡す。
「一見しただけでも、実にすばらしい宝剣だ。どこでこれを?」
「(宝剣を取り返す)この宝剣は、形見のような物だ」
「形見とは…?」
「赤子の頃、草原に捨てられた私を可汗が拾った。その時、これも一緒だったそうだ」
シン・ホンは、衝撃を受け、目をそらす。
「私の両親は、何らかの事情があって、私を捨てたのだ。この宝剣は、後日両親が、私を探すための形見に違いない。私の提案は考えてみたか? シン公よ」
「お人払いを」
「下がれ」
ソル「付き合ってられねえな」
「答えられよ」
「協力します。ですが、私は契丹や唐ではなく李副将に協力するのです」
「どういう意味だ?」
「決して今の主には話してはなりません。ヨンジュの南海岸に、じき高句麗へ向かう商船があります。商人に扮して行きなさい。そして、平壌へ着いた後は、今から話すとおりになさいませ」

平壌城。宮殿
ヤン将軍「長らく遼東を留守にした」
「事件も落着したので、帰ろうと思っていました」
「平壌城の方は?」
オン・サムン「指揮権も取り戻し、以前通りになりました」
「民心は?」
チャン・サネ「民も活気を取り戻し、安定しつつあります」
「私がここにいる間、遼東はコ将軍に任せる」
コ・サグ「承知しました」
「それと、安市城はテ将軍に任せた。ジョヨンとコルサビウがここで私を補佐する」
テ将軍「はい、将軍」
「皆、気をつけて戻れ。そして各自の持ち場で、尽力してくれ」
「(いっせいに)承知しました」


ブ・ギウォンとサブクが兵を連れて馬で、街中を行く。
傘をかぶり、その前をさえぎるイ・ヘゴとソル。
ソル「唐と貿易している者ですが、良い品が入りましてな」
サブク「無礼な、この方を誰と心得る?」
ブ・ギウォン「待て。面を上げよ」
イ・ヘゴは、傘を持ち上げて、顔を見せる。
サブク「者ども、奴らを…」
「やめろ、ここへは何用だ?」
イ・ヘゴ「まずは、こちらの品をご覧下さい」


室内。
イ・ヘゴとソル、サブク、ブ・ギウォンが着席している。
イ・ヘゴ「ソリンギ将軍が、大臣に送った親書です。今、唐では戦いの準備を終えました。水軍と陸軍、補給部隊まで含めほぼ100万です。親書には和睦の提案があります」
「戦の準備を整えておいて、和睦とは、つじつまが合わん。判断はブ大臣次第ですが、断った瞬間に、先鋒隊をはじめ、100万の唐軍が攻め込むでしょう」
ブ「(せきばらいしつつ、手紙を見るが、びっくり)何と、ナムセンが、ナムセンが唐に忠誠を誓ったのは本当か? これは本当なのか?」
「親書には何一つ嘘はありません」

兵士たちが、出てくる。

ケジン「ナムセンが唐に忠誠を誓ったとは」
「だが、どう考えてもおかしいぞ。彼らに有利なのに、なぜ和睦を?」
ブ「戦とは、両国を疲弊させるものです。以前も唐に勝ったものの、我らの被害も甚大でした」
「そうだろ。奴らも負担なのだ」
「和睦を主張する度、君臣関係を求めましたが、今回は兄弟の関係を求めました」
「兄弟だと? 君臣ではなく兄弟関係をか?」
「そうです。唐は、ずいぶん譲歩したのです」
ケジン「やれやれ…それで、そなたの考えは?」
「どう見ても、この戦は勝ち目がありません」
「無謀な戦は、民にしわ寄せが及ぶ」
ソンギョム「でも和睦は我らが決められぬ事だ」
ブ「私がヤン将軍を説得してみせます」
ケジン「できるか?」
「私を莫離支にした人です。和合を成すといった言葉が本当かどうか、確かめる機会です」

ヤン将軍の前に、ナムゴン。
ナムゴン「もう―ー平壌を去ろうと思います」
ヤン将軍「去るだと?」
「前にいた山寺に戻ります」
「許可できん。国が安定したら、私は大莫離支を辞める。その時―ー空席を埋めるのはそなただ」
「国のために大莫離支を続けてください」
「人の器はそれぞれ違う。私は政治家に向いていない。遼東の原で馬を馳せる時が一番幸せな男だ」
「将軍」
「ナムゴンよ、この件で希望を見つけた。健在なる民に頼もしい陛下。そして国のために団結する臣下もいる。私が大莫離支の位から、退くのが早いほど希望は大きくなるだろう。そのつもりで補佐するがよい。」
「将軍、褥薩様がお越しです」
「ブ・ギウォンが?」

ブ・ギウォン一行が、ナムゴン一行と鉢合わせ。
ブ「お忙しいですな、位頭大兄」
ナムゴン「将軍がお待ちです。良き座談となりますよう」

ヤン将軍に挨拶して、着席するブ・ギウォン。
「ナムセンが唐に忠誠を誓ったそうです」
ヤン将軍は、驚く。
「続く戦と飢饉で国は疲弊しきっています。そこにナムセンが唐軍として攻め込んできたら、ほぼ間違いなく敗北するでしょう」
「前置きはやめて、本論を申すがよい」
「ヤン将軍が大莫離支になったら、力の限り補佐します。その代わり―ーこの戦を防いでください」
「それは、私には決められぬ事だ」
「高句麗の大莫離支ならできるはずです」
「唐と和睦を結ぶのか?」
「和睦ではなく、戦の代わりに平和を選ぶのです」
「その平和は唐に頭を下げた代償に過ぎん」
「民のためなら、百回頭を下げても恥ではありません」
「民を守るつもりなら、戦って勝つべきだ。それが平和を勝ち取る唯一の方法だ」
「現実は違いますぞ、将軍」
「そなたこそ、現実を見据えるが良い。高句麗の真の平和は誰にも頼らず―ー高句麗の民が一つになった時にだけ得られる」
「それは、将軍の考えです。外交でも十分に平和は守れます」
「高句麗の平和など、唐の眼中にはない。彼らの望みは高句麗の滅亡だけだ。この和睦も高句麗を滅ぼす手段だと分からぬか。私は、五部家の権威と地位を尊重しておる。だが、そなたらのやり方については同意できん。下がるがよい」
ブ・ギウォンは何も言わずに、変な目つきで悔しそうに、にらんでいる。


イ・ヘゴとソル・ゲドウが椅子に座っている。
「シン公に従ってきたのは間違いだったかも。ブ大臣がヤン将軍を説得するのは無理だ」「もう少し待とう」
「そう言わずにまずくなる前に去ったほうが…」
ブ・ギォンとサブクが入ってくる。
「高句麗と唐の和睦は拒否されそうだ」
「さようですか」
「もしや、他に方法があるのでは? 両国の平和を妨げる―ー邪魔を排除する方法だ」
イ・ヘゴは、黙っている。
シン・ホンの声「何があっても、ヤン将軍暗殺を先に持ちかけては駄目です(シン・ホンの映像が挿入される)先に言ったら、和睦を口実とした将軍暗殺計画に気づかれるでしょう」
イ・ヘゴの顔。
「私は、ソリンギ将軍の志を伝える使者です」
「今夜私は、深く絶望させられた。将軍とは話が通じると思ったのに。サブク将軍」
「はい、ヨクサル様」
「ヤン将軍を消すぞ」
「ヨクサル様」
ソル・ゲドウが少しにやりとする。
「誰にも言うな。この事は我らだけで行うのだ。この私が、両国の平和に尽力している事をソリンギ将軍に伝えられよ」
イ・ヘゴは頷く。
「それと、平和の約束を必ず守ってもらいたい」
「(にやりとして)承知しました」

シン・ホンが一人で座っている。
立ち上がってじっと考える。

回想シーン。
ブ将軍が剣を抜く。
テ将軍も剣を抜く。
ブ将軍が掛け声と共に、切りつけ、切り結ぶ。
ブ将軍は剣をさかさまに持ち、テ将軍のほうを向き、テ将軍に剣で刺される。
木陰で見ているシン・ホンは、びっくり。
深手を負ったブ将軍。
テ将軍は、ブ将軍の剣がさかさまなのに気づく。
「なぜ…攻撃しなかった?」
「最後に、お前に―ー最後を見届けて欲しかった。済まない…高句麗を守る者は多いが、私の親を守れるのは―ー私しかいない」
「おい、ブ・ジグァン」
崩れるブ将軍を抱いて泣いているテ将軍。
「ジグァンよ」
それを見て、シン・ホンは子供を女の手から自分の手に抱く。
「子供は私が抱くので、さあ、早く」
逃げるシン・ホンと女。

シン・ホンは、我に返り、衝撃を受けた様子。
ナムセンが来る。
「シン公、何だか契丹族の様子が変だ」
「戦を控えているのです」
「我らに隠れて、何かを企んでいるようだ。何か心当たりは?」
「私には分かりません」
シン・ホンは会釈して、去る。
ナムセンは、取り残されて、わけが分からない。

ソリンギとポンペ。
「ええい、まったく…饅頭の味も分からん。親書を携えて行ったイ・ヘゴから連絡はまだないのか?」
「私の考えですが」
「お前の考えでは何だ? 親書が偽物だと気づかれたのです」
「何? 偽物だと?」
「将軍ではなく、私が代筆した物です。親書とは言えません」
「何だと、こら。親書に違いないぞ。言ったとおりに書いただろう?」
「さようです。ですが、私が代筆した物が、どうして親書ですか?」
「何を言うのだ? もういい、外で仕事をしろ。怪しからん奴」
「外の仕事はありませんが…」
「顔も見たくない。出て行け」
「落ち着いて下さい」
「落ち着けだと? たわけめ、何を言う? まったく…」
ポンペが、立ち上がり出て行こうとすると、シン・ホンと鉢合わせ。
「シン公、何事です?」
「将軍にお話が」
「ちょうど高句麗の事情が聞きたかった。ところで、なぜ李副将から連絡がない?」
「今すぐ、軍を移動なさい」
「軍を移動? 高句麗を攻めるのか?」
「遼河の西部までです。それで十分でしょう」
「長安からは、まだ何の連絡もないのに。そなたを信じて、軍を動かせだと?」
「相手を揺さぶるのです。今を逃せば、高句麗を滅ぼす好機を失います」
「あの…将軍、やはり陛下に知らせたほうが…」
「イ・ヘゴがそなたを信じろと、何度も言っておった。よかろう、そなたを信用しよう。今すぐ遼河へ行くぞ」
「将軍」
「心配するな、イジョク大ソウ管が私に強力な援助を約束なさったのだ(はははは)行くぞ」


平壌城の街中。
旗を立てて、騎馬兵が走りすぎる。
ぼろを着たフクスドルがあわててよける。
「乗馬の下手な奴め」

軍服姿の兵士とテ・ジョヨン。

ポジャン王「契丹が遼河の西部に陣営を?」
ヤン将軍「契丹軍は唐軍の先鋒隊です。先鋒隊が動いたら全面戦が始まります」
「来るものが来たか。早く大莫離支に就かねば」
「その前に遼東へ行って来ます」
「遼東へ?」
「コ・サグに遼東の総司令を任せましたが、この機に軍事編成を完結させます」
「平壌を空けても大丈夫か?」
「チ将軍、オン将軍、イ将軍らに任せます。心配は無用です。軍事編成さえ終えれば、敵は遼東も平壌も狙えなくなるでしょう」
「ヤン将軍が側にいてどんなに心強いことか」
「この戦をうまく凌げば、唐と言えどももはや高句麗を脅かせません」
ポジャン王は、嬉しそうに頷く。

兵士とテ・ジョヨンのところへ、スギョン姫が来る。
「ヤン将軍がお越しに?」
「そうです」
「民を集め、ヤン将軍の押送を止めたのは、テ副将だったとか」
「お恥ずかしい…それより、コム師範に我らを救わせたのは、姫様だと聞きました」
「大事を行う人に、微力を添えただけ」
「微力だなんて、とんでもない。姫様の機転がなければ、今頃どうなっていたことか」
「テ副将にそう言われると恥ずかしいわ」
「そう言えば、もう何度も姫様に助けられました。前に極楽寺でもそうでした」
「あの娘は元気ですか? チョリンでしたね。テ副将と安市城に逃げた―ー唐の間者です」
「ヨンジュへ帰りました」
「ヨンジュへ?」
「契丹の娘です」


安市城の牢獄。
チョリンがいる。
テ将軍たちが来る。
「前に捕らえた契丹の間者です」
テ将軍「女ではないか。聞こう。お前たちが遼河まで進軍した理由は? あの数では遼東は脅かせまい。なのに、何を企んで軍を移動させた?」
チョリン「我らは、ヨンジュの事は知りません」
テ将軍「知らぬ? 自国の事情を知らんだと?」
「本当です。取り調べは無駄でしょう」「黙れ」
「簡単には話すまい。泣きつくまで飢えさせろ」「はい、将軍」
テ将軍は去る。
テ将軍の弟「私がわかるな? ジョヨンの知り合いなら、間者ではないはず。将軍に話して釈放しよう」
「いいえ、前にも彼に避けられました。ここで待てば、知らん振りできないはず」
モゲ「お嬢様」「私は大丈夫です。あの人に話す事があります。それだけ話したら…」
「今ここへ向かっている。事情は知らんが、じきに会えるだろう」

ぼさぼさ頭のフクスドルが顔を出す。

お供をつれて、ヤン将軍が出てくる。
チャン・サネ「ようこそ、将軍」
ヤン将軍「皆いるか?」
「はい、どうぞ中へ」
コルサビウがふくろうの鳴き声に気づき、声のする方へ行く。

塀の外でふくろうの鳴き真似をしているフクスドル。
塀の内側で、コルサビウは首をかしげて、大きな石を持ち上げて、塀の外へ投げ落とす。石がフクスドルを直撃。

コルサビウ「バカ梟め、真っ昼間から泣きおって」
コルサビウは、歩き去ろうとするが、はっとして足を止め、塀を飛び越える。
倒れているフクスドルに気がつき、驚く。
「フクスドル、この野郎、おい、しっかりしろ、死んだか?」
石に付いた血に気づく。
「おい、フクスドル、フクスドル、しっかりしろ」

ヤン将軍「我らは、明日、遼東へ出発する。コム将軍は共に参れ」
「はい、将軍」
チャン・サネ「最近は物騒です。どうか、お気をつけて」
「大丈夫だ。平壌城の事を頼むぞ」
チ将軍「ここの事はご安心を」

頭に包帯をしたフクスドルが、頭を痛そうに押さえて目を覚まし起き上がる。
「いてて…お前…」
「気がついたか」
「お前だな? でかい石で…」
「戻るとは命知らずな」
「分かってる。ナムセンに騙された」
「黙れ、気がついたなら失せろ」
「待て(コルサビウを手で止める)行き場がないんだ。だから、何でもするから。追い出すなよ」
「大将軍が死ぬところだった。ナムセンを逃がしたせいで」
「俺もわかってるさ。それで、川に飛び込んで死のうとも思った。でも、死ぬにはこの力がもったいない。どうせなら、唐の奴らと戦わなきゃ。なあ、コルサビウ、とにかく、ヤン将軍が大莫離支になるなら怪我の功名だろ?(笑い)だから俺を引き取ってくれ」
「それはならん」
テ・ジョヨンが入る。
「我らの権限外だ」
「おい、ジョヨン。いや、テ・ジョヨン(頭を下げる)ここまで図々しく来た事情を察してくれ」
「上の方々が聞いたら、首が飛ぶぞ。さっさと失せろ」
「おい、テ・ジョヨン…、おい、ケドン」
「見つかったら危険だ、気をつけろ、それと、昼間に梟の鳴き真似はよせ」
「おい、この野郎、引き取らんくせに石投げやがって(頭を押さえて)いてて…」

ヤン将軍が出てくる。
「お気をつけ下さい」
物陰から一人の兵士が見ている。ヤン将軍が馬に乗る。
テ・ジョヨンとコム将軍も馬に乗る。


「出発したか?」「はい、今平壌を発ちました。明晩には烏骨城に着くでしょう」
「烏骨城?」「さようです。遼東へ行く途中にあります。逗留するはずです」
「では、そこでヤン将軍を殺すのか?」「ヤン将軍が眠った後、私が寝所へ入ります。そしてーひと思いに…」「失敗は許されぬぞ、しくじったら、私もお前も命はないのだ」
「重々承知しています、国を救うつもりで、ヤン将軍の心臓を狙います」
「行くがよい。そして、ヤン将軍の命を奪うのだ」
「はい、褥薩様(立っていく)」

馬に乗ったヤン将軍一行。

ものを食べながらフクスドルが歩いている。
「もう冬も近いのに、今日はどこで寝るかな…大莫離支、あの野郎のせいで…」
小屋の中に入る。


ソル・ゲトウ「今夜、烏骨城でヤン・マンチュンを…」
イ・ヘゴ「(口に手を当てて)しー。刺客どもは平壌城を発った。ヨンジュへの船はいつ出る?」「明日の昼だ」
「ちょうどいい、詳しい事情を書くからヨンジュへ送れ」
「ちょうど、今夜他の間者と接触するんだ」

夜。
ソル・ゲトウが梟の鳴き真似をしながら、人目を避けつつ人待ち顔で隠れ歩いている。
小屋の中で寝ていたフクスドルは目が覚める。
「まったくどこの梟だか…おや…これは人の声だ。もしや、コルサビウ?」
フクスドルも梟の鳴き真似をする。
ソル・ゲトウが入ってくる。
「もっと早く返事をしろよ。ヨンジュへ行ったらこの手紙を伝えろ。明晩、烏骨城でヤン将軍を暗殺する」「何? 暗殺?」
「待てよ、どこかで見た顔だが…お前所属はどこだ?」
「よく見ろ、この野郎」「この野郎? お前は…あの時の石頭…」
「何、石頭?(殴りかかる)言え、ヤン将軍を暗殺だと? 殺す前に吐け」
「苦しくて…言えるか…石頭め」「よしよし話せ、烏骨城でヤン将軍を暗殺するのは本当か?」
頭突きして逃げようとするソルの足を取って押さえ込むフクスドル。
「放せ、死んじまう」
かみついて、殴り、逃げるソル。追うフクスドル。
「止まれ、止まるんだ」「あの石頭しつこいぞ」
「こら、待たんかい、すばいこい奴め…待てよ、時間がない馬を盗んででも行かねば…」

唐・長安城
「どういうことだ? ソリンギが軍を率いて遼西へ?」
「今、ヨンジュから連絡がありました。間違いありません」
ウィスン「ヤン将軍が大莫離支になります。今、攻めてはなりません」
イメン「陛下、命令に背き、軍紀を乱したソリンギを厳罰に処すべきです
イジョク「陛下、ソリンギを問責するなら、私を処罰なさいませ」
唐の皇帝イ・チ「何を申すか、大ソウ管よ」
「遠征軍の総司令として私が、ソリンギに軍を動かせる権限を与えました」
「それは、なぜだ?」
「彼の能力を信じるからです」
則天武后「陛下、今度だけ、大ソウ管を信じてお任せ下さい」
ソリョンバン「そうなさいませ、むやみに軍を動かすはずはありません」
「まったくどこへ飛ぶか分からん、あのソリンギは」

遼河・契丹の陣営
ソリンギ「この遼河…昔、先帝陛下と共に、遼澤を渡ったのが昨日のようなのに。すでに20年も過ぎてしまった。その後も、何度か遼河を渡ったが、失敗を重ねるほどに、高句麗はどんどんー登れぬ大木となってしまった。とてつもなく高く恐ろしい大木にな」
ソン・マニョン「その大木の根元を切ってやりましょう」
「そうとも、今度遼河を渡ったら、死体となって戻るか、それとも高句麗を滅ぼして、新たな歴史を開いて戻るかだ」
契丹部族長「高句麗を滅ぼし、ヨンジュが契丹のものになったら、北方の歴史は変わります」
「その時は、将軍の御名が、唐と契丹、両国の歴史に刻まれます」
「ははははは、シン公よ、今頃は、ヤン将軍が烏骨城に着いただろう?」
シン・ホン「計画通りなら、烏骨城はヤン将軍の墓場となるでしょう」
「烏骨城がヤン・マンチュンの墓場か。ヤン・マンチュン、奴さえ死ねばよい。さすれば、北方の歴史は、この手で新たに書き換えられる。高句麗のヤン・マンチュンさえ消えればな」

兵士が整列して迎える。
「ようこそ、大莫離支」
ヤン将軍「大莫離支だなんて。今はまだ大模達だ」
「中へどうぞ」
「明日は夜明け前に出発する。準備を頼むぞ」「将軍」
「呼んでおいて何だ?」
烏骨城の城主が、何事か言いたそうだが、ためらっている。



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テ・ジョヨン31回目

民衆の声「ヤン将軍を釈放してくれ」
「釈放せよ」
ブ・ギウォン「何をしておる、命令が聞こえないのか? 早く射るのだ」
射手が弓をかまえる。
ヤン将軍「ならん、駄目だ、矢を射てはならん」
ヤン将軍が、檻車の中で立って叫んでいる。
「おのれ、ブ・ギウォンめ」
「早く射るのだ」
「射るな、民を射てはならん」
ナムゴン「やめい」
ナムゴンは馬をおりて、進み、射手のそばにいく。
ナムゴン「矢を下げろ、早く」
ブ「どういうつもりだ」
ナムゴン「民を解散できますか?」
「自国の民を自ら殺めるのは、反逆よりも重罪だ。ここから早く出せ」
ナムゴン「檻車を開き、大将軍を外へ」
サブクが目配せすると、手下が動いて、鍵を開ける。
ヤン将軍は、檻車を出て、民衆の前に進み出る。
民衆は大喜びで、喚声をあげる。
ヤン将軍「私がここへ来たのは、文武臣下が集まって、志を一つにまとめるためだ。しかし、何か誤解があったようだ。だが、心配は無用だ。いずれ―ー私の忠心は大臣たちに十分伝わるはずだ」
「我らも何が正しく悪いかは分かっています」
「今、皇宮へ行ったらお命が危のうございます」
「大将軍は私たちがお守りいたします」
「そうだとも、我らがお守りしよう」
「我らがお守りを」「きっと守りますぞ」
民衆ざわめく。
ヤン将軍「皆、話を聞くがよい。国論が二分するのは大臣のせいだけではない。民が朝廷を信用しないこと。これもまた国を滅亡に追いやる事だ。皆はこの高句麗の誇らしい民だ。今はこのヤン・マンチュンのことよりも、各自の持ち場をしっかり守る事が何より大事だ。皆がしっかりしている限り、この国もまた、簡単に傾いたりはしないだろう。陛下に会いに行かねばならん。さあ道を開けてくれ」
ナムゴン「馬にどうぞ。馬を引け」
民衆「大将軍、万歳、万歳、万歳」
民衆の間を、ヤン将軍とお供の武将が進む。

ポジャン王「本当か?」
スギョン「はい、聞きつけた民が体で檻車を止めました。今も民は松明を手に大将軍について来ております」
「驚くべき事だ。実に素晴しい」
「民もすべてを知りました。皆も将軍の処刑を主張できぬはず」
「いや違う。彼らは民を恐れない。将軍の処刑を主張するだろう」
「どうしたら良いのです?」
「朕が自ら出迎える」
「陛下」
「誰かいるか?」
「はい、陛下」
「今すぐ、鞠問場へ行く。準備せよ」
「承知いたしました」


松明の並ぶ大広場。
テ・ジュンサン達がいる。
テ・ジョヨンが来る。
「父上」
「ジョヨン、投獄されたと聞いたが」
テ・ジョヨン「コム師範のお蔭です」
テ・ジュンサン「とにかく良かった。だが大将軍はご無事だろうか?」
トルバル「心配要りません。大変な民の気勢です」
コ・サグ「民が目を光らせておる。ブ大臣も手を出せまい」
コム「太学へ行きましょう。平壌の武将が待っています」
「さあ、行こう」


皇宮前。
両側に兵士の松明。
ヤン将軍の後ろに、ナムゴン、ブ・ギウォン。
ヤン将軍「陛下、このヤン・マンチュン、ご挨拶申し上げます」
王「よく来た」
「私は政局を論じに参りました。陛下との面談を要請します」
ブ「陛下、将軍は皇命によって、押送された罪人です」
ケジン「さようです。すぐに投獄し、後に鞠問を開いて、罪を問うのです」
ソンギョム「陛下、お察し下さい」
「お察し下さい、陛下」
「その通り、将軍は謀反の疑いをかけられている。だが、まだ―ー何も明らかになっていない」
ブ「何をおっしゃいます」
「者ども、将軍を正殿へ案内せよ」
ケジン「陛下、反逆を企てた大逆罪人です」
「御自ら国法を破るのですか?」
王「真実が明かされるまで、誰も謀反などと口にするな。その判断は国王だけが持つ権限だ」
「ですが…」
「さあ、早く、大将軍を正殿へ」
ヤン将軍は進む。
ブ・ギウォンは苦々しい顔。



室内。
王とヤン将軍。
「朕には国王の資格などない」
「陛下」
「亡き大莫離支に導かれて、王となって以来、度も国王の権威や勇気を示せなかった」
「今まで、高句麗が存続できたのは、陛下が玉座を固く守っていたからです
「いいや、違う。無実の忠臣を守る力さえ、私にはない。無能な自分が情けない限りだ」「陛下…国が正しくあるためには、民の誇りが必要です。国がこうなったのは、臣下が悪事を平然と行ったからです。それを正すには、陛下がなさるべき事を正確に知るべきです」
「話してくれ、朕は何をするべきだ?」
「私ごときが、陛下の権能を述べることはできません。ですが、国を救う方法を問うのであれば、このヤン・マンチュン、命を懸けてお答えいたします」
「早く、早く申せ。国のために何をすべきだ? 早く高見を述べよ」
ヤン将軍の顔。


太学。
会議席上。
テ・ジョヨン「(入ってきて)今、大将軍が、客宮へ向かいました」
「客宮へ? では宮内で過ごされるのか?」
「そのようです」
「牢獄でないだけ、実に幸いです」
「油断は禁物です。客宮は離れた所にあります。危険なのは牢獄と同じです」
テ・ジュンサン「では、宮内には将軍を守る兵はいないのか?」
チャン・サネ「宮内に入れる軍は、サブクの都城守備隊のみです」
コ・サグ「では、どうすればいいのだ」
チ・ミンチュン「我らが行く」
オン・サムン「我らも平壌城の武将だ」
イ・ギウ「我らが入って大将軍を守ろう」
コ・サグ「でも、揮下の兵は少ないはず」
テ・ジョヨン「我らも行きます」
「ならんぞ、昨日脱出したばかりだ」
「変装してでもお守りしたいのです」
「でも見つかったら…」
テ・ジュンサン「連れて行かれよ。今は一人の兵力も惜しい時なのだ」
「どうか、ヤン将軍を守られよ、高句麗の運命は将軍にかかっている」
チ・ミンチュン「心配無用。死力を尽くします」

平壌城・アノ宮。
ケジン「どうも陛下の胸中が怪しい。一体二人で何を話したのか」
「大したことはないでしょう。丸腰で平壌に入った以上、簡単には出られまい」
ブ・ギウォン「相手は、ヤン将軍なのを忘れないよう。万が一、無罪放免されたら」
「無罪放免? 大将軍を許すと?」
「今からでも投獄して機先を制するのです」
「だが、陛下の厳命があるのだ」
サブク「宮内は都城守備隊が掌握しています。宦官を口止めすれば、陛下も知り得ませんえません」「そうだ、一理ある話だ」
ケジン「今、ヤン将軍を釈放するのは、怒り狂う虎を放つ事だ。高句麗を飲み込む程の大虎をだ」
「混乱を防ぐためにも大将軍を投獄せねば。今すぐやれ」
サブク「承知しました」
ケジン「ここまで来てヤン将軍を消せなければ、我らは報復されて皆殺されてしまう」
ブ「国の存亡がかかっています。死など恐れはしません」


サブクが兵士を連れてくる。
正面には、太学の平壌武将たち。
サブク「皆様、何用でここに?」
「そなたこそ、兵を率いて何用だ?」
サブク「皇宮内には兵を入れられません」
「だが、直属の上官を守る義務はある」
「ここは、私に任せて、速やかに退出されよ」
チ「無礼な。一介の模達が誰に命令している?」
「従わないなら、皆様を捕らえるしかない」
コム将軍が剣を抜き、皆一斉に抜く。
「戦闘が開かれるまで、命懸けで守るべきお方だ。我らを殺すか。それとも帰られよ」
「いつまで、そうできるか見ものですな。行くぞ」
サブクは、兵を連れて去る。


ヤン将軍とテ・ジョヨン、コルサビウ。
「将軍」
「私は決着をつけにここに来た。命が惜しければ、ここに来たりはせん」
「ですが、余りにも危険です」
「どの戦も危険でなかった事はない」
「今度は違います。何一つ有利な物はありません」
「隋や唐が大軍を率いて攻めた時も、今のように絶望していた。だが結局は我らの勝利だった。今度も同じだ。避けられぬなら正面突破しかない」
「ですが、将軍が…」
「私の命は問題ではない。この難関を越えられねば、高句麗は滅亡へ向かう。しかし―ーうまく越えれば、我らは新たな千年への機会を手にできる」
「今―ー機会と言いましたか?」
「将軍」




ナムゴンのところへ、シン・ソンが来る。
「ようこそ、居士様」
「何を考えていました?」
「ヤン将軍の処刑を座視するのですか? 鞠問を止められないのですか?」
「今、高句麗には、彼ほど力のある人物はいません。将軍に歓呼する民を見たはずです。ヤン将軍が民心を利用するなら、国は彼の手中に収まるでしょう。ですが、それは、国の安全のためには、正しくない事です。鞠問が終われば、あなた様は大莫離支です。今は慎重さよりも、果敢な決断力が必要です。亡き大莫離支の見せたあの決断力です」
「ナムセン兄上の消息は何も?」
「どこかの空の下をさ迷っているでしょう。ナムセンはお忘れ下さい。国の事だけでもやる事は山積みなのです」


長安城。
ナムセンとシン・ホン。
ナムセン「唐に来るんじゃなかった」
「なぜです?」
「高句麗討伐が始まる。奴らに利用されたら…」
「奴らが望めば、先鋒に立たされるかも」
「(ぎょっとして)何だと? 唐のために戦えだと?」
「お静かに。最初から兎死狗烹する計画です」
[兎死狗烹:狩りの後、不要となった猟犬を煮て食う事]
「狗(いぬ)の種類などは、関係ありません」
「シン公」
「ヨンジュの契丹軍でも唐の本軍でも、目的を果たせばお払い箱のはず」
「あの時は、私が大莫離支だった。唐の手先になって攻めるなどできん」
「大莫離支、今は感傷など不要です」
「感傷?」
「今、我らは何もできません。今の臥薪嘗胆も後日のためでしょう?」
〔臥薪嘗胆:志を成すため、さまざまな苦労を耐え抜く事〕
「小事のため大事を逃しかねません。我らの目標は、ナムゴンらに奪われた国を取り戻すこと」
ポンペがくる。
「皇帝陛下がお待ちです」


皇帝の玉座前。
ナムセンとシン・ホンが挨拶する。
皇帝「そなたの父と唐の間で、悪縁が長いこと続いている。その縁を断ち切る方法は、ただ一つしかない」
イジョク「陛下、ヨン・ゲソムンの息子が来たのです。悪縁を絶つ時が来ました」
「さようです。忠誠を誓わせ。官位を与え、高句麗滅亡の先鋒となさいませ」
「そなたに聞こう。朕の臣下となり、当に忠誠を尽くすと誓うか?」
ナムセン無言。
イジョク「陛下が聞いておられるぞ」
ソリンギ「ヨン大人、急に口が利けなくなったのか?」
「私は高句麗の大莫離支として、唐の皇帝に会いに来た。なのに急に忠誠を誓えとは…困惑するしかない」
ソリンギ、動揺。
「では、忠誠を誓わぬのか?」
「どんな官位を与えられても、高句麗の大莫離支には及ばぬ」
「貴様、父に似て、無礼極まりない」
イメン「陛下、今すぐ投獄なさいませ」
ウィスン「恐れ多くも陛下と皇室を愚弄しました。許してはなりません」
ソリンギ「しばし待たれよ。陛下、すべては私の落ち度です。長旅で、頭が朦朧としているので…」
「もう一度聞く。忠誠を誓い、臣下になる気はないのか?」
ナムセン無言。
ソリンギ「陛下、しばし時間を下さい。必ずや忠誠を誓い、陛下の忠臣となるでしょう。海のごとき、大恩を施し下さいませ」
「敵国の首将だったそなたが、簡単に忠誠などできまい。だが、朕の恩はただ一度きりだぞ」


ソリンギが、廊下をナムセンとシン・ホンをつれて歩いている。
「ヨン大人、何のつもりです? この私の首まで飛ぶところだった」
「忠誠を誓うなど聞いてない」
「では、只で唐の大軍を使う気でしたか? やれやれまったく…何と取り引きに疎い事か。ヨン大人、言葉で千両の借りを返すと言う。一言の誓いで大軍を得られるのに、何ゆえ拒否なさる?」
「主人の胸中は複雑です。落ち着き次第、陛下にお会いしましょう」
「そんな事はない」「大莫離支」
「いくら困窮しても、高句麗を滅ぼす事はできん」
「ならば、ヨン大人は生きて皇宮から出られませんぞ」
「覚悟の上だ」
「何?」「大莫離支」
ポンペ「(駆け寄って)将軍、皇后殿から使いが来ました。皇后陛下がお呼びです」
「皇后陛下が? 私が来たと聞いてすぐお呼びとは、ははは、行くぞ(歩き出す)」
ポンペ「将軍ではなくて」
「(振り向いて)私じゃない?」
「ヨン大人をお呼びです」
シン・ホン「(小声で)お会いなさい」
「話す事などない」
「大変な事を起こした今―ー皇后まで拒否しては、生きて出られません」
ナムセンにらむ。


皇后殿。
ナムセンとソリンギ、シン・ホン。
「陛下の御前で忠誠を拒否するとは、さすがヨン・ゲソムンの息子らしい」
「私を呼んだ理由は?」
「私は一度狙ったものは必ず手に入れる。幸い貴殿は私の関心内にいる」
「だが唐のために高句麗を攻めたりはしない」
「そうこなくちゃ。忠誠も恋情も、簡単に換えられるなら男子の心とは言えまい」
「話は終わった。帰ります」
「高句麗が滅ぶのはもう決まった事」
「違う。私と弟が国を乱したが、私がいなくても問題ないはず」
「だがヤン将軍がいないなら?」
一同びっくり。
「何の話です? ヤン将軍がいなくなる?」
「問題が起きた。今は大逆罪人とされている。そなたが脱出したせいで、最後の望みの綱ヤン将軍が死ぬ事となった」
「そんな…ヤン将軍が…」
「高句麗が滅んだら、その一等功臣はそなたに他ならん。ヤン将軍があの様では、高句麗は持ち堪えられまい」
ソリンギ「皇后陛下、それが本当なら、早く事を進めましょう。今すぐ高句麗に攻め込み、決着をつけねば」
「当然です。ヤン将軍が処刑された瞬間、全唐軍が高句麗を攻める。堪えよ。滅び行く国を見守るか、唐に忠誠し、新たな歴史に参加するか、そなたの選択次第だ」
「大莫離支」
ナムセン驚愕。



民が座り込んでいる。
「ヤン将軍を釈放してくれ」
「ヤン将軍は無罪だ。釈放を」
「ヤン将軍を釈放してくれ」
大勢の民が集まって、宮殿のほうへ動いている。
ブ・ギウォンの声「もう座視できません」
五部家の会議室。
「釈放を求める民が増え続けています」
ケジン「さらに増える前に、蹴散らさねば」
「ですが、むしろ民を煽る事になるのでは?」
サブク「甘やかせば、増長するのが民なのです。国のためにご決断を」
ナムゴンは、思案顔。
ケジン「今すぐ強制解散させるよう命令なさい」
ためらうナムゴン。
ブ「歯がゆいですな。いかがなされた?」
シン・ソン「権力掌握は目前です。迷いは禁物」
兵士「(入ってきて挨拶する)陛下がお呼びです」
ナムゴン、立っていく。
ブ「最近、ナムゴンの様子がおかしい」
「そなたもそう思うか?」
ケジン「ヤン将軍が押送された時からだ。鞠問の予定も延期されておる。我らにとって、事が不利に運んでいるのだ」
ブ「サブク将軍」
「はい、褥薩様」
「今すぐ、兵を率いて、民を追い払え。抵抗する者は消すのだ。何人か殺せば散り散りになる」
「はい、仰せのままに」
「ナムゴンばかり、期待できません。民を解散させたら、ヤン将軍を投獄します」
ケジン「そうだ、ヤン将軍を消したら、いっそ、そなたが大莫離支になるのだ。ナムゴンよりそなたが適役だ」
「さようです。では、今から―ー手筈を整えた方が…」
「そうだ」
ブ「民のためならば、恐ろしく辛い道でも甘受しましょう(目を閉じて)国民のためならば…(目を開けて、頷く)」

宮殿の前に、大勢の民が座っている。
サブクが兵を連れて、門から出てくる。
テ・ジュンサン、コ・サグ、チャン・サネが民の間にいる。
サブク「歯向かう者は皆殺せ」
「はい。解散だ、皆帰れ」
サブクの合図で、兵士が民にとびかかり、殴りつける。
テ・ジュンサン「やめろ」
子供「殴らないで」
テ・ジュンサン「剣を捨てろ、武力で対抗するな」
コ・サグ「やめろ、やめるんだ」
トルバルを止めるテ・ジュンサン。
「気は確かか? 民が死んでいくぞ」
コ「放せ、早く民を止めろ、早く帰れ、帰るんだ」
「皆帰るんだ」
サブクの勝ち誇った笑い顔。

ヤン将軍「今、外で聞こえた悲鳴は? なぜ答えぬ? 何事だ?」
テ・ジョヨン「外にブ・ギウォンが来ています」
「ブ・ギウォンが? 通せ」
ブ・ギウォン「実に大胆な奴だ。遠くへ逃げたと思いきや、皇宮内にいたとは。(ヤン将軍のほうを向いて)何を頼みしているかと思えば、頼もしい部下をお持ちですな」
「何用で来た?」
「民との間に流血沙汰が起きました。ですが、まだ終わってません。民が再び集まり始めました、あなたを救うために。今すぐ、外の武将を解散させ、牢獄にお入り下さい。さもなくば、将軍のせいで民は皆死ぬでしょう。これ以上、悲劇を生じさせないように」
ヤン将軍「外に注意しろ。二人とも近くに座れ」
テ・ジョヨンとコルサビウは、ヤン将軍の近くに座る。
「これから話す事をよく聞け。私は、ここに来る時、大きな絵を描いていた。高句麗を救う巨大な計画だ。だが予想外に事の進展が早い。今から二人に手伝ってほしい」
テ・ジョヨン「どうか、命令を」
コルサビウ「何でもやります」
ヤン将軍が話している。

ブ・ギウォンとサブクが兵を連れてくる。
ブ「逮捕せよ」
サブク「はい。行くぞ」

ヤン将軍の会議。
「皆、ここから撤退しろ」
「命令の取り消しを。最後まで将軍をお守りします」
「私のせいで、民を死なせられるか。ここは私に任せて、皆帰れ」
オン・サムン「でも我らまで帰っては…」
「私にも考えがあるのだ」
チ・ミョンチョン「考えと言うのは一体…」
「この危機を脱する方法ですか?」
コム「ご説明下さい。さもなくば、将軍を置いて帰れません」
サブクが兵を連れてはいる。
サブク「無礼をお許し下さい。大将軍を牢獄へ。こちらへ」
「将軍、将軍」
「将軍」
「将軍、将軍」

王とナムゴン。
王「大将軍まで投獄したそうだが」
ナムゴン「申し訳ありません」
「何を考えておる? 大将軍を処刑する気か?」
「平壌と遼東のどちらかが折れるべきです。そうしてこそ、国論がまとまります」
「それで、国論統一のため、将軍を殺すのか?」
「戦も政治も、生き残った者が勝ちです。誰が見ても、今は大臣たちが勝者です」
「まだ、どちらかは分からん」
「どういう意味です?」
「大臣たちは信用できん。彼らは言葉が多すぎる。だがそなただけは信じたい。不世出の英雄ヨン・ゲソムンの息子だからだ」
「陛下」
「彼は、口先だけの忠誠ではなかった。行動せぬ忠誠は錆びた矢より役に立たぬと言った。下がるがよい。もう朕も考えをまとめたい


ナムゴンたちが宮殿から出てくる。
宮殿の前で、殺された民を嘆く人々。
シン・ソン「お連れしろ」
「はい」
馬に乗ろうとするが、やめて、歩くナムゴン。
物陰にテ・ジョヨンとコルサビウ。
テ・ジョヨン「頼んだぞ」
コルサビウが行く。


牢獄。
ヤン将軍がいる。
声「必ず成功させろ。高句麗の運命がかかっているのだ」
テ・ジョヨンの顔。

コルサビウが塀を飛び越える。
俵に火をつける。

兵士「火事だ、火事だぞ」
「火事だ、火を消せ、火事だぞ、消せ」

テ・ジョヨンが家の二階に忍び込んでいる。
火を消す兵士たち。

ナムゴンとシン・ソンがくる。
シン・ソン「何事だ、騒がしい」
「火事がありました」
「家の内外を厳重警備せよ」
「はい」
「もうお休み下さい」
「では明朝に」

部屋に入ろうとするナムゴンにテ・ジョヨンの刀が突きつけられる。
ナムゴン「貴様は…」
テ・ジョヨン「殺めるつもりはありません。しばし時間を下さい」
「貴様には寸刻も惜しい」
「私は、ヤン将軍の言葉を伝えに来ました」
「まずは、剣を下げろ」
テ・ジョヨン、剣を下げる。
「申せ。将軍は何とおっしゃった?」
「その前に、信用できるか確かめないと」
「将軍には非業の死を遂げさせたくない」
「ならばこんな事を起こさねばいいものを」
「時代の大勢に従ったまで」
「和睦を云々し、私服を肥やす事が?」
「高句麗の命運が私の双肩にかかっている。これこそが大勢なのだ。さあ、将軍の伝言を言え」
「私は、あなたを信用できない」
「入った以上、ただでは出られんぞ」
テ・ジョヨンは剣を突きつける。
「私もただでは帰りません。あなた様が本当に国を導く方なら、皇宮外で死んだ民を無視できないはず。将軍のお話のうち一つだけ話します。胸に手を置いてお考え下さい。あなた様が果たして国のために何をするべきか、民のために何をしてはいけないか、慎重に、そして謙虚にお考え下さい」
ナムゴンは、はっとする。
「もっと話せ、将軍は他に何とおっしゃった?」

テ・ジョヨンが門から入り、中へ進むとテ・ジュンサン将軍がいる。
テ・ジュンサン「コルサビウに聞いた。どうだった? ナムゴンの説得に成功したか?」
「最善を尽くしましたが、どうなるかは…」
「お前が赤子だった頃、将軍はわが家族を助けるため、死をも厭わなかった。だが今の我らに将軍のためにできる事は何もない」
「もし、将軍が亡くなられたら、すべては私のせいです。私が将軍の命令を全うできなかったからです」
テ・ジュンサン「「人事を尽くして天命を待つ」最善を尽くしたのだ。後は天命を待つのみ」
「父上」



ヨンジュ。
部族長「ヤン将軍が殺される?」
「さようです、可汗、じきに唐から数十万の大軍がヨンジュに来ます」
「何? 数十万の大軍が?」
ソン・マニョン「ソル将軍とナムセンは?」
ソル・ゲドウ「こちらに向かっています」
「では、忠誠を誓ったのでしょうか?」
「ナムセンも仕方なかったようだ。ヤン将軍まで死ねば、高句麗はそれこそ木っ端微塵だ」
イ・ヘゴ「大戦が起きるでしょう」
「軍の様子は?」
「すでに我が軍は臨戦態勢です。命令さえ下れば、すぐにでも高句麗を攻められます」
「もうすぐだ、高句麗を滅ぼせば、我が契丹がヨンジュの主となるのだ、ははははは」



イ・ヘゴとソル。
「安市城の情報は?」
「商人を通して聞いたけど、どうも捕まったようだ」
「捕まる? チョリンが?」
「安市城に契丹の間者がいるそうだ。誰かは明白だろう?」
イ・ヘゴあせる。
ソル「今は救出にも行けないし。俺を送ればよかったのに。モゲの馬鹿野郎が…」

牢獄にチョリンとモゲ。
食事を持った兵士が握り飯を差し入れる。
チョリン「平壌の消息はまだ何もないのか? 前に捕まった使者は? テ副将はどうなった? 頼むから答えてくれ。頼む」
モゲ「お嬢様、今は奴の心配より、ご自身を心配するべきです」

王の前に引き出された、罪人の衣服で縛られたヤン将軍。
周囲には大臣と兵士たち。
ブ・ギウォン「このブ・ギウォンが陛下に申し上げます。大逆罪人ヤン・マンチュンは数度皇命に背いた上、ナムセンの謀反を助けました。これに五部家と大臣たちの意見は一致しました。陛下は斬首を命じて処罰なさいませ」
武装したテ・ジュンサンやコムらの武将は動揺する。
ケジン「斬首をお命じ下さい、陛下」
「斬首をお命じ下さい、陛下」
王「昨今の高句麗は、下手をすれば滅亡し得る国家の非常事態にある。それゆえ、国を救い、民を助けるために何をすべきか考えた。文武臣下は聞け」
「はい、陛下」
「大模達ヤン・マンチュンを、今より―ー高句麗の大莫離支に任命する」
ブ・ギウォンびっくり。
ケジンは口パクパク。
サブクびっくり。
テ・ジョヨンもびっくり。
ヤン将軍は、動じず。


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テ・ジョヨン30回目

ヤン将軍「貴様、サブクめ、おのれ…! 国を潰すつもりか。平壌と遼東が協力しても大変なのに、真っ二つにする気か。それでも高句麗の大臣と言えるのか?」
サブク「私は、陛下の皇命を遂行するのみ」
「何? 皇命?」
「皇命に背かないように、ナムセンのお引き渡しを。遼東と平壌が分裂するかどうかは、大将軍のご決断次第ですぞ」


チョリンが、人待ち顔。
モゲ「(かけよって)お嬢様」
チョリン「どうだった?」
「平壌城で投獄されたのはテ・ジョヨンです」
「では、ナムセンとジョヨンを交換か?」
「まだ分かりません」
「今の遼東はナムセンを渡しづらいだろう。ナムセンを監視するぞ」
モゲはうなずく。


フクスドルが門から入り、歩いている。
「大莫離支と話がある」
兵士に制止される。
「入れません」
「何? この野郎(つかみかかろうとし、槍を向けられる)捕まえたのはこのフクスドルだ。なのに入れんだと?」「何事だ(姿を現す)フクスドルか」
フクスドル「将軍、大莫離支に会わせて下さい。平壌へ押送されると聞きました。これが最後です。一目会わせて下さい」「ならん」「将軍、あの方を思うと、寝ていても涙が出ます。主として仕えたのに、この手で捕らえました。将軍…どうか一目会わせて下さい、将軍、一目だけ、顔を見るだけです」
トルバル、うなずく。


ナムセンが部屋の中で座っている。
フクスドルが入ると、ナムセン立ち上がる。
「フクスドル、本当によく来てくれた。サブクが来たと聞いて、お前を呼ぼうと思った。色々考えたぞ、お前の裏切りも、全部許せる。もう過ぎた事だ。今後どうするか、話す事が山ほどある」
フクスドルは、短剣を抜く。
「だんな様は、戦乱で親を失った―ー私を拾ってくださいました」
「な…何をする?」
「だから、この命が尽きるまで、大莫離支にお仕えし、大莫離支のために死ぬ気でした。でも、私は大莫離支を裏切りました。大莫離支に悲惨な死に方はさせません。お命を奪ってから、私も後を追います。大莫離支の最後の誇りを、私がお守りします」
ナムセン「(テーブルを叩き、立つ)貴様、お前は違うと思った。いくら何でも状況を知らなさすぎるぞ」
「(考える)何をです?」
「私が死ねば、国はブ大臣とナムゴンの物だ。武将は軽んじられ、唐に滅ぼされるのも時間の問題となる。一時の失敗で、大逆罪を犯した。しかし―ー今の私に必要なのは、死ではなく機会だ。機会が与えられれば、父上の成した栄光を、もう一度示せるだろう。フクスドル、私の最後の誇りを守るなら、私を殺すのではなく、ここから出すのだ。私に機会を与えられるのは、ヤン将軍でも陛下でもない。目の前にいるフクスドル―ーお前という事が分からぬか。信じられないなら、今この場で殺せ。その手で、高句麗の未来も潰すがいい。早く殺せ、早く」
「私には、政治なんか分かりません、一つだけ、一つだけ聞きます。唐を滅ぼす自信はありますか? 唐を滅ぼして、この国と私の親兄弟の恨みを晴らす自信は?」
「このナムセン以外―ー高句麗の地でそれを成せる者はいまい」
「信じます。このフクスドル、もう一度、大莫離支を信じましょう」
ナムセンの目に涙。

フクスドルが出てくる。
「済んだら帰られよ」
一瞬の隙をついて、番兵を倒すフクスドル。
「大莫離支、大莫離支」
ナムセンが出てきて、一緒に逃げる。
「ナムセンが逃げるぞ」
次々に倒して、フクスドルが道を開き、門から、ナムセンと二人逃げる。
「罪人が逃げた、追え」
「待て、待つんだ」
「捕まえろ、待て」
逃げる先は、塀で、行き止まり。
フクスドル「(剣を抜き)近づいたら殺すぞ」
その隙に、ナムセンは塀を越える。
フクスドルも続く。
「すぐ追え、逃がすな」
迂回して、追う追っ手。
「待て、逃がさんぞ、追え。逃がすな」
道端に潜んでいたチョリンとモゲが、立ち上がって姿を現す。
モゲ「ナムセンが逃げました」
チョリン「逃がしては駄目だ」「なぜです?」
「奴が逃げたら、テ・ジョヨンが危ない」「お嬢様」
「駄目だ、逃がさん」「正気ですか?」「口を出すな」


トルバル「(手振りをして)向こうへ行け、ついて来い」
兵士たちは、二方向へ追っていく。
角にあるわらの囲いから、ナムセンとフクスドルが姿を現す。
兵士たちのきた方向へ、逃げるフクスドルとナムセン。
チョリンが、追っていく。

開けた場所。
ナムセン「待て、少し休もう」
「夜明け前に、城を出ないと」
「分かってる、少しだけ…」
「ところで、今どちらへ? まさか行き場がないのでは?」
「うわっ」肩を抑えてうずくまるナムセン。
「大莫離支、大莫離支」
「(手裏剣を抜く)大丈夫だ」
フクスドルが振り返ると、チョリン。
「何者だ?」「行かせないぞ」
「先にお行き下さい。奴を倒して行きます」
ナムセン逃げる。チョリン手裏剣を投げるが、フクスドルが剣のさやでうける。
「この俺が、こんな奴とまで戦うとは。女じゃないか」
チョリン剣を抜き、打ち合う。
「やるな、女でも容赦はせん。覚悟しろ、早く立て」
モゲが、劣勢なチョリンを守り、フクスドルにかかる。
「何だ、この不細工は」
「お逃げ下さい」
トルバルたちが来る。
「おい、あそこだぞ、逃がすな、捕まえるんだ」
フクスドルは逃げる。
兵士たちは、チョリンとモゲを取り囲む。


逃げるナムセンは、馬に乗ったシン・ホンに助けられて、逃げる。
「シン公ではないか」「早くお乗り下さい」
フクスドルの声「大莫離支、大莫離支」
フクスドルが、遠くに現れる。
「時間がありません、早く馬に」
「大莫離支、待ってください、大莫離支、待ってください、大莫離支、私を捨てるのですか、大莫離支、あの野郎…大莫離支だろうが殺してやる、あの野郎」

ヤン将軍「何だと? ナムセンが逃げた?」
「もう城外に逃げたようです」
「現場で捕らえた者は?」「ナムセンとは無関係の唐の間者です」
コ・サグ「ナムセンがいなければ、平壌は決して我らを信じないでしょう」
テ将軍「サブクに気づかれる前に、対策を立てねば」
「ム・ヨム」
「はい、将軍」
「先に平壌へ行け。事情をしたためた手紙を陛下に伝えよ」
「ナムセンの脱出を平壌に知らせるのですか?」
「ブ大臣がこの事を利用して、姦計を企てるでしょう」
「間違えば、ジョヨンが殺される。まずジョヨンを助けねば」
テ・ジュンサン動揺。


「ナムセンの脱出が平壌に知られてはならん」
「ですが、大将軍の決意は固いようです」
「大将軍の話は原則論に過ぎない。このままでは、遼東はブ大臣の手中に入ってしまう」「どうしましょう? 手紙は伝えないと」
コ・サグ「平壌へ行く必要はない。今から、私が先頭に立って、難局を打開する」
テ・ジュンサン「将軍、命令に背く気ですか?」
「反対者はこの計画から抜けろ。それと、私の志に従う者は、揮下の兵を率いて集まれ。じきに重大決断を出す」「将軍」
「ヤン将軍を助け、遼東を救う事なのだ。そなたも協力せよ」



サブク一行と、コ・サグ一行が対峙。
「ナムセンの脱出は本当ですか?」「さよう」
「一体何を企んでおられる?」「企む?」
「最初は反逆を防いだと言い、今度は逃げたと言って、引き渡しを拒否するか?」
「事実なのだから、仕方がない」
「結局―ー引き渡す事はできない、と言う事ですね」
「渡さないのではなく、できんのだ」
「では、代わりに大将軍を押送します」「貴様、気は確かか? ここをどこと心得る?」「言葉が過ぎますぞ。私は皇命を受けた使者です」
「黙れ、者ども、奴らを捕らえよ」
「はい」「これが、どういう意味かお分かりか?」
「濡れ衣を着るくらいなら、奸臣を一掃し、まともに反乱を起こしてやる。者ども、こいつらを捕らえろ」「将軍」「捕らえろ」「(引き立てられていくサブク)将軍、将軍」

歩き回っているヤン将軍。
コ・サグたちが入る。
ヤン将軍「皆の者、その姿は何事だ?」
コ将軍「遼東は今逆賊とされております。もはや、平壌との対話は無駄です」
テ将軍「高句麗を守るための最終手段です」
「最終手段?」
「すでに我々の意見は一致しました。ブ大臣ら奸臣どもを一掃します」
「将軍、遼東の兵力を集結させました。大将軍の命令さえ下れば、このまま平壌へ攻め込みます」
「わが遼東が平壌城を討つだと? 高句麗と高句麗が戦争を起こす? 内戦を起こす気か?」「将軍」「気は確かなのか? 国がこの有様なのに、平壌を討つだと?」
「国のために選んだ苦肉の策です」
「ブ大臣も同じ事を言った。皆、国のためといって、私欲を満たしておる」
「ですが、我らは忠心からした事です」
「結果は同じ、国に害を及ぼすだけだ。ブ大臣の言う反逆の徒と何が違うのだ?」
「将軍」「我らの剣と弓矢は外敵を防ぐためで、同族で殺し合うための物ではない」
「国が傾いています、手を拱(こまね)いて入られません」
「政治は、陛下と大臣たちに任せればよい。文武臣下が各自の役目を果たしてこそ、民は安心して暮らせるのだ。いますぐに、兵を解散させろ。そして、またこんな事が起きたら、その時は、そなたを決して許さんぞ」
「すでに手遅れです。使者を皆投獄しました」
「何だと? 皆…正気でないのだ(後ろを向いてテーブルを叩く)」
「どんな罰も甘んじて受けます。しかし―ー今ではありません。平壌の奸臣を一掃し、高句麗を立て直した後で、首を差し出しましょう」
「(じっと見つめる)ジュンサンよ」「はい、将軍」
「今後、この安市城は任せるぞ」
「どういう意味です?」
「見たところ、私は大きな罪を犯していた。わが高句麗が、この私のせいで潰れかけていた(泣く)」「将軍」
「ブ大臣の言うとおりだ。私こそが大逆罪人なのだ。高句麗の国論を分裂させ、謀反を煽った張本人は、このヤン・マンチュンだった(絶叫)」「将軍」
「使者たちをここへ。そして、罪人を縛る縄で、私を縛れ」
テ将軍「将軍、何をおっしゃいます」
「そなたまで、私に背くか」「将軍」
「早く私を縛れ、平壌へ行くぞ。そして、謀反を煽った罪を告白し、斬刑を以って、民に謝罪しようぞ」
コ・サグ「将軍、将軍(ひざまずいて、手を突く)申し訳ありません、どうかお許しを」
「将軍、平壌へ行ってはなりません(ひざまずく)」
「お許し下さい、将軍、お許し下さい(全員ひさまずく)お許し下さい、将軍」


ヨンジュ。
ソリンギ「何? ナムセンが来た?」
ポンペ「はい、今、客舎で待っています」
義弟「ヨンジュは、高句麗討伐の前哨基地です。万が一、奴が戦の準備を目にしたら…」イ・ヘゴ「もはや、窮地に追われた身です。報告などはしないでしょう」
「イ副将の言うとおりだ。高句麗からは捨てられたが、唐にとっては、千軍万馬のように大事な存在だ」
部族長「かつての大莫離支、ナムセンが投降するとは…あの大物がですぞ、これこそ大事件です」
「そのとおり、文字通り、一大事ですな。あの強国、高句麗がついに崩れ始めたのだ」

ナムセンとシン・ホン。
「言われるままに来たが、気乗りしないな」
「再起できる唯一の方法です。これからは、慎重に踏み出すのです。一歩間違えば、薄氷のごとく粉々になります」
イ・ヘゴが来て、ナムセンと、シン・ホンは立ち上がる。
イ・ヘゴ「大人、来るまで大変だったでしょう。すぐに歓迎の宴会を開きます」
ソル「まずは、着替えをどうぞ」

宴会場。
「今夜は、思い切り召し上がって、休まれよ」
ナムセン「ここまで厚遇されて、身に余る光栄です」
ソリンギ「とんでもない、高貴な方にお会いでき、こちらこそ光栄です。ところで、ここまで来るのに、さぞ大変だったでしょう」
「お恥ずかしい限りです」
「そんな事はない、私も何とか命を取りとめて、ここに逃げ込んだ事があった。その時は、今のあなたよりずっと悲惨な有様でした」
「さようです。空腹のあまり、他人の馬小屋の餌を盗み食いしました。将軍たら美味しそうに」
「こらこら、ポンペ、無駄口を叩くな。饅頭でも持って来い(憮然とした顔、咳払い)生きていれば、誰にでも苦節はあるものです。どうか、このヨンジュが、あなた様の再起の足場となれる事を願います」
「感謝します。今日の歓待は決して忘れません」
「とんでもない、我らこそ、あなたへの期待が大きいのです」
「期待ですと?」
「隠すこともあるまい。もうじき、高句麗討伐を開始します。その時は、助力をお願いしますぞ」
ナムセン「(ぎょっとして)やむを得ずここに来たが、一度も自分が大莫離支である事を忘れなかった。なのに、高句麗討伐に力を貸せだと?」
「大人、何を申されるか、我らは味方だと思っていたのに違うのか?」
「誤解があったようだ。ここに来たのは…」
「おやめ下さい、まだ疲れも残っています。政治的な話は後でもいいでしょう」
「そうです、この場では控えましょう」
「舞姫でも呼べ」「さあさあ、一杯飲みましょう、杯を取りなさい。ぐっと飲みましょう」
一同杯をあける。


長安城。
「ナムセン? ヨン・ゲソムンの息子が?」
「さようです、そのナムセンがヨンジュに投降しました」
「実に驚くべき事だ」
則天武后「陛下、彼をここに押送なさいませ。ここに呼んで、陛下に忠誠を誓わせます」「何と…忠誠の誓いを?」
「はい、陛下、それなりの位を与え、高句麗討伐の先鋒を任せます。ナムセンは、高句麗の象徴的な人物、攻撃する側もされる側も、血より先に涙を流すでしょう。血の涙をです」
「実に素晴しい案です」
イメン「高句麗の滅亡が目に見えるようです」
「ですが、ナムセンは自尊心が強いと聞きました。忠誠の誓いは難しいのでは?」
則天武后「私に任せなさい。誓わざるを得ないようにしてやる」
皇帝「それより、平壌城の様子は?」
「報告によると、ヤン・マンチュンが平壌へ向かっています」
「高句麗に嵐が吹き荒れそうです」
「嵐だと?」
「ブ大臣らにとって、ヤン・マンチュンは目の上のこぶです。この機に彼を殺そうとするでしょう」
「ヤン・マンチュンを殺す?」
「さようです、今までの様子から、今度は、ただでは済みますまい」
「ヤン・マンチュンのいない…遼東か…」
皇后「それこそ、閂(かんぬき)のない門です、違うか?」
「そのとおりです」
「それに、戦まで起これば、対内外ともに大打撃でしょう。それに耐えられる国はありません」
皇帝「ヤン・マンチュン…ついに高句麗の柱は総崩れか。ヤン・マンチュンを消すか…」



ヤン将軍を先頭に、馬で進む遼東勢の将軍一行。

牢獄。
テ・ジョヨンとコルサビウ。

チョリンとモゲ。

臣下たち。
ケジン「ヤン将軍自ら、平壌へ来るなんて、ナムセン脱出は本当のようだな」
ブ「とにかく天が我らを助けたのです」
ソンギョム「天が我らを助けた?」
「この機にヤン・マンチュンを消すのです。ナムセンとの謀反共謀を、ヤン将軍処刑の名分にしましょう」
ナムゴン「だが、将軍の潔白は天下の知るところだ。民をいかに騙すつもりだ?」
シン・ソン「大莫離支、真実と現実は違うもの。ヤン将軍がいる限り、唐との戦は絶えません。平和のためには、ヤン将軍を消すべきなのが高句麗の現実です」
「ヤン将軍が平壌に着いたら、大模達ではなく、大逆罪人として扱います」
「やれやれ、早くヤン将軍を消していれば、国政もここまで悪化してはいまい」
「まったく…」



ポジャン王「ヤン将軍が、なぜ大逆罪人なのだ?」
ケジン「謀反を企てたナムセンを逃がしました。これこそ、謀反に他なりません」
ブ「国法で厳しくお裁きを。さもなくば、国の紀綱は乱れる一方です」
「すぐに官職を剥奪し、処刑するべきです」
「陛下、お察しくださいませ」
「お察しくださいませ、陛下」
王、悩む。


スギョン姫が身軽な格好で歩いてくる。
チャン・サネ「ようこそ、姫様」
「コム師範はおいでか?」
「さあ、どうぞ中へ」
周りを見回してから、門を閉めるチャン・サネ。

室内。
スギョン姫「臣下の強要に勝てず陛下は、ヤン将軍の逮捕を命じました」
コム「存じております」
「陛下は、将軍が来るのを望んでおられません」
「部下たちが引き止めても無駄でした。使いを送って止めても無駄でしょう」
チャン・サネ「ヤン将軍はそういうお方です。自身に起こる事を知ろうとも動じません」
「テ副将なら将軍を説得できるはずです。今、皇宮の地下牢にいます。テ副将が陛下の意を伝えたら、ヤン将軍も考え直すでしょう。コム師範がテ副将の補佐を。今はその方法しかありません」
「ですが、彼らは皇宮の地下牢です」
「知り尽くしているところだから、むしろ簡単かも知れません」


兵士が警備している。
コムが黒ずくめの姿で、潜んでいる。
覆面をして、兵士を次々に倒す。

地下牢に潜入するコム。
テ・ジョヨンの牢から、兵士がちょうど出てくるところ。
コムは、兵士の頭を殴って、テ・ジョヨンたちを救出する。
コム「早く、後苑へ行け。鍵は開けておいた」

逃げるコム、テ・ジョヨン、コルサビウが立ち止まる。テ・ジョヨンとコルサビウは、来た方向へ引き返す。コムは追っ手の兵士に告げる。
「罪人が脱獄した。離宮の方へ行け」
兵士は、コムの指し示す方向へ行く。
テ・ジョヨンとコルサビウが現れて、コムと一緒に逃げる。




ナムゴンと、ブ、シン・ソンが馬に乗り、その後ろには罪人を入れる檻。
テ・ジョヨンとコルサビウ、コムが街角に現れ、ナムゴン一行を隠れて見ている。


太学。
チャン・サネ「ヤン将軍は、檻車に乗って来るそうだ」
コルサビウ「座視など出来ません」
コム「もう遅い。ヤン将軍を迎える軍が出発した」
「もう救えないのですか」
コムが無言で机を叩く。
テ・ジョヨン「方法があるにはある…」
一同注目。
「このまま皇宮へ入ったら、将軍を救う道は完全に閉ざされます」
コム「今、我らには軍も何もないのだ。どうやって防ぐ?」
「今から、話をよく聞いて下さい。まずは、協力者をすべて集めるのです」

ヤン将軍一行の前に、ナムゴンたち。
にらみあい。


室内。
ヤン将軍に赤い巻物が渡される。
ブ「陛下の勅書です。大逆罪人のヤン・マンチュン逮捕という陛下の厳命です」
コ・サグ「大逆罪人? 一体誰がなのだ?」
テ・ジュンサン「将軍は陛下に謁見するため、大模達の資格で来られたのだ」
ブ「早く用意された檻車にお乗りなさい」
コ・サグ「黙れ。我らは遼東へ帰る」
サブク「勝手に出たら、我が兵士たちに攻撃されますぞ」
テ将軍、びっくり。
コ「何?」
サブク「ここはすでに包囲されています」
コ・サグ「おのれ…貴様ら、一人残らず消してやるぞ(剣を抜く)」
サブクたちも剣を抜く。
「やめんか、剣を抜くつもりなら、たった10数人で来たりはしない。檻車に乗ろう」
テ将軍「将軍」コ・サグ「なりません」
トルバル「我ら皆、ここで共に死ぬ覚悟です」
「檻車に乗っては駄目です」「将軍」
ブ・ギウォンの薄笑い顔。
ヤン将軍、ナムゴンの顔。


檻車。
ナムゴンとシン・ホン、ブが来る。
シン・ホン「今出てはなりません。ヤン将軍は民の精神的な支柱なのです。檻車に乗った姿を見せてはなりません」
ブ「そのとおり。失敗するところだった。夜を待って移動しましょう」

室内。
「我らも共に参ります」
「皆は、烏骨城へ行け」
「お一人では行かせられません」
ヤン将軍「ついて来ても何も変わらん」
「では我らも将軍を行かせません」
コ・サグ「我らも戦って死にます」
テ・ジュンサン「今まで将軍の志に従って来ました(ひざまずく)今回だけは、我らの願いをお聞き届け下さい」
ヤン将軍は、机を叩いて立ち上がる。
「まだ分からんのか? 皆は高句麗を守る武将たちだ。私の身を守る軍ではないのだぞ」「将軍(全員ひざまずく)」「将軍…」


夜。
ヤン将軍一行がサブクやナムゴンのところへ歩いていく。
サブク「剣をここへ。城に入るのなら、武装を解除されよ」
ヤン将軍はブを見る。
ブは、さあどうだというような顔。
ヤン将軍は剣を取り、サブクに渡す。
ヤン将軍の後ろにいる他の将軍の剣も取り上げられる。
ヤン将軍は、歩いて檻車の側へ行く。
ナムゴンが進み、ヤン将軍の側へ行く。
「お許し下さい」
「ナムゴン、お前を憎んではいない。ただ―ーお前の周りの奸臣どもを断ち切れなかったのが、悔やまれるだけだ」
ブがせせら笑う。
檻車に乗るヤン将軍。
鍵が閉められる。
テ将軍「将軍」
「将軍…」「将軍」
サブク「今すぐ発つぞ。出発」
動き出す。

平壌城の前。
声「止まれ、歩みを止めろ」
馬に乗った兵士が出てくる。
兵士「今出ては駄目です」
サブク「何事だ?」
「民が押し寄せてきました」
ブ「どういうこと、 この夜更けに民だと?」
サブク「あそこをご覧下さい」
前方から、松明を持った民の集団。
ブ「あれは何だ? 一体何のだ?」
一同びっくり。
民の集団が来る。
サブク「者ども、前を塞げ」
民の前に、剣を抜いた兵士たち。
「ヤン将軍を釈放してくれ」
「釈放せよ、釈放せよ」連呼。
民の中にテ・ジョヨン。
ブ「何をしておる、奴らを追い払え」
サブク「弓部隊、前へ」
弓部隊が前に出る。
サブク「皆下がれ、下がらねば、ただでは済まんぞ」
「いっそ、我らを殺してくれ、将軍を釈放しないなら、一歩たりとも下がれません」
「将軍を釈放してください」「それとも、いっそ我らを殺しなさい」
「早く将軍を釈放して下さい」
ブ「矢を射ろ」
サブク「矢を射るのですか?」
ブ「早く射ろ。邪魔をする者は射てしまえ。何をしておる、命令が聞こえないのか? 早く射るのだ」
テ・ジョヨン動揺。
ヤン将軍「ならん。駄目だ、射るな、民を射てはならん。おのれ、ブ・ギウォンめ」

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